大阪東京キャノンボール敗北
大阪東京キャノンボールに挑戦したが、残念ながら失敗したという話。失敗の記録も重要なので、成功の記録と同じ形式で記事を書く。

準備と作戦立案
以下の記事にまとめた通りだ。グロス平均速度22km/hで予定を立てるとともに、脂質代謝を維持するべく、ペース管理と補給の戦略を徹底する。
大阪入り
電車輪行にて、特急と快速を乗り継いで、前日に大阪入りした。大阪東京キャノンボールおよびその逆は、夜出発が定番なので、前日入りした上で、当日は出発前に昼寝をしておく必要がある。梅田新道に最も近くて値段が手ごろな快活は天六店なのだが、駐輪場がないのが辛い。そこで、泊まるのはちょっと離れた千里本店にした。ここは親会社であるアオキの千里総本店の上にあるフラッグシップ店的な位置づけらしいのだが、行ってみると普通の快活と何ら変わらなかった。ただ、駐輪場が立体駐車場の中にあって比較的安全に自転車を停められるのがよい。

昼寝は難波の大阪木津卸売市場に併設されている「太平のゆ」にした。850円で風呂に入れて、雑魚寝スペースもある。駐輪場も屋根付きだ。天神橋筋六丁目にある「なにわのゆ」も同じ条件で、より近いのだが、改装中だった。ともかく、大事なのは15時から21時まで昼寝できる場所が必要ということだ。快活を使ってもよいのだが、スーパー銭湯だと定額なのでコスパが良い。風呂にも入れるし。入浴後には思ったより深く寝てしまい、起きたら21時半だった。


windy.comを見ると、出走条件として決めていた、出発後と8時間後と16時間後のうち二つで追い風、かつ三つとも向かい風なし、という条件が満たされることが確認できた。よって、出発地である梅田新道に向かった。

走行記録
起きた時間がギリギリだったので、出発を予定より35分遅らせた22時35分とした。そのあたりを適当に変えられるのはブルべとは違って楽だ。誰が合図をしてくれるわけでもないので、適当に写真を撮って、サイコンの記録ボタンを押して、出発。

大阪市内は信号峠といわれるが、夜が深いこともあって渋滞もなく、あまりてこずらずに脱出できた。

清滝峠が急坂なのは標高グラフから把握していたのだが、その通りだった。しかも自動車専用道を避けるための迂回路が結構複雑で面食らった。脚を削らないように低パワーで乗り切るのが大変だった。


その後、上り下りが続いた。低パワーを意識しすぎたのか、思ったより遅いペースになってしまった。仮想PC1のファミリーマート伊賀服部店についた。経過時間3時間0分で、走行距離68.4kmで、グロス平均速度22.8km。遅くはないが、脚がフレッシュな割には速度が出ていない。

伊賀は平坦であり、150Wも出せば快走できた。加太峠までの登りは緩やかだったので、どこが峠なのかわからなかったくらいだ。ただし、名阪バイパスの迂回路は酷道と言われるだけあって、暗闇の中で下るのはスリリングであった。山岳区間が終わって1号との重複区間になると、なんかバイパスっぽい高架の中を走ることが多くなった。四日市に入るとその傾向がさらに強くなり、トラックがビュンビュンと横を通って怖かった。

四日市の路肩を走っていたところ、おそらく何かを踏んだのだろう。後輪がプシュプシュと音を立てるようになった。嫌な予感はしたが、その30秒後にパンクだと気づいた。動脈から出血するかのごとく、シーラントがタイヤからどくどくと噴き出しているのだ。直すしかないので、安全な場所まで押し歩きしてから、暗闇の中で修理を始めた。TLRタイヤのパンク修理をするのは初めてだったので、汁まみれになって手こずった。ホイールを車体から外して、ビードが下がらないので力づくで押し込んで、シーラントを掻き出して、替えのTPUチューブを入れて、ビードを嵌めなおして、空気を入れて、ホイールを車体に戻す。言葉で言うのは簡単だが、これを暗闇の中で、かつ時間に追われつつやるのは、SAN値ピンチと言うにふさわしい苦行だった。30分くらいロスした。

その後は、無の境地でペダルを回し続けた。焦ってパワーを上げすぎると後で後悔するが、名古屋での足切り条件に間に合わせるにはそれなりの速度を出さねばならないので、165Wベタのパワーで走った。木曾三川を越えるときにはもう夜が明けていた。

名古屋市内は、自動車専用道のオーバーパスをよけるために、迂回したり階段を上ったりと、苦労した。途中で階段を上るのってシクロクロスみたいだなと思った。今回採用したルートではオーバーパスの迂回路がちゃんと記録されていたのだが、gpx.studioで加工した時かIGS630にインポートした時かのどちらかで誤差が生まれて、オーバーパスを通っていることになっている箇所がいくつかあり、現地でう回路を案出するのに苦労した。もうちょい真面目にルートの検証をすべきだった。

仮想PC2のローソン緑区有松町店に到着。7.5時間で173kmなので、グロス平均時速23.06km。名古屋でグロス平均速度22km/hを下回っていたらやり直すリセマラ戦略を決めていたが、続行の条件は達成できた。伊賀の後に快走して作った貯金はパンクで激減したが。

海岸沿いを走ると豊橋だが、キャノンボール的最短は内陸の豊川経由だ。大体平坦で進行する。その後、静岡に入る前の本坂トンネルの手前で少し登るが、峠と言うほどのものではない。


浜松に入って、浜名湖の北側を通った。浜名湖一周もいつかしたい。天竜川を渡って、仮想PC3のローソン磐田匂坂中店。11.5時間で268kmなのでグロス平均速度23.3km。ペース的には掴めてきた。ここらで眠くなってきたが、コーヒー飲んだら解消された。その後は一切眠くならなかった。



仮想PC3の直後に丘を越えるのだが、そこで農道の中に突っ込んでさらに左折して神社(岩田神社というらしい)の参道に入っていく必要がある。後で調べたらそれが正解の道のようなのだが、現場では信じられずに自分で迂回路を選択して、ここでも15分ほどロスした。これは初見殺しであり、一瞬むかついたが、こういうのがあるから面白いとも言える。

磐田と掛川は平坦基調で、特に印象がない。淡々と走った。静岡県に入る前に牧之原台地を越える必要があるのだが、今回のコースでは菊川坂を通ることになっていて、サイコンの言うままに進んだらガレ場を自転車担いで登ることになっていて面食らった。さすがにやってられないので、その場でGoogleマップで再検索して県道381号島田岡部線というのを通った。やたら登るし遠回りだったので、ここも20分くらいロスしたと思う。ルート吟味の甘さが完全に仇になっている


静岡市内に入る直前で線状降水帯の真下に入ってしまい、近くの倉庫の軒下でしのいでからまた出発。ここでも20分くらいのロス。雨が弱まったので再び進んだが、宇津木トンネルを抜けたらずっと雨だった。もう止まっている場合ではないのでパンツまでびしょ濡れになりつつ走行継続。



富士市に入ったころには晴れてきた。富士市周辺の1号迂回路も手こずった。サイコンが示すルートがやたら技巧的で、住宅地の合間を縫ったり踏切やアンダーパスをくぐったりしていて、その度に「マジかよ」と声でた。他人の実走ルートをコピーすることの危険さを実感した。

仮想PC4 ファミリーマート蒲原駅前店。残り8時間弱で、残り153km。順調ではないが、あきらめるほどでもない。しかし、余計なミスの積み重ねで貯金が全然できていない。この頃から、かなりちゃんと速度を出さないと間に合わないという焦りがでてきた。

沼津までは1号沿いの自転車道を通ったが、ここの路面があまり良くなく、速度を出しづらい。多少危険でも、走行可能なら車道を走った方が速そうだと思い、後半はそうした。どこが走行可能なのかを事前に調べた方がよいだろう。

ついに246に入ったが、ここでも自転車禁止区間の迂回路の選定で手間取り、さらに15分くらいロスした。もう時間的にギリギリと思ったが、望みを捨てずに坂を登っていった。御殿場までの坂は急坂というほどではないが、焦って登るとそれないりにキツい。

246の路肩をグイグイと登っていたところ、プシューと嫌な音がして、後輪がパンクした。もう替えチューブはないし、あったとしても修理時間がないので、ここでDNFを余儀なくされた。決断の問題ではなく、物理的に無理なのだ。銀輪部隊よろしくリム剥き出しで走る案も一瞬浮かんだが、それこそSAN値崩壊だし、カーボンホイールじゃ無理だ。

そこから御殿場まで1時間半くらいトボトボと押し歩きしつつ、今回の挑戦を振り返った。自分で言うのも何だが、挑戦したことは尊い。失敗すれば学びがあるので、挑戦しないよりはずっと良い。でも、悔しい!歩いているだけで心拍計がZ5突入の警告で震えていて、理性ではどうにもならない本能的な叫びを身体が発していた。
その日は御殿場の快活クラブに泊まって、翌日に電車輪行で帰った。御殿場→沼津→富士→甲府→小淵沢→小諸という1日乗鉄入門をした挙句、小諸で車でピックアップしてもらう羽目に。田舎辛い。

データ分析と振り返り
今回の走行距離は412.63km、走行時間は16時間15分だった。ネット平均速度は25.39km/hだ。経過時間は18時間30分なので、グロス平均速度は22.30km/hだ。ネット平均速度は文句ない値で、グロス平均も、パンクの対処やルート再探索で時間を食った割には悪くない。平均パワーは120Wで、NPは132Wで、VIは1.1で、平均心拍数は116bpmだ。これに関しては、改善の余地がある。無駄に踏んでいる区間のパワーを踏んでいないところに配分すべきだろう。とはいえ、下りでの空走は避けられないので、1.1以下なら許容範囲だ。消費カロリーは8286kcalで、IFは0.59で、TSSは567.5だった。

パワーのグラフとヒストグラムを見ても、悪くない。L1が6時間19分、L2が7時間32分、L3が1時間57分、L4以上が25分だ。L3が若干多いのは反省すべきだが、多くの時間をL2以下に抑えていた割にはネット平均速度がしっかり出ているわけで、効率的な走りができていたと言える。しかも、後半が全く垂れていない。平均心拍数から見ても、主観的疲労度から言っても、無理のない余裕のある走りが徹底できていた。

速度のグラフとヒストグラムも興味深い。0-10km/hで1時間1分、10-20km/hで2時間55分、20-25km/hで2時間30分、25-30km/hで4時間26分、30km/h以上で5時間21分走っていたらしい。キャノンボールでは30km/h以上で走っている時間が多いというのは本当だ。快走できたのは追い風のおかげでもあるが、名古屋までの無風状態の時でもしっかり速度を出せている。パワーを抑えているのに十分な速度が出ているということは、CE(cycling efficiency)が高いということだ。Anchor RE8という車体の空力とDHバーの効果と乗車姿勢とペース配分の総合としてこれが実現できている。

総じて、走力的には今の私はキャノンボールをそれなりの確率で走り切る能力がある事があると言って良いだろう。しかし、実際には失敗しているわけだ。パンクや雨や道間違えによるロスを吸収できるほどの走力はない。また、天候は予測して日程をくむべきで、パンクや道間違えは予防すべきで、それらはエンジニアリングの問題だ。その能力と経験が足りていなかった。だから失敗した。運が悪かったというよりは、実力不足と言うべきだろう。エンジニアリングが敗北したのはなく、それを徹底できなかった私が敗北したのだ。Accidents will Happenのサビが今も脳内リフレインしている。
Accidents happen now and again, Just when you least expect. Just when you think that life is okay, Fate comes to collect! Accidents happen now and again, when people or trains get smart. If you don't concentrate on the thing that you're doing, Accidents will happen just like that!
タイヤに関しては、ブルベで使い倒したAgilest Fastをそのまま使ったのが良くなかった。そもそもツーリングやロングライド用のタイヤではなく、そのうえで長い走行距離で磨り減っていた。スリップサインはギリギリ残っていたが、ブレーキロック等による局所的な摩耗が致命的になったのだろう。チューブレス運用だと、ケーシングの摩耗は即座にパンクに繋がる。チューブで応急措置をしても、長距離の走行には耐えない。耐久性重視のGP5000 AS TRあたりを導入すべきだろう。
眠気に関しては、走行中の昼前頃が頂点だったが、それを我慢してから休憩中にコーヒーを飲んだら、以後は一切感じなかった。夜出発とその前の昼寝という作戦は完璧に機能した。それを遵守する限り、眠気は私にとっては問題にならなさそうだ。
補給に関しては、今回の運動強度でも、仮想PC毎にオニギリ1個と特製ドリンク1本で問題なかった。仮想PCは75km程度に1個で良さそうだ。次の休憩まで50kmだと短すぎ、100kmは長すぎる。摂取カロリーについても75km毎で問題なく、空腹感も膨満感もなかった。おそらく血糖値も安定していただろう。この少なさで持つとは、我ながら脂質適応が素晴らしい。発汗が多い場合、道中の喉の渇きが早くなるので、特製ドリンクの消費も早くなるが、カロリー消費が早くなるわけじゃない。ドリンクの配合を微調整するのは面倒なので、今後の暑い季節では、特製ドリンク以外に水のボトルを増やすべきだろう。それを車体のどこに付けるかは別途考える。
ルート選定は、先達のをコピーしたのが完全に裏目に出た。私の好みは、なるべく幹線道路のみを通って平均速度を高く維持するとともに、乗り換えを減らすことで道間違えのリスクを減らすことだ。距離や獲得標高が最低になるよりは、淡々と進めば確実に着く方が良い。今回の知見を元に、自分でルート引きをするべきだろう。ブルベで他人の引いたルートを走るのに慣れきっていたというのは言い訳になるが、実際に自分でルートを引くという行為を全くしていなかったのにSuper Randonneurとか言って調子に乗っていたのは反省せねばならない。

今後
迷宮で死にそうになった冒険者は、すぐにまた入り直さないと、一生入れなくなる呪いにかかるというジンクスがあるらしい。機材と作戦と体調を整えたら、近いうちに再挑戦せねばなるまい。
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