長野の旅 : 2日目(渋峠)

  • 群馬県吾妻郡中之条町
  • 群馬県前橋市
  • 群馬県渋川市
  • 群馬県草津町
群馬県吾妻郡中之条町

長野の旅の2日目は、前橋から出発して渋川やら草津やらを通って、渋峠に登り、志賀高原を抜けて長野まで行った。道のりは150kmほどだが、間にある渋峠を越えるのでなかなか挑戦的な一日であった。


快活クラブで無料のトーストを朝飯にしてから、前橋市を流しつつ出発。前橋刑務所がなんか格好良かった。府中刑務所よりもレトロだ。

利根川沿いに北上して、渋川方面に行った。最初は妙義だけを左に見ながら走り、さらに進むと榛名山と赤城山の間を抜ける形になる。じわりじわりと上り坂がきつくなってくる。東京だったら名前が付くような長い坂でも、ここらでは名前なんてない。

渋川を過ぎると、利根川の支流である吾妻川に沿って登ることになる。急ではないが、ずっと登り坂である。

やたら長い茂四郎トンネルを抜けると、八ッ場ダムが出てくる。小学校の社会科の授業で習ったところが実際に出てくると嬉しいものだ。ちょうど放流しているところが見られて、なかなかの迫力だった。

それからすこし平坦や下りが続いて爽快に走れたのだが、長野原に入ると登り基調になり、ついに渋峠が始まった。長野原の標高が650mで、草津温泉の標高が1200mなので、550mの登りになる。急坂というわけではないが、ずっと登りで、序盤なので調子こいて重めのギアで漕いでしまったので、かなり脚力が消耗した。この時点で並の峠道より疲れた。

草津はさすが日本一の温泉街といった感じで、たくさんの温泉施設があり、観光客で賑わっていた。足湯もいくつかあったので、私も一休みした。ここには学生の時に来た覚えがある。硫黄の香りが充満していて別世界のような印象がある。硫化水素は鉄にも良くないので、自転車を長いこと置いておきたくない。

草津を過ぎると、渋峠の本番だ。バス輪行で草津まで来て渋峠にアタックする人の方が多いらしい。序盤は、長野原から草津までとそんなに変わらないような勾配の坂が続く。緩めの坂だが、休む暇なくずっと続くのが辛い。森林限界っぽい標高になると、景色が突然開けてきて、スキー場の風景が見えてくる。

白根山の中腹にある「殺生ゲート」を過ぎると、硫化水素ガスが吹き出す区域になる。確かに全体的に硫黄臭いし、なんだか目が痛くなってくる。立ち止まると中毒になる恐れがあるので、駐停車禁止らしい。

岩場を抜けると、葛折りが始まる。つまり勾配が上がるということだ。普通の峠だと葛折りって終盤付近だけだが、ここは後半ずっとこれだ。激坂というわけではないが急坂とは言えそうな勾配で、しかも旅の荷物がやたら重いので、最も軽いギアでクルクルと回さないと脚が持たない。しかしそうすると遅いので、めっちゃ根気が要る。「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし」を地で行く感じだ。たまに崖の部分で元来た道を振り返ると、草津の温泉街や榛名山が見えて壮観だ。

白根山の山頂が見えてきた。2018年に噴火したバリバリの活火山であり、美しい山体とは対照的に恐ろしい山である。避難所がそこかしこに設けてある。以前は加工のお釜が見られたらしいが、今は山頂付近は立ち入り禁止だ。

白根山を登り切ったら峠があると思いきや、違う。その背後に控えるのは横手山である。心が折れそうになりつつも、勾配を増して襲いかかる坂を踏破せねばならない。分け行っても分け行ってもきつい坂。ただ、ずっと山の天辺を走っている感じが爽快でもある。

日本の尾根である中央分水嶺は渋峠付近にも通っているそうで、その碑があった。その概念を知っている人には印象的だが、そうでない人には何も面白くない碑だ。写真を熱心に撮っていたら、通りがかりの車に「それ何なんですか?」と聞かれ、早口で説明する羽目に。その後で通りかかった別のバイクの人は福岡から来て旅をしているそうで、中央分水嶺についても当然知っていて、撮りますよーと言ってくれた。

中央分水嶺からあと少し登れば、国道の最高標高の2172mの地点に至る。ここまでの戦いが長かっただけに、なかなかの感動である。長野原からだと1500m以上の獲得標高になる。よくもまあこんなところまで来たものだ。

正式な渋峠はもうちょい先にあり、そこが長野と群馬の境界になっている。この渋峠ホテルでは渋峠走破記念ステッカー的なものが売っているらしいのだが、休業だった。

渋峠を越えたら、あとはずーっと下り坂である。1500mの獲得標高を惜しげも無く位置エネルギーに変えて志賀高原を走り抜ける。勢いで走り抜けたので、あんまり写真を撮る暇もなかった。というか別段面白い景色もなかった。渋峠アタックの多くが草津側からなのもうなずける。

ブロンプトンは小径車かつリムブレーキなので、長い下り坂でブレーキを使い続けると過熱に陥りやすい。そしてここ渋峠の下はおそらく日本一条件が厳しい下り坂だ。調子に乗って一気に降るとブレーキが効かなくなったりタイヤがバーストしたりして大事故になるので、せっかくの下り坂だがちょいちょい休みながら降りた。実際のところ、リムが熱くて触っていられないくらいの温度だったし、ブレーキの握りごごちが少しおかしくなることもあったので、休み休みにして良かった。

長野側の麓である湯田中という地域もなかなか良い温泉地らしいが、日も暮れかけてきたので観光することもなく通過してしまった。長野市に入る手前には千曲川(=信濃川)を渡った。中央分水嶺を挟んで表日本と裏日本が分かれるわけだが、表日本の雄である利根川と裏日本の雄である信濃川の両方を一日で渡れるというのは、渋峠走破コースならではだろう。

この日の宿は、長野駅前の快活クラブだ。長いこと気になっていた渋峠を走破した自分にご褒美で、寿司など食ってみた。業務スーパーのしかも半額セール品だけども。つまり何が言いたかというと、満足ってのは金じゃ買えないってことなのだ。