ブロンプトンのDHバーを最適なものにする

ブロンプトンにつけるDHバーを中華カーボン製のものにした。若干の軽量化を果たすとともに、アームレストが低くなって乗車姿勢が理想に近くなった。


ブロンプトンに格安のDHバーを装着して楽に速く走れるようになるという話を前回の記事に書いた。DHバーが有用であることは分かったが、いくつかの不満点もあった。そこで述べた幾つかの心残りを今回は解決する。

まず、Sハンドル(lowハンドル)のステムの高さにDHバーを装着した場合に、上半身が十分に低くならないのが心残りだった。身長164cmで股下74cmの私の場合、サドルの高さとハンドルステムの高さがほぼ同じになる。ロードバイクやTTバイクではハンドルステムの方が低いのが普通だが、それに比べるとハンドルステムが高い。そこにDHバーをつけると、格安DHバーだとアームレストの位置が高すぎて、上半身が立ち気味になるのだ。できればサドルとアームレストの高さが同じくらいになるようにしたい。

格安DHバーも含め、多くのロード用のDHバーは、ハンドルバーとの留め具の上に握り棒が乗り、その上にアームレストが乗るという形状になっている。そうするとハンドルバーとアームレストの高さの差が4cmくらいになる。一方で、カーボン製のものであれば、留め具と握り棒とアームレストが一体化したものが一般的だ。それならハンドルバーとアームレストの高さの差が1cmくらいになる。つまりアームレストの高さが3cmくらい下がる。それは乗車時の頭の位置が3cm下がることを意味する。サドルとアームレストの高さが同じになるまでは行かないが、3cmの差は乗車感覚と空気抵抗に顕著な違いを生むはずだ。

握り棒が留め具の下から出る方式でもアームレストが低くなるが、その方式だと折り畳み時に握り棒が内側に来て車体と干渉してしまう。握り棒が留め具の中間から突き出る方式でもアームレストが低くなるが、握り棒の長さの調整ができないという一体型と同じ欠点を抱えている割に重量が嵩むので利点がない。一体型だと握り部とアームレストの高さの差が最も小さくなる傾向があるっぽい。もちろん製品ごとに形は違うけれども。

なので、カーボン製の一体整形のDHバーを買うことにした。普通に自転車専門店やAmazonで買うと高いので、例によってAliExpressの中華製に手を出した。その中でも比較的定評のあるRXL SLのものを選んだ。4724円はカーボンの割には激安だ。一体整形だと握り棒の長さやロール方向の角度調整ができないが、握り棒の突出部の長さが28cm以下のものを選べば長さの調整は必要ないし、取り付け位置を調整すればロール方向の角度調整は必須ではない。

製品の重さを測ってみたところ、パッド込みで333gであった。前回買ったアルミの格安DHバーは400g弱だったので、それよりもだいぶ軽い。

カーボン素材には直接ネジ留めできないので、ボルト受けの部分だけはアルミ製の部品になっている。こいつがネジを緩めると外れて鬱陶しい。なので、ネジを絞めた状態でボルト受けと本体の隙間に瞬間接着剤を流し込んで接着しておいた方が良いだろう。

DHバーを握って走行している時に段差などで衝撃を受けると手が滑って怖いのが心残りだった。また、その不安や登坂時の踏ん張りのために握り棒を強く握ると、握り棒の先端のキャップの縁が指に食い込んで痛いというのも心残りだった。これらの問題を解決すべく、バーテープを巻くのと、バーエンドキャップに半球形のものを使うことにした。それぞれアリエクで格安のを調達した。

DHバーにバーテープとバーエンドキャップを装着したところ、重量は373gになった。缶ジュース一本分くらいということだ。

DHバーの留め具の内径は31.8mmだがハンドルバーの外径は25.4mmなので、シムを噛ませる必要がある。強く締め付けてもハンドルバーが傷まないようにシリコン製のシムを買ってみた。しかし、このシムは、失敗だった。最大限に締め込んでもDHバーがピッチ方向に動いてしまう。さらに、肘を置いてロール方向に力がかかると、シムからDHバーの留め具がずれて外れてしまう。全く役に立たないぞこれ。

仕方ないので、前回買った格安DHバーに付いていたアルミ製のシムを流用した。これを使うとカーボン製のハンドルバーに少し傷が付くことがあるが、そのくらい噛み合わせないと動いてしまうので、仕方がないところだ。別途に買うなら、DIXNAの「ハンドルシム 31.8→25.4mm」とかが良さげだ。

以前のDHバーはアームレストの幅を留め具で調整できたが、今回のはできない。よって、バー自体の取り付け位置を調整すべきだ。以前のようにハンドルポストギリギリまで中央に寄せると肘の間隔が狭くなりすぎる。狭すぎると背中の筋肉が突っ張るし、呼吸も苦しくなるし、ハンドル操作がやりにくくなって危険だ。なので、今回は左右ともハンドルポストから5mm程度離して運用することにした。シムの位置を調整するのが大事だ。結果的に1cmほど肘の間隔が開くこの微妙な差が乗車時の快適性に結構利いてくる。

握り棒のロール方向の調整ができないことを懸念したが、それは杞憂だった。ライザーバーを逆付けしているので、握り棒の先が広がると思っていたが、そうはならなかった。逆付けした上で前傾させたおかげで、握り棒が内側を向く効果が起こり、広がる効果を相殺した上で、若干内向きになった。

DHバーの角度も重要だ。今回も緩いS字形状なので、角度を水平から25度くらい上にすると良い感じだ。いわゆるハイハンズの姿勢である。腕に当たった風が下方向に整流されるので、空気が胸元や腹の前に入ってきて圧力を高めるのを緩和してくれる。また、腕が多少上を向いていた方が、肘の角度が垂直に近づいて、上半身の重さを支え易い。つまり、楽だ。ブルホーンの角度を基準としてDHバーの角度を決めると設置作業がしやすい。

車体に装着するとこんな感じになる。アームレストの高さがちゃんと3cmほど下がっているのが確認できる。サドルの高さとだいたい同じくらいになっているので、もうちょい低い方が良いにしても、個人的には及第点だ。私より身長が高い170cmくらいの人なら、サドルが3cmくらい高くなるので、ほぼ最適と言える構成になるだろう。

アームレストとパッドの使用感もまずまずだ。パッドがウレタン製だった格安DHバーの方が快適性は上だったが、肘が不快に感じることは稀なので、どちらでも良い。バーテープとエンドキャップも期待通りに機能する。軽く握っていても滑りにくくなったし、強く握って上半身を引き付けても指が痛くなることがない。

折り畳むとこんな感じになる。握り棒が地面につかないギリギリの長さになっている。幸にして乗車時に丁度良い長さが折り畳み時にも丁度良い。長すぎたら切ろうかと思っていたが、その必要はなかった。アームレストが下がったことで折り畳み時の厚みも減った。

肝心なのは、走行性能だ。側方から見た乗車姿勢は以下のようになり、前傾度合いは私の体型にとっては最適に近いものとなった。胴体が水平とまでは行かないが、それにかなり近づいた。脇の角度と肘の角度も90度に近いので、上体を支えるのも楽だ。それでいて、股関節の角度が深くなりすぎないので、生理学的な効率も保っていて、バランスが取れている感じだ。私はクランク長を純正の170mmから165mmに短くしているのだが、170mmのままだったら股関節や腹回りが若干窮屈な感じになっていたかもしれない。

前方から見ると以下のようになる。頭が若干低くなった分だけ前方投影面積が減っている。それより重要なのは、前方から見て手や腕が顔の下半分を隠していることだ。これによって懐に入る空気が減って整流効果が高まる。また、アームレストの左右の間隔も丁度良く、呼吸が苦しくならない範囲で、腕と肩をギュッと折り畳むことに成功している。

実際にロングライドで使ってみると、かなり良い。気のせいではない程度に巡航速度が上がっている。以前の格安DHバーでも通常グリップに比べれば断然走行性能が良かったが、アームレストが3cmほど下がったことで、さらに戦闘的な走りができるようになった。たった3cmであっても、体感としてはかなり低くなった感じがする。無理に肩甲骨の間の背骨や首を下げなくても十分に低い姿勢になるので、むしろ楽に乗れるようになった。それでいて、股関節の角度にはまだ余裕があって、脚の出力が落ちることもない。ペダル荷重がさらに上がり、パワーゾーンで脚を自然に降ろすだけでも加速していける。空力も改善しているおかげで、高速域でも風当たりを感じにくく、速度維持がしやすい。前傾を強くすれば良いというものではないが、もともと前傾が不足している場合には前傾を強めると顕著な効果がある。

ブロンプトンにDHバーを付けて走っていると、たまにサイクリストに声を掛けられる。先日、とある国道でTTポジションのロードバイクに抜かれた。自分よりちょい速な奴には追従すべしの俺ルールに則って、ちょっと離れてしばらく追従していたら、信号で停まった際に話しかけられた。「ミニベロにDHバーって初めて見ましたよ。35キロで走ってたのに、びっくりしました」と。嬉しい。半ばチートしているとは言え、ブロンプトンなのに速さで褒められるとは。なにせ、自分でも肯定的に思っているのだ。ミニベロで爆走するのは本流に対するアンチテーゼでありアヴァンギャルドであるぞと。うぬぬ。いい歳こいて中二病が治らない。

バーテープとバーエンドキャップも良い仕事をしている。バーテープを巻いたおかげで滑りにくくなったので、DHバーを握っている状態で段差や亀裂を踏んでもあまり怖くなくなった。幹線道路を走っている時でさえ段差や亀裂はちょくちょく現れるので、それに怯まずに済むことで、DHバーを握っていられる時間が増えた。太さも丁度良くなり、強く握って上半身を引き付けてトルクを稼ぐ乗り方もしやすくなった。とはいえ、その乗り方は効率が悪いので稀にしかやらないが。また、バーエンドキャップが丸いおかげで、どんな握り方をしても指が痛くならない。私は手の人差し指と中指をバーエンドに引っ掛けて乗ることが多いが、長時間その握り方をしていても問題ない。

私はロングライドの際にはバックパックをハンドルの前にぶら下げている。以前のDHバーは握り棒とハンドルバーの高さに差があったので、バックパックのグラブループを握り棒の間に通してから、ハンドルポストに付けたレックマウントに引っ掛けることができた。今回のDHバーは握り棒とハンドルバーの高さが同じなので、その方法が使えない。しかし、DHバーをハンドルポストに寄せると、バックパックのグラブループをDHバーに引っ掛けられるようになる。上述のように左右の設置位置をハンドルポストから5mmずつずらしたくらいだと、グラブループがギリギリ通る。

バックパックを前に付けると、フロントバッグのように乗車中に物が出し入れできるので便利だ。それでいて、着替えも工具も食料もカメラも入れられる容量が確保できる。サドルバッグよりも便利で大容量。しかも、前方投影領域において運転者の下半身と重なる部分が大きいので、一般的な横長のブロンプトン専用バッグよりは空力的に有利だ。風防カウル的に機能するので、整流と防寒の観点でも利点がある。この芸当ができるのはハンドルの前に空間の余裕がある小径車だからこそだ。あと、このChromeのAvail Backpackはグラブループの大きさと縦の長さがブロンプトンのSハンドルに吊り下げるのに最適なので気に入っている。同じ方法でトートバッグやコンビニ袋なども吊り下げられるので、DHバーは意外に街乗りにも便利だ。

私はハンドルポストにRecマウントのブロンプトン用マウントをつけている。脱落防止用の留め具を外して台座にマウントを直付けすると低くなって良い感じだ。普段はここにSuuntoのコンパスをつけているのだが、このコンパスはDHバーをつけても機能する。カーボンやアルミは非磁性体だからコンパスを狂わせない。一方、この改造Recマウントにはたまにスマホをマウントして、サイコンとして使うこともある。IpBikeというアプリが便利で、何らセンサーをつけなくても地図と速度計として使える。速度が分かれば変速比から計算して大体のケイデンスも分かる。52T/11T=4.72の場合、1000 / 1.34 / 4.72 / 60 = 2.63なので、km/h単位の速度に2.63を掛ければケイデンスが分かる。もちろん、Bluetooth対応の速度・ケイデンス・心拍センサーとの連動もできる。ナビだけがしたい場合は普通にGoogleマップを使えばいいし、2画面表示にしてサイコンとナビを同時に使ってもいい。格安DHバーだと握り棒が邪魔でスマホがマウントできなかったのだが、一体整形のDHバーとシリコン汎用タイプのスマホホルダの組み合わせだとギリギリながらスマホがマウントできる。アダプタをつければ各社のサイコンも問題なく使えるだろう。

折り畳みの際に工具が必要なのであれば、フラットハンドル+DHバーの構成よりも、ドロップハンドルを付けた方が走行性能重視にできるという話もある。ブロンプトンにドロップハンドルをつけると前方への突出部が折り畳み時に車体と干渉するわけだが、ハンドルポストを緩めてドロップハンドルを回転させれば折り畳みできるっぽい。この方法だと、ハンドルポストの一箇所のボルトを操作するだけなので、DHバーのボルト四箇所(実際には二箇所でも何とかなる)を操作するよりは楽だ。あとは、走行性能はどちらが上かという話になる。平地巡行においては、ドロップハンドルよりもDHバーの方が有利なのは明白だ。そうでなければドロップハンドルにDHバーをつける人は居ない。たとえ下ハンを握っても、ドロップハンドルではDHバーの前方投影面積や抵抗係数の小ささには及ばない。ただし、DHバーは交通状況によって使えない場合があるし、登坂や降坂でも役に立たない。ドロップハンドルの下ハンは全ての状況で使える。よって、どちらが得かはコースと乗り方の癖によって決まる。

個人的には、ドロップハンドルがあまり得意じゃない。ロードバイクではドロップハンドルを使っているが、下ハンが窮屈かつ不安定という認識をしてしまっていて、いつもブラケットばかり握ってしまう。そのブラケットですら、段差等の衝撃で手がすっぽ抜けそうな気がして安心できない。実際には下ハンを使いこなすことで高速かつ安全に走行できるのだろうけども、なぜか毛嫌いしてしまっている。ならばDHバーも駄目なのかと思いきや、試しに使ってみたら、しっくり来た。状況が許す場合にしか使わないと割り切ることで、安全性は変わらず、また通常グリップとDHバーの握り変えが強制されることで、疲労の分散が図れる。DHバーを握っている間は空力特性もペダル荷重も最善だし、アームレストに寄りかかれるので体幹の筋肉が休めるし、手が痛くならない。よって、気楽に街乗りや登坂ができるフラットバー+ブルホーンと、高速巡行できるDHバーを組み合わせることは私に合っている。

まとめ。1699円のアルミDHバーから4274円のカーボンDHバーに変えたところ、より良いTTポジションで乗れるようになった。高級品のDHバーは4万円とかするが、中華製の4千円台のものでも十分に機能することが確かめられた。というより、今回買ったRXL SLのDHバーは最善に近い製品だ。ブロンプトンのハンドルポストの高さはロードバイクやTTバイクより高いので、DHバーはアームレストがなるべく低いものを選んだ方が良い。