Coospoの心拍・速度・ケイデンスセンサーを導入
高コスパのサイコンとセンサーで知られるCoospoの心拍センサーと速度センサーとケイデンスセンサーを導入した。その設定方法と使い勝手について解説する。心拍センサーは単体でも心拍ゾーントレーニングができて便利だ。さらに、スマホのサイクリングアプリIpBikes連携させるといろいろ分析できて楽しい。普通にCatEyeのサイコンと組み合わせても便利だ。

無料かつ最強のサイクリングアプリIpBikesの使い方については前回説明した。スマホ内蔵のGPSと地図データを連携させるだけで、サイクリングアプリとしての基本的な要求が満たせることを示した。
今回は、IpBikesと外部センサーを連携する。以下のようなデータを表示できるようにする。ハイエンドのサイコンとセンサーの組み合わせに全く劣らない機能が合計6000円くらいで手に入ることになる。

私は趣味で自転車に乗っているが、健康増進というのも目的の一つである。その辺の話は以前書いた。祖父も父も心臓病で、私も不整脈がひどいという家系なので、ある程度心臓を鍛えておきたいのだ。サイクル・サイエンスという本に書いてあった話だが、1日30分未満の走行であっても、最大心拍数の50%以上の負荷を出すなら、冠状動脈疾患のリスクは1%から0.15%にまで下がるそうだ。ただし、相関の調査だけでは「自転車に乗るから健康になる」と「健康だから自転車に乗る」の区別はできないけれど。
心臓を鍛えるには心拍数を管理するのが有効だ。L2と呼ばれる、最大心拍数の70%から85%までくらいの運動負荷を長く続けることが最も効果的らしい。心拍計がなくても、ギリギリ会話できるくらいの運動量を維持することでL2相当のトレーニングができると言われていて、私は今までそれを実践してきた。しかし、最近の心拍計は安くて使いやすいらしいので、導入してみることにした。また、心拍数を確認しながら走るなら、ついでに速度計とケイデンス計も導入して、ガチ勢っぽい雰囲気も出してみることにした。
以前からロードバイクにはCatEyeの速度計とケイデンス計とサイコンをつけていたのだが、電池が切れてから2年くらい使っていなかった。先日久しぶりに電池を交換してみたが、サイコン本体は生きていたがセンサーは動かなかった。CatEyeの心拍計も持っていたのだが、どっかに行ってしまった。速度が知りたいだけならスマホのGPSアプリで十分だし、速度と変速比からケイデンスは計算できる。それに、走行中に心拍数や速度やケイデンスが認識できてしまうと、変な重圧感を感じてしまって嫌気が差していた。しかし、センサーがが装備されていても、いつも使わなきゃいけないわけじゃない。軽いセンサーならつけっぱなしでも特に走行時の不利益はないし、サイコンでなくスマホを表示装置にして、たまにだけ見るならば、数字に追われることもない。安いセンサーだけ買って、サイコンを省略したなら、金銭的にも大したことはなく、たとえ使わなくなっても罪悪感はそれほどない。
てことで、軽くて安くて使いやすいセンサーを探した。心拍計に関しては、胸バンドではなくて腕バンドのものが良い。装着が面倒だと使わなくなるからだ。速度センサーとケイデンスセンサーは、一体型ではなく分離型が望ましい。小径車であるブロンプトンはクランクアームと車輪の可動範囲が重ならないので、一体型は使えない。また、車体への装着方式が接着や結束バンドではなく、ゴムのものが望ましい。ロードバイクとブロンプトンで共用したいからだ。その条件で探したところ、Coospoの心拍計HW9と速度計BK9Sとケイデンス計BK9Cがドンピシャだった。HW9が3085円でBK9Sが1569円でBK9Cが1467円で送料無料なので、合計6121円で揃えられた。やはりAmazonで買うより圧倒的に安い。

HW9は二の腕に装着する光学式の心拍計であり、血管に光を当てて太さや色素濃度の変化から心拍を把握するらしい。胸につける電気式のものは心臓の電気を直接観測するので精度が高い一方、光学式は精度が劣る傾向にある。また、光学式では外れ値を取り除くために移動平均のような処理を入れるのが一般的で、その結果として実際の心拍の変化よりも遅れた値が表示される。つまり、急激な心拍数の変化を即座に把握するのには向いていない。しかし、トレーニングやロングライドで心拍数の傾向を見る分には十分だ。光学式の精度を上げるためには、手首などの末端ではなくできるだけ心臓に近い場所に装着することが有効であり、その点でアームバンド式のHW9はリストバンド式の心拍計やスマートウォッチよりは有利だ。光学式だと血管を照らすLEDの数を増やすほど精度が上がるらしく、ハイエンド製品は4個とか6個とか付いているところ、HW9は2個だけなので、その点は値段なりということになる。

HW9の付け心地は悪くない。上腕(肘の上)の内側に付けるのが推奨されているが、下腕(肘の下)の内側でも精度に問題はない。腕時計のつもりで簡単に装着できるし、一旦つけてしまえばそうそうずれることはない。締め込みはずれない程度の緩さで良いので、そのうちつけていることも忘れてしまう。父の血圧計についている心拍計と比較したところ、ほぼ同じ値を出している。急激な心拍変動を起こさない状況では、おそらく誤差は3%以内といったところだろう。健康管理やトレーニングの負荷管理の目的で使うなら十分な精度だ。

重さは単体で10.5g、バンド込みで20.3gだ。ピチピチのサイクルジャージを着ている場合にはサイクルジャージの内側にバンドなしで滑り込ませて運用するという裏技があるらしい。


HW9は充電式で、専用ケーブルで充電する。USB-CでもマイクロUSBですらない専用ケーブルなのは残念なところだ。35時間持つらしいので、そんなに頻繁に充電する必要はない。二泊三日のサイクリング旅行くらいなら充電なしで行ける。

詳しい使い方はこちらの説明書に書いてある。電源オンにはボタンを押し、オフはボタンの長押しで行う。CooSpo RideというアプリでHW9を登録すると、細かい設定ができる最大心拍数を設定すると、それに応じて心拍数を5つのゾーンに分けて、現在のゾーンをLEDの色で教えてくれる。また、任意の心拍数より上になった時に震えて警告する機能もある。


さて、私は現在46歳であるから、最大心拍数は220-46 = 174bpmであると見積もられる。実際の最大心拍数は高負荷運動試験で測定しないと分からないが、本当に最大心拍数を出すと死ぬ危険性があるので、常人はそこまでして最大心拍数を計ることはしない。最大174bpmと仮定すると、4段階方式だと、L1は174*0.7=122bpm以下で、L2は174*0.85=148bpm以下で、L3は174*0.9=157bpm以下で、L4はそれ以上ということになる。L2を維持したければ、だいたい135bpmの周辺になるように漕げばいいだろう。また、HW9の警告の閾値は148bpmにして、最大心拍数は148/0.8=185bpmとして登録する。こうしておくと、緑ランプならL2ということが分かる。HW9の色ランプ機能は他社製品にはない魅力だ。長袖の服を着ていてランプの色を確認したい場合には、HW9を手首に付けると良い。推奨はされていないが、それでも一応動作する。
心拍計はサイクリング以外の用途にも使える。安静時心拍数を測って心臓の能力を見るのにも使える。この値が低いほど、左心室が強力であり、毎回の拍動で多くの血を送り出せていることになる。さっき測ったら私の最近の安静時心拍数は52だった。長野に移住して毎日坂の上り下りをしていたら、それだけで下がってきた。あらゆる運動の際にもHW9は有用だ。L1、L2、L3の区別がランプの色だけでできるので、HW9だけつけてサイクリングやジョギングに出かけても良い。緑ランプを維持するだけでL2トレーニングができる。実際にやってみると、巷で言われるように、確かにギリギリ喋れるくらいの主観負荷になる。「ゼーゼー」「ハァハァ」という息遣いにはならず、鼻呼吸をしつつも「ハッ・ハッ・ハッ」と律動的に口呼吸も組み合わせる感じだ。決して楽ではないが、苦しくはないので、長時間続けられる運動負荷だ。競技志向でもっと高負荷にしたいなら橙ランプ以上になるように頑張れば良い。逆に登山などで低負荷を徹底したい場合には青ランプ以下になるようにペース配分すれば良い。
心拍計を身につけて生活してみると、面白いことが発見がある。スクワットや腕立て伏せなどをやっても、心拍数はL2までしか行かない。局所的な筋肉を使う無酸素運動をしても、L3に至る前に乳酸が溜まって動けなくなるからだ。骨格筋の負荷と心肺への負荷が別物であることがよく分かる。一方で、料理や掃除などの家事をしていると、たまにHW9が震えて、L3まで到達したことに気付かされる。個々の筋肉には軽い負荷であっても全身を連動させた動きであれば心肺に負荷がかかるのだ。また、キーボードを打っている程度のことでも、安静時よりも20%くらい心拍数が上がる。呼吸の仕方によっても心拍数は変わる。深呼吸をすると意外に心拍数が上がり、ちょっと浅めの呼吸をしている方が下がる。
速度計とケイデンス計の話に移る。こいつらも軽量だ。バンドと電池込みで、速度計は13.6gで、ケイデンス計は10.4gだ。ここまで軽いなら、いつもつけていても気にならないし、装着と非装着をブラインドテストしてもまず気づかないだろう。


電池はおなじみのCR2032なので、100均一の3個入りを買えば1個あたり110/3=36.6円で済む。最大300時間の電池持ちらしいので、速度計とケイデンス計込みの電池代は0.24円/hということになるか。電池式でも充電式より運用のコスパが良いかもしれない。二つの製品とも最初から電池が同梱されているのですぐ使い始められる。なお、CR2032と並んでCR2025が売られていることも多いが、双方に互換性はない。CR2032の方が分厚くて大容量だ。CR2025を買っても接触不良になるだけなので間違わないようにしたい。
装着作業は簡単だ。付属のゴムバンドで後輪ハブや左クランクアームやに巻きつけるだけだ。速度計を後輪ハブにつけるか前輪ハブにつけるかは派閥があるらしい。サイコンやスマホをつけるハンドルポストに近いという点では前輪が有利だが、空力の観点では後輪ハブの方が有利だ。また、旋回時の内輪差の影響で、前輪より後輪の方がほんの少し小さい値になるはずだ。どちらでも実用上の差は出なさそうだが、私は後輪に付けた。車輪の重心がなるべく中心近くになるように、センサーの取り付け位置は空気のバルブと反対側にすべきだろう。取り付け方向にも注意だ。車輪が進むと「Coospo」という文字が上方向に移動するように取り付ける必要がある。

ケイデンス計が分厚すぎるとフレームと干渉する可能性があるが、ブロンプトンと105 R7100クランクの組み合わせであれば問題なかった。Coospoの以前のバージョンのセンサーであるBK467だと分厚いので、Q-factorが小さいロード系のクランクとの組み合わせでは注意が必要らしい。センサーの質量の慣性力の影響を最小限に抑えるには、センサーの位置はできるだけBBに近づけるのが良いだろう。取り付け方向にも注意だ。ペダルを漕ぐと「Coospo」という文字が右回り(時計回り)に回転するように取り付ける必要がある。

あとは、表示機器にセンサーを登録すればデータが見られるようになる。IpBikeにセンサーを登録するには、トップ画面で「Sensors」を押す。そうするとIpSensorManという別アプリが起動する。IpSensorManをインストールしていない場合にはそれを促すダイアログが表示されるので、それに従ってインストールする事。IpSensorManの画面の右上のメニューから、「Add Bluetooth」を選択してから、「Scan for devices」を押す。各種センサーに電源が入っている状態であれば、検索結果に表示されるので、それを登録していく。



センサーが登録されると、IpBikeの「Start GPS」の表示が「Start Sensors」に変わる。GPS以外のセンサーもある事が直感的に分かる演出だ。そして走行開始すると、ケイデンスと心拍の値が表示できるようになっている。表示項目のカスタマイズ方法については冒頭に挙げた記事を参照されたい。センサーとの接続は暗黙的に行われるが、もし登録したセンサーの値が表示されない場合、IpSensorManを開いて、虫眼鏡ボタンを押すと明示的に接続してくれる。接続に成功すれば、IpSensorMan上でもセンサーが取得した値が表示されるはずだ。値が出てこない場合にはセンサーの電源が切れていることを疑うべきだ。車輪やクランクを回せば速度計とケイデンス計は起動する。CooSpo Rideのセンサー一覧を開いても同じことができ、そちらはバッテリー残量も表示できるのでより便利だ。



速度センサーが正常に動くためには、トップ画面の「Bike」の「Wheel circumference in mm」にタイヤの外周長をミリ単位で設定する必要がある。私のブロンプトンでは、タイヤがマラソンやマラソンレーサーの時には1340mmにして、コジャックやワンの時には1310mmにしている。タイヤの外周長はホイールやタイヤの種類だけでなく空気圧や乗車重量や摩耗度合いによって変わるので、実測するのが望ましい。センサーを付けた車輪で、バルブを目印にして一番下にして接地位置の地面に印をつけ、車輪が一回転してまたバルブが一番下に来るまで転がして接地位置の地面に印をつけ、二つの印の距離を測れば良い。
さて、GPSによる速度推定から実際の車輪の回転数を測る速度センサーに変わったおかげで、当然ながら速度の数値が安定するようになる。距離の数値の精度も上がる。GPS速度計だと特に高速走行している際の精度が悪くなるが、車輪速度計ならその心配が全くない。同様にして、単にクランクの回転数を数えているだけだから、ケイデンス計の精度も完璧だ。ところで、速度センサーとケイデンスセンサーが一体化したものだと磁石でカウンタを動かす仕組みになっていて、磁石の距離を調整するのが面倒だった。一方で今回のような別体方式だと個々のセンサー内に重力で動作するカウンタがあるだけなので、調整作業が全く必要ないのが嬉しい。重量も13.6g+10.4gで合計24gしかないので、別体方式の方が利点が大きい。敢えて欠点を挙げれば、電池を2個使うところか。しかし、電池の残量はサイコンやスマホから確認できるので、どちらかが残り10%切ったら両方交換するとかいう運用で困ることはないだろう。
心拍計を見てL2負荷になるように運動量を調整すると、かなり気持ちよく走れる。差し当たっては速度とケイデンスは気にしないで良い。速度やケイデンスに執着すると、それらの目標を達成し続けるために辛い思いをすることになる。一方で心拍に注目するなら、辛くない程度の運動強度に抑えることが目標になる。上り坂でも逆風でも辛いってことはなくなる。頑張りすぎるとHW9が震え出して、「気楽に行こうぜ」と宥めてくれる。脚の筋肉が疲れる割に心拍数が上がっていない場合、おそらくギアが重すぎるので、軽くすべきだ。心拍数が上がっている割に脚の筋肉に余裕がある場合、おそらくギアが軽すぎるので、重くすべきだ。そうするとケイデンスが一定の範囲に収まってきて、自分にとって心地よいケイデンスが分かってくるだろう。そうしたら、今度は心拍数とケイデンスの両方が一定の範囲に収まるようにペダルと変速機を操作できるようになる。結果的にパワーを一定の範囲に収めることになるだろう。自分の生理学的反応との対話を続けるのは面白いものだ。学生時代にロードバイクに乗り込んでいた頃は普通にやっていたことだが、その頃に戻ったような気持ちになった。当時はパワーメーターなんて無かった。
トレーニング目的ならばパワーメーターを使うべきという意見が主流らしく、ガチ勢の多くはパワーメーターを導入しているらしい。パワーを一定にして走るというのは骨格筋への負荷を一定にして走るということである一方、心拍数を一定にして走るというのは心肺機能への負荷を一定にして走るということなので、どちらが良いかというよりは相互補完的な役割になるのだと思う。なので、ガチ勢ではない私もパワーメーターを使ってみたい気持ちはある。ペダリング効率に興味があるので、欲を言えば、クランク角毎のフォースベクトル表示ができるパワメとサイコンが欲しい。しかし、それらは値段が高くて手が出ないし、ブロンプトンに付けるにはオーバースペックすぎると感じる。しばらくは心拍数とケイデンスだけ管理する昔ながらの手法で頑張ろう。
IpBikeにはVirtual Powerという面白い機能がある。パワーメーターがなくても、現在ペダルにかけているパワー(=仕事率)を推定するというものだ。表示項目の変更の際に「Power」の「GOVSS Power」を選ぶと表示できるようになる。GOVSS(Gravity Ordered Velocity Stress Score)アルゴリズムは、主に速度と勾配と体重から身体負荷を推定するもので、測定したパワーから身体負荷を推定するCycling TSS(Cycling Training Stress Score)アルゴリズムのランニング版である。GOVSS PowerはGOVSSをワット単位のパワーに逆算した値だ。GOVSSを有効にするには、まずトップ画面の「バイク」で自転車の設定を行う必要がある。zero cadence zero powerはオンにする。タイヤ周長と車重を適宜入力する。私のブロンプトンの車重はトウクリップやブルホーンやDHバーやライトやセンサーなどの追加装備もコミコミで11.0kgだが、準標準装備であえるバッグとスマホの分を1kg足して12kgにしている。それを言ったらバッグの中身や衣服の重さはどうするんだって話になるが、それは体重の設定で加算すべきだろう。さて、VP-Calorieは「Running GOVSS」にする。Calories Efficiencyは、サイクリングではジュールと消費カロリー同じくらいになるという経験則に倣って23.9%にしておく。Enable Virtual Powerはオンにする。Rolling Resistanceはロードバイクなら0.004でマウンテンバイクなら0.01で小径車なら0.006くらいにする。Drag Factorはロードバイクなら0.35でそれ以外なら0.4にする。さらに、設定の「Personal settings」で身長や体重や性別や年齢や最大心拍数などを入力する。「Run lactate threshold power」の値はデフォルトの300ワットで良いが、これは10km走(ジョギング)を48分30秒で走れる心肺能力に相当する。もし30分で走れるなら541ワットで、60分かかるなら232ワットにする。


HW9には不具合がある。ANT+の仕様上は、サンプリング毎のBPMだけではなく、サンプリング間の心拍数も報告することになっているが、HW9はそれに違反しているらしい。そうすると、走行中の平均心拍数を取る際に困ったことになる。IpBikeも平均心拍数を出す際にデフォルトでは誤動作してしまう。しかし、IpSensorManにワークアラウンドの実装がある。設定の「Enable Coo Spo HR bugfix」をオンにするだけだ。すごいよIpBike。


ここまでの設定で、心拍数と速度とケイデンスの現在値の把握ができ、統計も取れるようになった。パワーも推定できるようになった。では、実際のコースを走ってそれらの有用性を確かめてみよう。湯の丸の地蔵峠をいつものペースで登ると、それぞれの値がどの程度になるのか見てみよう。家から峠まで道のり9.4km、獲得標高844m、平均勾配8.9%のコースだ。

最も軽いギア(32T/21T=1.52)にしてシッティングで登ったところ、69分かかり、平均速度は8.21km/h、平均ケイデンスは67rpmだった。平均心拍数は141bpmで最大心拍数は158bpmだった。感覚的にもL2とL3の間くらいと思っていたので、だいたい予想通りの結果だ。心拍数のゾーン分けを見ると、L1が1.0%、L2が82.4%、L3が16.0%、L4以上が0.4%であり、L2トレーニングとしてはかなり質の高いものだったと言える。


高度と速度のグラフは以下のものだ。前半は勾配がきつい割に飛ばして漕いでいて、後半は垂れて速度が落ちて、頂上付近の緩斜面でラストスパートしたことが読み取れる。

心拍とケイデンスとGOVSSパワーのグラフは以下のものだ。心拍はL2とL3の境界である148bpmの前後をずっと行ったり来たりしている。ずっと同じギアで走っていたのでケイデンスは速度と全く同じ挙動を示し、後半に垂れたのが見て取れる。GOVSSパワーは340ワット付近をうろうろしていて、平均は337ワットだった。ランニングだとそのくらいの負荷だという話なので、サイクリングの負荷に換算するには適当な係数を掛ける必要がある。

Stravaにデータをアップロードしてみたところ、同じセグメントの記録での実測のパワーは329ワットとか345W とかだった。ガチ勢のサイクリングによる記録がそれなので、GOVSSからTSSを換算するなら0.6掛けくらいにすると良さそうで、少なくとも登り主体のコースではGOVSSパワーは指標として何とか使えそうだ。とはいえ、自分のGOVSSパワーと実際のパワーの比較をしてみないと確たることは何も言えない。パワーメーターを持っている人は検証してみてほしい。

GOVSSには明らかな欠点もある。平坦や下りでやたら大きな値になることだ。ランニングの場合、サイクリングと違って下りで勝手に加速していくわけじゃない。また、平坦や緩やかな登りでもおかしな値が出ることがあるが、これは高度の検出精度に起因しているらしい。速度が高くても勾配が低ければ小さなパワーを算出すべきだが、高度の変動を即時に検出できなければ勾配の精度が下がって、異常なパワーが算出されてしまう。つまるところ、似たような斜度を淡々と登っていく場合じゃないとGOVSSとTSSの相関は高くならない。なお、GOVSSではノイズ込みのデータを平準化するために各検出値を120秒移動平均の値で取っている。その代償として、表示される値が最新の状況を反映していないものになる。これに関しては、設定の「Personal settings」の「Govss use 120s」をオフにすると対処できるが、値が安定しなくなるので良し悪しだ。
せっかくCatEyeのサイコンも持っているので、それとCoospoのセンサーを連携させる方法も試した。私が持っているPADRONE SMARTはBluetoothでセンサーと接続できるので、当然Coospoのセンサーとも連携できる。詳しい方法はこちらの説明書を読むべし。このサイコンは経路案内はできないが、GPSによる走行ログの記録ができる。ロングライドの際には、ナビだけスマホに任せて、センサーデータの表示と走行ログの記録はサイコンにやらせるという本来の使い方をするのが良いだろう。

PADRONE SMARTの設定はCatEye Cyclingというスマホアプリで行う。まずはサイコン本体と各種センサーを全て登録して接続する。速度計を登録する際にはタイヤ外周も設定する。このサイコンで面白いのは、ミラーモードとダイレクトモードの二つがあることだ。ミラーモードではセンサーとスマホが接続して、表示だけをサイコンが行う。ダイレクトモードではスマホを介さずにサイコンとセンサーが接続する。どちらのモードでもGPSによる位置情報が走行ログには付与される。CatEye Cyclingでサイコンと接続している場合にはミラーモードとして動作し、そうでない場合には自動的にダイレクトモードで動作しようとする。走行ログはCatEye Cycling経由でStrava等にアップロードできる。



注意点がある。HW9のBluetooth機能はマルチポイント接続に対応しているのでスマホとサイコンの両方に同時接続できるが、BK9SとBK9Cはそうでないので、どちらかにしか接続できない。つまり、先に接続した方の機器には認識されるが、もう一方にはいつまで経っても認識されない。ミラーモードで使う際にはサイコンとスマホの接続が確立した時点でサイコンとセンサーの接続は切断されるので問題ない。ただし、サイコンが起動してセンサーと接続した状態でIpBikeやCooSpo Rideでセンサーを使おうとすると困る。その際はサイコンのモードボタンを長押しして一旦接続を切った状態でスマホ側での認識を済ませることになる。ダイレクトモードで使う際にはスマホのBluetooth機能を切っておいた方がよい。そうしないと仮に最初の認識がうまくいったとしても不意にスマホに接続が切り替わって困ることになる。私は最初それに気づかずに、「PADRONE SMARTはセンサーとの接続に不具合がある」などと断じるところであった。無知は罪。無知なのに声高なのは悪だ。その上で敢えて言うが、ダイレクトモードだとセンサーとの接続が不安定なので、できればミラーモードを使った方が良い。HW9もBK9SもBK9CもBluetooth 5.0に対応しているので、スマホとそれらの間の接続はかなり安定する。スマホとサイコンの間の接続はBluetooth 4.0になるが、サイコンは単なる表示装置なので、接続が切れたところで計測に問題は起きない。
私のブロンプトンではハンドルポストの部分にRecマウントの台座がついていて、スマホはそこにマウントする。DHバーが付いているのでそこしか場所がない。サイコンを装着するならその台座にCatEye用のアダプタを噛ませれば良いが、そうするとスマホが装着できなくなる。スマホのナビは音声案内にして、たまに信号停止の際に画面を見るだけにするという運用もありだが、やはり二つとも装着してある方が便利ではある。そこで、サイコンはDHバーのグリップの下に付けることにした。筐体が小さいのでこの場所でも邪魔にならない。あと、CatEyeのマウントバンドは縦横を簡単に切り替えられて使いやすい。

ミラーモードでサイクリングしてみた。ナビが必要な時以外はスマホのディスプレイをオフにできるので、電源消費は大したことなく、満充電なら余裕で一日持つペースだ。当然ながら、走行経路や速度やケイデンスの情報はきちんと記録されていた。CatEye CyclingからStravaへのアップロードも簡単にできる。




サイコンをミラーモードで使うということは、単なる劣化ディスプレイとして扱っているということなので、勿体無い気になる。むしろミラーモード前提にして表示に特化した省電力Bluetooth液晶小型ディスプレイを作った方がいいんじゃないのかな。白黒かつ解像度400x600でリフレッシュレート30FPSくらいに落とせば電力消費はかなり節約できそうだし、通信量も大したことなさそうだ。
結局のところ、サイコン専用機を使うか、スマホだけで済ませるか、どちらが良いだろうか。私としては、ロードレースやブルベではない日常のサイクリングであれば、ポタリングでもトレーニングでも、スマホだけで十分だと思う。スマホの電池がサイコン専用機よりも長持ちしないのは確かで、長時間使いたいならこまめにディスプレイを切らねばならない。しかし、それが良いのだ。ずっと手元の画面を見ながらサイクリングするのは不健全というか、風景が楽しめなくて勿体無い。基本的にはディスプレイを切ったままにしておいて、心拍数や速度やケイデンスが気になった時や、運動負荷を調整したくなった時だけ、ディスプレイをオンにしてデータを見れば良い。心拍ゾーンに関してはHW9のランプの色や振動でも把握できる。ナビに関しても同様だ。ずっとナビ画面を見ながらサイクリングするのではなく、迷いそうになった時だけ見る方が良い。さらに、IpBikeはサイコン各社のアプリよりも使いやすいし、サイコン専用機よりも使いやすい。よって、各種センサーだけを買ってスマホと組み合わせて運用するのが最善と思う。
余談だが、速度計が付いたので調子に乗って近所の坂で最高速チャレンジをしていたら非常に怖い目に遭った。ブロンプトンの最高速度ってどのくらいかと思って峠の下りを爆走していたところ、60km/hを超えたあたりで勝手にハンドルが左右に振れ始めて制御不能に陥った。いわゆるシミー現象である。60km/hで転けたら死ぬか顔面オロシになって地獄を見るかと覚悟したが、ブレーキしつつ気合いでハンドルを押さえ込んだらなんとか生還できた。

原因がわからないと恐怖に苛まれ続けるので、シミー現象の機序について調べた。高速走行時に不意にハンドルが切れると車体のトレール量に起因するセルフアライニングトルクと運転者による操作によって強烈にハンドルが戻り、勢い余って逆にハンドルが切れるからまた揺れ戻ってというのを繰り返すということらしい。整備不良や空気圧不足だと最初にハンドルが不意に切れる切っ掛けが起きやすいというのはあるが、段差等の影響でもハンドルが不意に切れることはあるので、シミー現象を完全に防ぐことはできない。トレール量が小さくセルフアライニングトルクが弱いブロンプトンでも、揺れ戻って逆に切れようとするハンドルの勢いを止めるダンパー効果も小さくなるので、シミー現象は普通に起こる。トレール量が小さいと最初に不意にハンドルが切れてしまう事象が起きやすいし、小径車は段差や路面の凹凸にタイヤを取られやすいので、むしろブロンプトンではシミー現象が起きやすいと言えるだろう。車体の整備や剛性の問題というよりはジオメトリの問題である。ここで学ぶべきは、車体によって安全に走れる速度の限界があるということだ。少なくともブロンプトンで60km/hを出すのは危険だ。個人的には50km/h以上は出さないと肝に銘じる。速度計は速度を抑えるためにあると心得るべし。
各種センサーを導入して自分の能力を数値化して思ったのは、結局のところガジェットではなく乗り手の体力と精神力こそが重要だということだ。長野に住んでいる限り、坂からは逃れられない。しかし、10%の坂をL2の心拍かつ10km/h以上の速度で超えられる体になれば、日々の生活で苦労することはない。発想を転換すれば、日々の生活で自転車に乗っているだけで、目標である強い体と心を入手できる可能性があるということだ。その境地に至るには、自動車の誘惑に負けずに、いかに自転車を駆使するかが重要だ。その一助として、サイクリングを多角的に楽しむためにセンサーでデータを収集したりサイコンで表示したりすることは意義がある。体力が可視化されると体力増強の動機づけになる。最近は毎日スクワットを100回するということと、最寄りのスーパーには自動車に乗らずに自転車で行くのを徹底している。おそらくだが、それだけで余人よりは顕著に高い体力を維持できることだろう。そしてそれは自己肯定感を高く維持してくれることだろう。
まとめ。Coospoの格安センサーを導入して、心拍数と速度とケイデンスを測りながらサイクリングできるようになった。特に心拍計が便利で、任意の運動負荷のトレーニングを確実に履行できるようになった。三つのセンサーとサイクリングアプリIpBikeを併用すると、ハイエンドのサイコンに劣らないデータの取得と分析ができるようになる。パワーメーターの代替としてGOVSSという手法でパワーを推定する手法について検討したが、表示する分には面白いにしても、信用性はイマイチだった。差し当たっては心拍数を基準にしてL2トレーニングを継続するのが最善であろう。ぶっちゃけ、普通に健康で文化的な生活をしたいだけならば、心拍計だけあれば他は要らないかもしれない。L2とL3の狭間くらいの負荷の運動がたまにできるなら、それで幸せになれる気がする。
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