私のRFX8について
先日急逝した兄の遺品として、ロードバイクを譲り受けた。私は小径車のブロンプトンばかり乗っているが、たまにロードバイクに乗ると、軽くて速くて感動する。

譲り受けたのは、自転車本体、ビンディングシューズ、ヘルメット、サングラス、携帯用エアポンプ、ワークスタンド、予備のビンディング、予備のチューブ2つだ。本体にはライトとドリンクホルダーとサイコンもついている。これだけあれば、普通に乗り出せそうだ。

フレームはブリヂストンAnchorのRFX8で、コンポーネントはシマノのUltegraで、ワイヤードの11*2速ギア(フロント50-34T、リア11-28T=11-12-13-14-15-17-19-21-23-25-28)で、クランク長170mmで、キャリパーブレーキで、キシリウムのアルミホイールだ。つまるところ、結構古いがかなり良いモデルっぽい。自転車本体は室内保管されていて状態は良好だ。所沢の彼の家から目黒の私の家まで乗っただけでも、きちんと走るのがよくわかる。生前の兄の話によると、それなりの金をかけて、細かいパーツをちょこちょこ軽量なものに換装していたそうな。そういえば、サドルやドリンクホルダーもそこそこ良さげなパーツを使っているっぽいし、本体を持ち上げると、発泡スチロールを持っているみたいに軽くて驚いた。

私も20年以上前、学生や新卒社会人の頃は20万円以上したそこそこなロードバイクに乗っていた。ただし、それは古き良きクロモリ車であり、このRFX8みたいに軽くなかった。時代を経たのもあるし、カーボンだし、グレードがちょっと高いこともあるだろうが、このRFX8は同じロードバイクでも全く違う。また、普段私は小径車であるブロンプトンに乗っているので、それと比べるとちゃんとしたロードバイクの何と速いことか。RFX8でダラダラと漕いでいる時の速度とブロンプトンで気合い入れて漕いでる時の速度が同じくらいだと思う。体感的にはRFX8はブロンプトンより1.5倍くらい速いように感じる。
ブロンプトンで幹線道路を走っていると、ちょくちょくロードバイクに抜かれる。気が向いた時には抜いて行った彼らに追従を試みたりもするのだが、ヘルメットとサイクルウェアをちゃんと装備しているガチ勢には基本的には太刀打ちできない。それがRFX8に乗っていると、そもそも追い抜かれないし、追い抜かれたとしてもちょっと速度を上げれば余裕で追従できる。真のアスリートは幹線道路なんかで本気を出さないから、私のような初心者でも遜色なく走れるというだけだが、それでも自分もなかなかの人材なのではと錯覚してしまう。ブロンプトンでは追従すらできなかったことを考えると、やっぱロードバイクは偉大だなと思った。
そんなわけで、暇を見つけてはRFX8でサイクリングをしている今日この頃である。速いのはいいのだけれど、ビンディングペダルが久しぶり過ぎて怖い。ロード勢がなぜすり抜け走行や歩道乗り上げなどのちょっとリスキーな走行をしないかというと、民度が高いというだけではなく、ビンディングペダルだと咄嗟に足つきできなくて怖すぎるからというのもあるだろう。あと、道の端のギリギリを攻めるとタイヤが細くて滑りやすいし、段差等の衝撃でリム打ちパンクしやすいというのもあるだろう。
ビンディングペダルの使い方とロードバイクなりの走行マナーに慣れれば、だんだん楽しくなってくる。なにせ、速い。ダラダラ漕いでも、景色がぐんぐん変わっていく。引き足も含めて気合を入れてペダリングすれば、原付並みに加速して走ってくれる。最高速度も平地で45km/hとか出るし、人力なのにこんなに高速移動できるなんてと改めて驚く。急で長い上り坂だろうが下り坂だろうが、適切なギアを選択すれば、何ら問題なく乗り越えていける。路面抵抗や空気抵抗が低いので、たとえギアをアウターフロントのリアセンターで固定にしていても、大抵の道は難なく進んでいける。ケイデンスを90くらいに上げても安定してペダリングできる。これは、いいものだ。小径車が勤勉なラバなら、ロードバイクは速さに特化したサラブレットといった感じだ。

タイヤは23Cなのだが、細くて心許ない。インピーダンスロスを減らすべくタイヤを太くして25Cや28Cにするのが最近の常識らしいのだが、そんなトレンドには全く乗っていない自転車なので23Cなのは仕方がない。当時としては結構良いパーツを使っていると思うのだが、電動シフトとかディスクブレーキとかが当たり前になっている最近の感覚からすると、古臭い自転車なのかもしれない。とはいえ、私のような初心者が使うには十分だ。
フロントギアの50-34Tはいわゆるコンパクトクランクというやつで、52-39Tのノーマルクランクに比べると変速比が小さくなり、貧脚の初心者やヒルクライムをよくやる人に好まれる設定らしい。私にはこれがちょうど良かった。というか、フロント50Tのリア11Tって変速比4.54でクランク1周9.52mも進む設定であり、それをケイデンス90で回すと速度は51.4km/hになる。フロント54Tで同じことをすると55.5km/hだ。危なすぎるし、かなりの剛脚にならないとそんなに重いギアは回せない。そう考えるとノーマルクランクって名前は奇妙に思えるが、その名称を考えた人は、サイクリストを名乗るなら55km/hくらい出せて当然でしょとか思っていたのかもしれない。
コンパクトクランクは好ましいにしても、リアの11-28Tは狭すぎると思った。素人はケイデンスの維持にそんなにこだわりがないので、それよりは広い変速比の方が嬉しい。特に軽い方でフロント39Tのリア32Tで変速比1.21、クランク1周2.55m、ケイデンス60で時速9.16kmくらいにはしたかった。素人が峠を登るとそれくらいの遅さにはなっちゃうので。まあ、気が向いたらリアスプロケットだけ変えればいいのだけれど。'

サイクルコンピュータはCateyeのPADRONE SMARTだ。電池を替えただけで普通に動いた。センサーと本体がBluetoothで通信しているあたりで、私がロードに乗っていた頃より断然進化していると思った。GPS連携したりメールの着信通知が出たりもするらしいのを知り、隔世を感じた。とはいえ、とりあえずは現在のスピードとケイデンスと走行距離さえわかれば他の機能はどうでもいい。ケイデンスセンサー(クランク回転計)とスピードセンサー(タイヤ回転計)のそれぞれの角度を調整してそれぞれの磁石の通過位置と合わせるのが重要だ。最初はそれを忘れていて信号が検出されずに悩んだ。
「ロードバイクなら100kmまではお散歩」とか誰かが言っていた気がするが、それは言い過ぎにしても、50kmくらいなら2時間あればいけるので、かなりの行動範囲になる。例えば東京駅を起点とすれば、23区の全ての場所に対して往復しても散歩の範囲と言える。とはいえ、散歩の足としてのロードバイクの欠点は、安全に置く場所がないことだ。高価なものなので、適当な場所に置くと、頑丈めのチェーン鍵をかけていても切断されて盗まれてしまう。なので、目的地を決めずに走り回るというよりは、行程を事前に決めて走る感じの乗り方に向いているだろう。

兄のビンディングシューズは、早々に壊れた。底がカパカパと開いてきて、見たらネジが吹っ飛んでいたのだ。それでも騙し騙し乗っていたら、接着剤も剥がれ、縫い目がほどけて、靴としての体をなさなくなってしまった。樹脂のパーツや接着剤は経年劣化が早いらしい。

兄のはシマノのR087という古いエントリーモデルのサイズ40のワイドらしいが、日本人に典型的な幅広甲高は共通らしい。私がそれを履くと、指先が若干きつい感じだったので、41(25.8cm)のワイドが私に合っているだろう。普段履いている靴はミズノウェーブライダースーパーワイド26cmなので、そこから考えても妥当なところだ。製品はワイド設定があるシマノのRC3にした。店頭でフィッティングしてから買う方が確実だが、ネットで買った方が安かったのでそうした。

新しいシューズを実際履いてみると、足の長さは合っているのだけれど、小指にほんの少しの圧迫感がある。かと言って42(26.5cm)にすると足先が若干余るだろうから、41のワイドが最善だと思う。スーパーワイド的な設定があれば理想的なのだが、ないものは仕方がない。次回に買い換える時には、爪先との甲の締め付けを別々に調整できるものの方がいいかもしれない。締め付けの調整が全体で一つだけの場合、締め付けが緩すぎると上死点での押し足の際に指が圧迫されてしまうが、締め付けが強すぎると常に指が圧迫されてしまう。分けて爪先を緩めにして甲を緊めにできればその問題は緩和できる。
クリート位置の調整には試行錯誤があった。まずは、前後左右ともど真ん中の目盛りに合わせたところ、どうもしっくりこない。足裏の母指球(親指の付け根)と小指球(小指の付け根)を結んだ線にペダルの回転中心軸が来るようにするのが定説らしいが、そこから考えても、真ん中の目盛りに合わせると、私の足ではちょっと後ろすぎる。クリートが指球線よりも後ろにあると、足首の関節にかかる負担が小さくなる利点があるが、足首の関節の力をペダルに加えられないという欠点もある。また、これは利点でも欠点でもないが、同じサドル高だと下死点で足をより長く伸ばすことになるため、サドル高を低くすることになる。逆にクリートが指球線よりも前にあると、足首の関節の力をペダルに加えやすいという利点があるが、足首の関節にかかる負担が大きくなる欠点がある。そしてサドル高は気持ち高く設定することになる。私の場合、標準のクリート位置だと、パワーゾーンで踏み込んだ際に、指球線が靴の底を踏んでいるというよりは、指球線が前に滑って足の甲で靴を押している感覚があった。それが小指の圧迫感にもつながっていたように思う。クリート位置を2目盛り分(多分2mm)だけ前にずらしたところ、その違和感はなくなり、ちゃんと指球線で力を伝えている感覚になった。それでいてロングツーリングの後にも足首や脹脛に特段の疲労は感じないので、私にはこの設定が合っているのだと思う。
輪行袋も必要だ。電車で輪行して帰れるなら、往復分の体力や走行時間や天気を考えずに、行きたい方向に行きたいだけ走って行ける。その方が私の性に合っている。車体が故障した場合でも、輪行して帰ってこられるならば安心だ。輪行袋はツールボトルに入れてドリンクホルダーに取り付けようと思っている。そこにはパンク修理キットやその他の小物も入れたい。となると、かなりコンパクトに畳める輪行袋が必要になるのだが、ツールボトルに他の小物と一緒に入れられるほどのものはなかなかない。
結構頑張って調べたところ、Pekoさんという人が手作りして通販しているお手製輪行袋シリーズが私の要求に合うらしかった。その中で、横型新軽量輪行袋(145g)というのを購入した。メーカー製のものと違ってシンプルな構成なので、畳んだ際には350mm缶より小さくなる。ギュッと詰めれば容積は190mlのコーヒー缶くらいになると思う。耐久性を代償として生地を薄く軽くしたことでそれが実現されているわけだが、とはいえすぐに破れるほどチャチな作りではなく、絶妙なバランスだ。電車輪行で電車に乗せる為だけのカバーであると割り切れば、問題ない。また、長方形を貼り合わせた単純な形になっているのも重要な点だ。自転車を収納した状態に合わせた複雑な形の袋だと、畳んだ際に小さくならないのだ。大きな長方形であれば、縦横に折り畳んでいくだけで小さな長方形になる。最高密度で畳めるからこそ、このコンパクトさが実現できるのだ。あとはそれを丸めれば円筒なり瓦型なりにして、ボトルやバッグに詰め込める。その代償は、自転車を包んだ時に最適な包み方にならないことだ。やはりここでも、電車に乗せるためだけのカバーと考えれば問題ない。


この輪行袋の初運用をしてみた。最初の手順としては、まず自転車を立てたまま、駐輪用のカバーをかけるが如く、輪行袋を被せる。次に、カバーを被せたまま、サドルとハンドルの部分を掴んで、そーっと車体をひっくり返す。こうすることで、位置合わせが簡単になるとともに、風でカバーが飛ぶリスクをなくせる。ひっくり返す際に袋を擦って破らないように注意だ。


車輪を外して車体の両脇に置いて、結束する。お手製輪行袋には肩掛け紐も結束用バンドも付属していないのだが、この時点ではどっちも持っていなかったので、結束にはスズランテープを使った。ださいが、ロードバイクの車輪はやたら軽いので、スズランテープですらいけるということを示せるだろう。ヘルメットは前輪フォークを覆うように乗っけておけばOK。のちに「りんりんバンド」というフック付きのゴムを買ったが、それはめちゃ使いやすい。

あとは、輪行袋の生地をそーっと持ち上げて、車体を覆う。尖った部分に生地が引っかかった状態でひっぱると当然破れるリスクがあるので、焦らず騒がず、そーっとやることが重要だ。持ち運びはフレームを手で直接掴んで持ち運ぶことにした。軽いので片手で持てる。「全体が覆われていること」というのが電鉄各社で共通の規定にあるらしいので、ギア等がなるべく見えないようにすべきだ。

ツールボトルも買った。R250というブランドの、ツールケーススリムスーパーロングタイプという製品だ。輪行とパンク修理に必要な全ての装備を収納するには、かなり大容量のツールボトルが必要になる。それでいて、外径はドリンクホルダーのものに制限される。その制限の中で最善だろうと思われるのがこの製品だ。Pekoの輪行袋、りんりんバンド、PanaracerのスペアチューブR'AIR、Toneのタイヤレバー、100均の六角レンチセット、GorixのミニポンプGX-MP66、クロップスのワイヤーロックQ5をツールボックスに収納したい。タイヤレバーと六角レンチキットはジップロックに入れておくと散乱しないので便利だ。普段使うわけでもないので、携帯工具セット的なものを買って重さを増す必要はない。普通は、輪行袋だけでもそこそこの体積になるのでツールボトルには入らないのだが、Pekoの輪行袋ならいける。また、R250のスーパーロングなら、Pekoの輪行袋とりんりんバンドを右半分だけで収納できるので、左半分にポンプと工具とスペアチューブを収納できる。隙間にパンク修理用のパッチや接着剤を一緒に入れてもいいだろう。(追記:R'AIRは非常に破れやすくて取り扱いに気を遣うので、後にコンチネンタルのRace28 700×20-25Cに変えた。こちらも普通に収納できた)


ミニポンプの全長は17.5cmだが、これと23Cのスペアチューブを入れると、ツールボトルの縦長がギリギリだ。このR'AIRというチューブは薄いので畳むと非常に小さくなって、この入れ方ができるようになる。普通のチューブの場合、縦長に折り畳んでミニポンプの横に沿わせる入れ方になる。なお、このミニポンプGX-MP66は軽い力で動かせる割に最大300psiの高圧までいける優れものだ。小型なので空っぽ状態なチューブを100psiに復帰させるには300回くらい往復しなければならないが、日々のちょい足しの空気入れとしてなら普通に便利に使える。仏式と米式に対応していて、ブロンプトンにも使えるのが個人的に重要な点だ。
ワイヤーロックはCropsの5×1800mmのダイヤル式のものにした。ワイヤーロックはボルトクリッパーがあれば数秒で切断できる程度の安全性しかないので、どれを買ってもそんなにセキュリティは変わらない。ただ、最もよく見かけるCropsのQ3だとボルトクリッパーどころかプラモ用のニッパーや普通のハサミでも切れてしまうので、それよりは気休め程度に太い5mmのものを選んだ。長さも1.8mあるので、電柱や樹木などの太いものでも地球ロックできる。
ツールボックスを閉じる際には、ワイヤーロックをサンドイッチの具のように押し込むことができる。コンビニ等に寄る時にはワイヤーロックだけをツールボトルから取り出すので、最後に入れるのは合理的だ。

ツールボトルを車体に取り付けるとこんな感じ。こんなに小さな容器にあんなにたくさんの道具を詰めることに成功して、大満足である。これを装備しておけば、輪行もできるし、出先でのパンク対応もできるので、安心して遠くまで行ける。サドルバッグやフレームバッグに収納しても良いのだが、低い場所に装着できるツールボトルの方が優れていると思う。

3回ほどロングツーリングしておそらく400kmくらい走ったところ、元からついていたタイヤはボロボロになっていた。古いゴムだと劣化が早いのか、乗り方が下手なのか、その両方か。ブロンプトンのつもりで前後の急ブレーキをかけると後輪をロックさせてしまうのだが、それで後輪を削ってしまうのが良くないらしい。ともかく買い替えねば。元からのタイヤはMAVIC YKSION PRO POWERLINKの23-622(700x23c)なので、それと互換するものを買えばよい。1本で定価7000円、実売6000円くらいらしいのだが、高いな。そもそも廃番らしいので、別のを選ばねば。

各所のレビューなどを見るとコンチネンタルのGP5000というのが走行性能としては最強っぽいのだけれど、高いし、私にはオーバースペックだ。自分の用途では、高速巡行することや登坂をすることよりも、快適にロングツーリングをしたいという欲求が強いので、耐久性がそこそこ高いタイヤがよい。そうするとブロンプトンでも使っているシュワルベマラソンを思い浮かべるが、700*23cだと430gと重いので、ロードバイクとしてはイマイチかなと。耐久性が高くて走行性能も高いものというと、パナレーサーのアジリストデューロというのが良さげだ。これも1本で約6000円と安くはないが、耐久性に振っている割には230gと軽いのが美点だ。実際つけて走ってみたところ、普通に快調に走れた。
サイクルウェアは持っていた方がいいだろうが、普通の短パンとTシャツでも走行に支障はない。とはいえ、ガチ勢が必ずサイクルウェア一式を装備しているのは、それらの利点が大きいからだろう。サイクルジャージは、通気性がよく汗をよく乾かすとともに、空力抵抗も上げてくれる。サイクルパンツは、通気性と空力性能に加えて尻への衝撃を緩和する機能を持つ。グローブは転倒時に手を保護するだけではなく、グリップ力を上げたり衝撃を緩和したりしてハンドル操作を補助してくれる。それはわかっているのだが、ちゃんとしたのは高いから、すぐには手がでない。というか、サイクルウェアを着ると、貧弱な自分もガチのサイクリストっぽい見てくれになってしまうので躊躇する。どの世界でもそうだけど、ガチの人々って、なんちゃって野郎に厳しいので、発進でクリート嵌めるのにモタモタしたくらいで死ねとか言われそうで怖い。サイクルウェアも着ない門外漢がたまたまロードバイクに乗っている体でしばらくは精進したい。

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