ロードバイクとブロンプトンのジオメトリ比較

ロードバイクとブロンプトンの写真を並べてジオメトリを比較してみよう。ロードバイクに比べてブロンプトンはどうかという視点で考察する。


ブロンプトンのジオメトリについては以前も考察したのだが、ロードバイクRFX8と比較すると特徴が分かりやすい。ブロンプトンは2016年のSハンドルモデルだ。

まず特徴的なのは、ハンドルが高くて近いことだ。RFX8だとサドルよりもハンドルが5cmほど低いが、ブロンプトンだと3cmほど高い。また、ハンドルとサドルの距離が近いことも相まって、乗車姿勢がかなり直立気味になる。ブロンプトンとしてはスポーティな乗車姿勢になると言われるSハンドルですら、RFX8に比べるとかなり直立気味になるということだ。

サドルとBBの位置関係も特徴的だ。BBを通る地面からの垂線を引いてみると、それが良く分かる。RFX8よりもブロンプトンの方がサドルが後ろにある。私はサドルの前後位置を最大限に前に調整しているのだが、それでも若干RFX8よりは後ろになっている。サドルが後ろにあるということは、自然に座ると、いわゆる後ろ乗りになる。後ろ乗りだと股関節の筋肉より膝関節の筋肉を多めに使うことになる。膝関節を動かす大腿四頭筋などは股関節を動かす大臀筋などよりも疲れやすいので、速く長く走るのには向いていない。

しかし、私としては、サドルとBB位置関係はロードとブロで意外に近いと思った。ブロンプトンは折り畳みの都合でBBがシートポストの延長線から前方にオフセットしていて、それを相殺するために純正のシートポストのヤグラ(ペンタクリップ)と純正サドルにはサドルをかなり前に出せる工夫がなされている。私の車体はシートポストをサードパーティのものに変えているおかげでサドルを前に出しにくくなっているが、レールが長いSelle SMPのサドルは前に出しやすくなっているので、純正には劣るがそれなりに前に出せるようになっている。おぞらく純正で限界まで前に出せば、RFX8とほぼ同じような位置関係にできるだろう。なお、ロードバイクをUCIの規定に沿って設定するなら、シートポストの先端がBBの垂線よりも前には出せないことになっていて、多くのガチ勢のロード乗りはその制限に合わせてサドルの前後位置を決めているらしい。それに比べると私のRFX8の設定は後ろ寄りだ。これは、クランク角3時の位置でペダル軸の垂線が膝の蓋の裏を通るべしという定説に合わせたものだ。その基準に照らすと、165mmのショートクランクにしている私のブロンプトンでも大体定説に沿った構成にはなっている。競技でなく楽にサイクリングしたいなら定説に沿った設定の方が適していると私は思っている。

サドル中心の垂線が前輪と後輪の間のどの位置に来るかに着目すると、ロードとブロではほぼ同じ割合であることが分かる。以前の考察記事で書いたが、ロードの前後荷重比は44:56で、ブロンプトンの前後荷重比は38:62だった。BBとサドルの相対的な位置がロードとブロでほぼ同じであることを踏まえると、ブロンプトンで後輪荷重が大きいことの主要因は、BBとサドルのペアがホイールベース(前後輪軸の垂線の距離)の中で後ろ寄りにあることと、それに応じてハンドルも後ろ寄りにあるということになる。

つまるところ、ブロンプトンの高く近いハンドルを低く遠くにできれば、ロードバイクに近いジオメトリが実現できるということだ。シートポストを低くして前方突出の大きいドロップハンドルを付ければ、かなりロードバイクに近づけるだろう。私はステムをそのままでグリップ位置を下前にずらす通称Fハンドルを使っている。DHバーを導入するのも効果的だ。

これも以前の考察のおさらいになるが、ブロンプトンはトレール量が非常に小さい。トレール量は前輪軸の垂線とハンドル回転軸の延長線のそれぞれが地面に接する点の距離だ。ロードバイクも機敏な旋回ができるようにトレール量が小さめになっているが、それよりさらにブロンプトンのトレール量は小さく、25mmしかない。これじゃあ両手離し運転ができないのも仕方がない。その割にはホイールベースがロードバイクより大きくて小径車の割に小回りが利かないというのは、本当に変な乗り味だ。

チェーンステーがBBから下がっているのも小径車ならではの特徴だ。BBと後輪軸を結んだ直線上にリアフレームのピボットが位置するので、チェーンの緊張によるアンチスクワット効果は期待できない。しかし、チェーンステーが下がり勾配だと、加速時にチェーンステーが車体を斜め上に押すので、反作用で後輪が地面に押しつけられることによるアンチスクワット効果が発生する。ブロンプトンはリアサスペンションブロックがあるので、加速時にそれが動きすぎないためにはアンチスクワット効果がある方が良い。また、小径車には焼石に水ながら、加速時にトラクションを高める効果もあるだろう。

ブロンプトンのBBハイト(BBの地面からの高さ)は279mmで、これはRFX8の297mmよりも18mmも低い。この値だけ見るとブロンプトンの方が重心が低いと思うかもしれないが、実際には乗車姿勢が直立気味な分だけ重心は高くなる。ハンドルの高さの差が80mmくらいあるので、ブロンプトンの乗車時の重心の方が顕著に高いだろう。重心が高いと、重心移動で車体を傾けやすくなるのでヒラヒラと軽い操作感になるが、その分だけ旋回時の重心の保持や不意に車体が傾いた際の重心の回復が難しくなるため、不安定にもなる。ブロンプトンの不安定さはトレール量の小ささだけではなく重心の高さにも原因がある。じゃあBBハイトをもっと低くすれば良かったのではと考えるが、それは無理だ。これ以上BBハイトを下げると、車体を傾けた際にペダルが地面を擦ってしまう。私はブロンプトンでスラローム走行をたまにするが、旋回中にペダルを漕ぐと高い確率でペダルを擦って危険だ。ブロンプトンのジオメトリは全ての要素がギリギリのせめぎ合いで決まっている印象を持つ。

まとめ。ブロンプトンでロードバイクのように速く楽に走りたいならば、サドルをできるだけ前に出すとともに、ハンドルをできるだけ前に出して低く下げるカスタマイズをすると良いだろう。さらに、特に身長が低い人は、ショートクランクにしたり、ハンドルポストやハンドルバーを換装してグリップ位置を低くすることで、ジオメトリを改善する余地があるだろう。大人しくロードバイク乗れよって話はあるのだが。