エルゴンのGP2でブロンプトンFハンドルの調整

ブロンプトンのFハンドルにエルゴンのGP2のホーンをつけて、もうちょい前にハンドルを迫り出させた話。ロードバイクにより近い姿勢になり、ペダル荷重がより強くなった。また、ケーブルの長さの調整もした。


ライザーバーの上下逆付けでブロンプトンのSハンドルをもっと低くするFハンドル化だが、エルゴンのGS3のホーンをつけていると、折り畳みの際にそれがタイヤと干渉して、ハンドルの前方への迫り出し量が制限されるという問題があった。同一形状で見た目だけ違うGP3でも同様のはずだ。

そこで、GS3/GP3の89mmのホーンよりも短い66mmのホーンを持つGS2をメルカリで買った。

届いてみると、なんかおかしい。元からあったGS3のホーンと長さが同じなのだ。GS2ってばっちり書いてあるのに。あと、バーエンドのキャップが無い。

公式サイトの画像を見ると、GS3とGS2のホーンの長さが異なる事は明確だ。そして、両方ともバーエンドのキャップがある。しかし、私の手元にあるGS2はそうではない。

もしかして、偽物を掴んだのではないかと思った。そこでネット上を探し回ったら、AmazonとBike Innにも同じ仕様の製品と思われるものが売られているのを発見した。大手の販売サイトで堂々と偽物を売り続けているとも考えづらいが、大手でも偽物があるにはあるので、予断は許さない。

次に、日本の代理店にメールで問い合わせて、上述の商品が偽物なのかどうか聞いたら、回答をいただけた。「弊社はバーエンドがお申し出の製品と同じような形をしている製品を2014年まで取り扱っていましたが、弊社が取り扱っていた製品とこの製品が全く同じものであるか判断しかねます」とのこと。率直な回答でありがたい。偽物ではないとすると、ある時点を境に仕様変更がなされて、GS2のホーンが短くなったということになる。

さらに探すと、GS3として今のGS4に相当する形状のものが売っているサイトもあった。一連の事実から推察すると、おそらくある時点で型名と形状が一つずつずらされているのではないか。もしそうなら、メーカー側が酷い。例えるなら、来年からイナダをワラサとして売って、ブリをイナダとして売るみたいなものだ。そんなことしたら消費者がどれだけ混乱するか考えてほしいところだ。

偽物ではないなら、メルカリの出品者には落ち度はない。たとえ偽物だったとしても商品写真を見て看破すべきという意見もあるだろうが、まあ架空の話をしても仕方がない。いずれにせよ、発注ミスは起きるものなので、今後の教訓としよう。無駄になった旧GS2だが、現GS3としてなら普通に使えるので、いつかブロンプトンミーティングのフリマとか出て「旧GS2(現GS3相当)」と明記して500円くらいで売ろうかな。

気を取り直して、新しいGS2をどうにか安く手に入れる方法を探したところ、サイクルテックIKDでGP2のホーンだけ売っているのを見つけたので調達した。GS2とGP2のホーンはほぼ同じなので、それで十分だ。最初からこうすれば良かった。

製品が届いた。旧GS2、新GS3、新GP2の順に並べてみた。新GP2はちゃんと短くなっている。当然のことなのに、ちょっとした感動を覚えた。

ホーンの先端が折り畳みの制限要因であったので、それが短くなった分だけ、ハンドルを前に傾けられる。制限ギリギリまでハンドルを前に傾けると、GS3とGP2でホーンの先端の前後位置はほぼ同じになる。実際にやってみると、35mmだけ前に出せるようになった。上昇量が55mmのハンドルバーを下向きにつけているので、前方への傾きはasin(35/55)=39.52°で、下降量は(55^2-35^2)^0.5=42.42mmということになる。GS3装着状態とGP2装着状態の写真を並べると角度の違いが分かりやすい。

GS3でもGP2でも、ホーンの角度は少し上向きにするのが私は好きだ。前傾姿勢が強いほどに、手が前に滑ろうとする力が強くなるので、角度が上向きの方がよく引っかかって安心感がある。また、Fハンドル化でグリップが低くなった分だけ、ホーンの先端が高くなっている方が潰しが利く。

ちなみに、ホーンを取り付ける際の締め付けトルクは5Nmであり、かなり弱い。強く締め込みすぎると、特にカーボンハンドルバーの場合、パイプが割れやすい。5Nmは0.509kgfmであり、つまり長さ10cmのアーレンキーの端に5.09kgの重りをぶら下げて動かす力だ。トルクレンチがない場合、アーレンキーの長い方を持って指二本で回すくらいの力で締めれば良いだろう。

ホーンが短くなった分だけハンドルを前に出したので、折り畳み時のクリアランスはさらにギリギリになった。ハンドルバーとフロントフォークもギリギリだし、ホーンとタイヤもギリギリだし、ブレーキレバーとタイヤもギリギリだ。

実際に乗ってみると、ハンドルバー本体を握った状態では、上半身の前傾姿勢が以前より若干ながら深くなったのを感じる。前方突き出し量は20mmから35mmに増えているが、その分だけ下降量が51mmから42mmに減っているので、劇的に変わるわけじゃない。グリップ本体を握った状態とホーンを握った状態のそれぞれで、腕を伸ばした姿勢を写真に撮ってみた。

グリップ本体を握った姿勢では、上半身の前傾は垂直から約40度だ。ホーンを握った姿勢では、上半身の前傾は垂直から約45度くらいだ。双方の握り方で、自然に腕を曲げればもう10度くらい前傾するので、高速巡航時の前傾姿勢はそれぞれ50度くらいと55度くらいになる。とはいえ、ロードバイクだとブラケットポジションで腕を伸ばしても60度以上に前傾するので、それに比べれば可愛いものだ。ロードバイクに一日中乗っていられる人なら、この程度の前傾姿勢は問題ないはずだ。なお、今回の調整で、サドルの中心からグリップまでの前後距離は70cmくらいで、サドルとグリップの高さはほぼ同じくらいになった。ロードバイクでは、サドルの中心からブラケットの突起までは75cmで、サドルの方が5cmくらい高い。このことからも、ブロンプトンでもグリップをもっと前でもっと下にずらしたくなる気持ちは分かるだろう。

ハンドルを前に傾けるのは、ロードバイクでハンドルステムを長くしたのと同じで、グリップ位置が前に出る効果がある。それは前傾姿勢が深くなる以外にも影響を及ぼす。まず、グリップの位置がハンドルの回転円の直径(中心を通る弦)から遠のくので、ハンドル操作が重くなる。それにより、直進安定性が増す反面、旋回性能は落ちる。ブロンプトンのハンドル操作は元々軽すぎるので、少し重くなるのは良いことだ。

次に、肩関節の角度が浅くなって、脇が前方に開く。ヘッドスライディングの姿勢により近づく感じだ。ロードバイクのフィッティングにおいては、真横から見て肩関節の角度が90度くらいになっているのが望ましいと言われる。それより角度が小さいと、前傾姿勢が窮屈になって上半身が起きてしまう。それより角度が大きいと、上半身を下に引き付けて力強くペダリングするのが難しくなる。今回の変更によって、グリップ本体を持った時の脇の角度は83度くらいで、ホーンを握った時の脇の角度はちょうど90度くらいになった。つまり、フィッティングの定説に基づくと改善していると言える。実際のところ、腕で上半身を引き付けて漕ぐ際の最大トルクは小さくなった感覚があるが、力を抜いて足を自然に下ろしてペダリングする際のトルクは大きくなった感覚がある。

また、トウクリップを使った引き足での入力もやりやすくなった。脇の角度と股関節の関連性は薄いと思いつつも、なぜだか股関節の収縮がやりやすくなった気がする。また、ペダリング中の意識が変わった。ペダル荷重が自然に増えるおかげで、踏み足は勝手に強くなるので、引き足だけに意識を集中できる。以前考察したように、クランク角5時から8時半くらいまで膝関節をジワッと縮めて足を後ろに引いてから上に引くのと、クランク角9時から11時半くらいまで股関節をギュッと縮めて足を上に引いてから前に押すのを意識して漕ぐ。そうすると、疲労が分散されてボトルネックがなくなる。結果として、平地巡行でも登坂でも楽に走れるようになった。シッティングのままで強いトルクが出せるので、ダンシングの頻度が減った。総じて、よりロングライド向きの設定になったと言える。先日、長野から東京まで191kmを9時間ちょいで走れたのだが、下り基調とは言え、ブロンプトンでグロス平均速度が21km/hを越えたのには驚いた。

グリップの位置が前に出つつ若干高くなったことの恩恵もある。まず、ジャックナイフ的な前転による転倒への恐怖が薄まった。前輪が小さいブロンプトンは段差の衝撃や急ブレーキで前転して転ぶ危険が高く、実際私は7年ほど前にそれで転んで結構な怪我をしたことがある。前傾姿勢が強くてグリップが低いほどに前転しやすくなるので、今回グリップが高くなって腕が突っ張りやすくなったことは望ましい。また、グリップ本体を持ったままでのダンシングがしやすくなった。腕を伸ばす距離が減って、体をハンドルに惹きつける動作が楽になったからだ。上半身を引き付ける目標となるグリップが前方にあるほど、急勾配になっても体勢の制御がしやすい。以前はダンシングの際にはホーンを握ることがほとんどだったが、グリップ本体を持ったままにする頻度が多少増えた。とはいえ今でもダンシングではホーンを握ることの方が多い。

ホーンが短くなったことで、ホーンの握りやすさは確実に悪化している。GS3では、人差し指から薬指までの3本の指をホーンの裏側に回して薬指をグリップの裏側に沿わせていた。GP2では、ホーンの裏側に回せるのは人差し指と中指だけになり、薬指と小指をグリップ本体に沿わせるようになった。

平地巡行の場合、ホーンの上には手のひらを置くだけでほとんど握らないので、GP2になっても乗り心地はそんなに変わらない。また、ホーン先端の位置は同じなので、先端に手を被せて最大限の前傾姿勢を取る能力も変わらない。一方で、ダンシングでホーンを握る場合、握り心地の悪化は多少気になる。とはいえ、ホーンがない場合に比べれば断然力が入るので、依然としてそれなりの仕事はしてくれている。また、長い峠ではホーンの先端に手のひらを被せて乗ることが多いが、これまたホーンの先端の位置は以前と同じであるから、登坂能力は以前とほぼ同じと言える。

オンロードでの走行性能の観点では、前傾姿勢が強くなるFハンドルはほとんどの点でSハンドルより有利だ。GP2の導入でその傾向はさらに増した。しかし、オフロードでは乗りにくい。路面の凹凸で頭が上下に振られまくるし、揺れる上半身を支える腕も疲れるし、前輪が何かに引っかかると前につんのめって頭から地面に突っ込みそうになる。とはいえ、そもそもブロンプトンで本格的なオフロード走行をすることは無謀なので、実用上の欠点とは言えないだろう。オンロードで困ることを敢えて挙げるなら、峠の下りで速度が出過ぎた時に怖いということだ。前傾姿勢が強いロードバイクでも同じ欠点があるわけだが、車輪が小さいブロンプトンの方が凸凹を踏んだ時の制御が不安定になりがちなので、より怖い。この問題を緩和するには、下りでは尻をサドルの後方ギリギリまで下げて後輪荷重を上げると良い。

乗車姿勢はBB位置とクランク長とサドル位置とグリップ位置で決まる。BB位置は車体によって決まっているので変えられない。クランク長は足の長さに最適化すべきだが、私の場合は165mmが最適と判断している。次に調整すべきはサドル位置だ。ブロンプトンはBBが前方にオフセットしているので、サドル位置は結構前にすべきで、純正のシートポストのペンタクリップはサドルを前にオフセットする珍しい形状だ。私はカーボン製の中華シートポストに変えたせいで純正ペンタクリップが使えないので、その代わりレールが長いSelle SMPのサドルを限界まで前に出すことで対処している。一般的には、クランク角3時の状態で、ペダル軸と膝関節(膝の皿の裏あたり)を結んだ線が垂直になるのが最適と言われている。私のもサドルを限界まで前に出すことでギリギリその条件が達成できた。そうして、BB位置とクランク長とサドル位置が決まったら、最後にグリップ位置を調整するべきだ。

ブロンプトンの設定でありがちなのは、ペダルとサドルが近すぎるからという理由で、サドルを必要以上に後ろにずらしてしまうことだ。そうするとペダル荷重が小さくるとともに、膝関節の負荷が大きくなってしまう。結果として、パワーは出ないし、長距離乗ると尻が痛くなりやすいし、大腿四頭筋だけ売り切れて足が止まってしまう。そうではなく、グリップを前に出すべきなのだ。Fハンドルはまさにそのための形状である。

身長164cmの私でもブロンプトンのSハンドルは窮屈なわけだが、身長がもっと高い人はどうなるかも考えてみよう。まず、足が長いので、サドルの位置は高くなる。サドルの高さがハンドルの高さより上になるだろう。そして、胴体と手も長いので、脇の角度が小さくなって、ハンドルがもっと近く感じることだろう。おそらく体が前につんのめりそうで怖く感じるのではないか。そのような場合は、ハンドルを低くするのではなく、前にだけ出したくなるだろう。おそらくそれに最適なのは、上昇量35mmのライザーバーを完全に前に傾けて装着することだ。

後で知ったのだが、ロングハンドルバーキャッチなる製品があるらしい。こいつを使うとあと15mmグリップを前に出せるはずだ。上昇量が70mmくらいのライザーバーで今回と同じような角度にすれば、もっと過激な前傾姿勢が取れるようになるだろう。「ステムキャッチャー」とかで検索しても似たような商品がいくつか出てくる。

ハンドルバーの角度を調整したついでに、ケーブルの長さも調整した。ブレーキレバーとシフターの取り付け位置がSハンドルの時よりも低くなった分だけケーブルが余るようになったので、短くしたのだ。ハンドルバーを前に傾けたおかげで、切らなくてもブレーキや変速の操作に支障がない程度にはなっている。しかし、ケーブルが弛んでいると、レバーの遊びが増えて多少の性能劣化があり、また見た目も良くないので、調整した方が良い。

ブレーキやシフターのケーブルはアウターカバーとインナーケーブルからなる。インナーは引っ張られても伸びないことと、アウターはインナーの反作用で押されても変形しないことが必要なので、双方とも金属製だ。理想的には、アウターを切るにはケーブルカッターという工具を使い、インナーを着るにはワイヤーカッターという工具を使う。ただ、両方を兼ねる工具もあるので、今回はそれを1600円くらいで買ってきた。

なお、ケーブルの切断にはニッパーやボルトクリッパーを代用しても良いが、ニッパー等でワイヤーを切断するべきではない。細かい金属線が解れて広がってしまってケーブルの中を通せなくなるからだ。ワイヤーカッターは円形の刃先でワイヤーを圧縮しながら切るのでその問題が起きない。

ケーブルの長さを調整するには、適切な手順がある。まず、どれだけ切るかを決める。ハンドルを左右に動かしたり、折り畳みをしたりしてもケーブルに過度の張力がかからないように、多少の余裕を持たせるべきだ。今回は40mm切ることにした。後で短くすることはできるが長くすることはできないので、自信がないなら少しずつ切って作業すると良い。切る前にガムテープとかで仮止めしてハンドル操作や折り畳みがうまくいくかを検証するのも良い考えだ。

長さを決めたら、まずアウターからインナーを外す。アウターの端にはキャップがついているので、それも外す。モンキーレンチでキャップの口の手前を挟んで、ケーブル側をペンチで軽く掴んで引っ張る。キャップだけでも買えるっぽいが、それに金を出すのは勿体無い。

アウターだけを切り、新しい端にキャップを移植する。それからアウターだけを車体に取り付けて、さらにインナーを取り付けると、インナーが余るので、適切な長さでインナーを切る。インナーを切る際にはタイコ(留め具)がない方の端を切る。あとは通常の設置と同様にインナーの端を締め込めば完了だ。

ケーブルの長さを調整したら、ブレーキ操作やシフター操作の反応が若干ながら良くなった。見た目も多少スッキリした。わざわざ工具を買った甲斐があった。後で思ったのだが、どっちみちケーブルを切るのであれば、長めのケーブルを買っておけば潰しが利くので、そもそも純正でなくニッセンのブロンプトン用ケーブルを買えば良かったと思った。

まとめ。ブロンプトンのFハンドルと組み合わせるホーンを長いGS3から短いGP2に変えたことで、ハンドルバーをより多く前に傾けられるようになった。結果として前傾姿勢が深くなり、走行性能が向上した。ホーンが短くなった分だけ握りにくくはなったが、平地巡行での利便性は変わらないし、ホーン先端の位置は同じなので、最大登坂能力は維持できている。また、GS2/GP2の仕様が以前と現在で変わっている可能性があるので、購入の際には仕様に注意すべきだ。