ロングライド用にAnchor RE8をカスタマイズ
春も間近なので、エンデュランスロードバイクであるAnchor RE8を購入して、これからロングライドの準備をする。今年こそはブルベに出てみたいし、都合がつけば自転車旅もちょくちょくしたいので、それらに対応できる準備をしていこう。まずは200kmを高確率で完走できる装備と運用方針と身体を整える。

Anchor RE8の現状
RE8について前回の記事でめちゃくちゃ詳しく語ったのだが、おさらいしておく。RE8のフレームサイズ420を選んだことで、低重心かつ直進安定性にすぐれたジオメトリを手に入れた。105 Di2モデルなので、油圧ブレーキとDi2による変速機構の快適性が著しい。ホイールはYOELEOの35mmハイトのセミディープホイールで、タイヤはAGILEST FAST TLRの太さ30Cであり、走行能力としてもかなりガチ寄りになっている。
この装備で自宅周辺の坂道や平地を走る分には、特段の不満はない。ジワッと踏み込んでいけば平地の巡航速度が思ったより高くなるし、下ハンを握れば高速走行や逆風の際の空力も良い感じだし、細かく変速してケイデンスを維持すれば登坂も気持ちよくできる。また、クランク長165mmになったのが奏功している。骨格筋よりも心肺系が先に音を上げる構造が緩和されて、気持ちよく走るだけでも筋肉痛になる程度に筋肉を追い込めるようになった。今のままでも200kmならあんまり苦労せずに走りきれる自信がある。しかし、ブルベのように400km以上走ったり、自転車旅で連日200km以上を走るなら、まだまだ工夫の余地がある。
楕円チェーンリング
チェーンリングを、純正の真円50-34Tから、楕円52-32Tに変えた。楕円チェーンリングみたいな飛び道具がいきなり出てくるのはなぜかというと、膝を守りたいからだ。アウターはO.Symetricの52Tで、インナーはSugino Cycloid Super Hill Climbの32Tだ。
以前にも書いたが、楕円チェーンリングの考察をする。この考察では、上死点をクランク角12時(0°)、下死点をクランク角6時(180°)とする単純なモデルではなく、股関節と膝関節のそれぞれが屈曲時に脱力するクランク角を各関節の上死点、伸長時に脱力するクランク角を下死点としたモデルで考える。幾何学的考察については以下の記事の論考を流用している。hchanaken.com
膝を屈曲した状態で膝関節とペダル軸とBBが一直線になるクランク角が股関節の上死点であり、それは1時くらいだ。膝を伸長した状態で膝関節とペダル軸とBBが一直線になるクランク角が股関節の下死点であり、それは5時40分くらいだ。股関節の上死点および下死点では、股関節を稼働させてもペダルの公転軌道の法線方向にしか力がかけられないので、膝関節のみを稼働させることになる。膝を屈曲した状態で膝関節とペダル軸とBBのなす角が直角になるクランク角が膝関節の上死点であり、それは10時30分くらいだ。膝を伸長した状態で膝関節とペダル軸とBBのなす角が直角になるクランク角が膝関節の下死点であり、3時20分くらいだ。股関節の上死点および下死点では、膝関節を稼働させてもペダルの公転軌道の法線方向にしか力がかけられないので、股関節のみを稼働させることになる。膝関節の上下死点と股関節の上下死点が別であるという認識を適切に持っている人が少ないが、これは幾何学でのみで説明できる否定しがたい構造だ。実際に動画撮影して確認しており、各死点のスクリーンキャプチャを以下に示す。サドルの高さやサドルの前後位置やクランク長やアンクリングでそれらの具体的な値は変わるだろうが、傾向を掴む分には十分な精度だろう。




そして、各関節の死点と稼働区間の図にO.Symetricの形状を重ねてみる。クランクアームが12時の位置にある時、チェーンリングとチェーンの咬合点も12時の位置にある。そこからクランクアームが右回りに傾いていくと、咬合点は相対的に左回りに傾いていく。よって、両者を図の上で一致させるため、チェーンリングの形状を左右反転させて投映している。O.Symetricの52Tの最長径は234mm、最短径は192mm、楕円率は1.215にもなる。

膝関節の上死点と股関節の上死点の間にチェーンリングの最短経が来ている。この区間では、膝関節が強く屈曲している状態で伸長させるとともに、股関節が強く屈曲している状態でさらに屈曲させようとしている。ほぼ膝関節だけで漕がねばならない11時から1時の付近に大腿四頭筋を収縮させて膝関節を伸ばす動作の負荷が軽いということだ。そこから徐々に径が長くなり、1時半から4時半くらいの区間のパワーゾーンで長径が継続している。最長径は3時半くらいで、ちょうど膝関節の下死点のあたりだ。重要かつ直感に反するのが、膝関節の下死点が、膝が伸び切る5時過ぎよりも早い段階の3時過ぎで訪れていることだ。膝関節は、膝を中心にして脛を回転させる。脛とクランクの直線が90度に交わっている時に膝関節が稼働できないことは明白だ。パワーゾーンのど真ん中なのに、膝関節の稼働方向とペダルの移動方向が垂直なので、膝関節は全く稼働させずに脱力させる必要がある。そこでの直径が大きいということは、大臀筋を収縮させて股関節を伸ばす動作の負荷が重いということを意味する。角速度が落ちることで張力を長時間出すことになる。筋収縮速度が遅いほど、発揮できる張力は大きくなる。このことから、楕円チェーンリングは大腿四頭筋を温存して大臀筋を酷使する仕組みであることが分かる。
4時半には急激に径が短くなり始め、5時ではもうパワーゾーンとは言えないほど短くなっている。これは楕円だと5時付近がスカスカに感じるという乗車感と合致している。大腿二頭筋などの裏腿の筋肉(ハムストリングス)や腓腹筋などのふくら脛の筋肉を収縮させて膝関節を曲げる動作の負荷が軽いということだ。角速度が上がることで張力を短時間しか出さないことになる。そして9時半くらいに再び最長径が来る。これは腸腰筋を収縮させて股関節を曲げる動作の負荷が重いということだ。つまり、楕円チェーンリングはハムストリングスを温存して腸腰筋を酷使する仕組みということになる。しかし、前回述べたゼロトルクの引足をするなら見方が変わる。長径にあたる部分は角速度が低くなるので、ゆっくり脚の重さを引き上げて良いことになり、むしろ腸腰筋の負荷は下がる。なお、多くの楕円チェーンリングは最大径が4時くらいに来るのだが、O.Symetricだとそれより前なのが特徴的だ。他社の楕円に慣れている人でもO.Symetricを使うと最初は5時のスカスカ感を感じるかもしれない。
楕円チェーンリングの角速度の変動を抑える効果はペダリングスキルの補助にもなる。真円チェーンリングだと、パワーゾーンでは車体自体の増速に応じてクランクの角速度も増大し、その終点で角速度が最大になるが、そこで高い踏力を保つには筋肉の収縮速度を速める必要がある。そして収縮速度が速い状態で急に脱力することになるが、ケイデンスが高い場合にそれを行うのは高いスキルが必要だ。下手をすると、伸長筋と屈曲筋が同時に収縮する共収縮を起こしてしまう。一方、楕円チェーンリングでは、長径が続くパワーゾーンでは角速度が低下し、最大収縮速度を低める。大臀筋は4時半までで十分過ぎるほどの仕事をし終えて、5時にはスカスカになるので、慣れると4時半付近で脱力するようになる。そこから股関節の下死点である5時40分まで十分な猶予がある。結果として、高いスキルがなくても共収縮を起こしにくくなり、高いスキルがあればより高いケイデンスでも効率的に漕げるようになる。また、真円チェーンリングでは、デッドゾーンでは車体自体の減速に応じて角速度が落ち、その結果として死点とパワーゾーン開始点付近で筋肉の収縮速度が遅くなるが、一定より遅くなるとアイソメトリック収縮に近づいて大きな負荷がかかってしまう。一方、楕円チェーンリングでは、パワーゾーンの開始点での角速度を高めて収縮速度を上げることで、アイソトニック収縮に近づいて、筋肉や関節への最大負荷も抑制できる。角速度の変動を抑えるという点では、重いホイールの慣性力でペダリングスキルを補う方策とも通じる。ただし、O.SymetricやCycloidほどの楕円率になると、パワーゾーンでの角速度の増速を抑えるどころか著しく減速させて長時間張力を発揮させる。結果として大臀筋の総合的な負荷はむしろ上がっていることは留意すべきだ。
各関節を動かす筋肉の疲労分散の話とは別に、関節を固定する靭帯や軟骨の負荷についても考えるべきだ。楕円チェーンリングを使うと、膝が深く屈曲しているデッドゾーンでのトルクが小さくなる。トルクが小さければ、ペダリングの反力として膝の靭帯や軟骨にかかる応力も小さくなる。屈曲している状態では剪断応力の比率が相対的に高まるため、組織を傷めやすい。よって、膝が屈曲した状態での応力が小さくなる楕円チェーンリングは膝関節を傷めにくいと言える。一方で、パワーゾーンでは、応力が著しく大きくなる。たとえ膝関節の下死点付近で膝関節が稼働していない状態でも、股関節の稼働と重力の合力とペダリングの反力を膝関節が受け止めることには変わりない。しかし、そこでは膝が伸びていて、圧縮応力の比率が相対的に高まって剪断応力の比率が相対的に低まるので、膝関節を傷めにくい。股関節に関しては、膝関節よりも遥かに強靭なので、自転車の文脈では心配しなくて良い。
ダンシングの際には股関節をサドルより前に出して、ペダリングすることになるので、各死点が時間的に後ろにずれる。結果として、パワーゾーンの前半で膝関節をより多く稼働させることになり、ペダル荷重が高まるのと、重めのギアを使うこととも相まって、膝関節と股関節の両方を強く使うことになる。パワーゾーンで集中的にトルクをかけて重いペダルをゆっくり動かすことになる一方で、死点付近の滞在時間が短くなるので、急な階段を登っているような気分になる。頑張って踏むと大きなパワーが出る代わりにすぐ疲れてしまう一方、いわゆる休むダンシングで左右の重心移動を意識して漕ぐと、無理のないペースで推進力を稼ぐことができる。ただし、ダンシングをすると膝を酷使してしまうので、私はなるべくしないようにしている。
総じて、楕円チェーンリングは、膝を温存しつつ体重をじわっとかけるペダリングに向いている。平地巡航では淡々と脚の重みだけで漕ぎ、登坂ではケイデンスを維持して回して漕ぐという、ロングライド向けの戦略に合っている。私はそのようなまったりした乗り方じゃないと50kmを超えると右膝が痛くなってしまう。楕円チェーンリングだと、まったりとした乗り方でも意外に速度が出てしまうのが面白いところだ。楕円チェーンリングで峠を登る練習をすると、翌日に筋肉痛になるのは必ず尻であり、前腿ではない。これは膝関節を温存できている証拠と言えるだろう。
楕円チェーンリングはクランク角毎に実質的な変速比が違うというだけの仕組みだ。軽いギアと重いギアで機械的な効率は変わらないので、楕円にしても当然変わらない。むしろ、テンショナーが上下したりチェーンがバタついたりする分だけ、機械抵抗が増してエネルギーを損している。そして、生理学的にも、楕円チェーンリングで有意にエネルギー効率が増すとは言えないという研究報告が多いらしい。使う筋肉の割合が変わっても、使うエネルギーの総量は同じなのだから、むしろ差が出る方がおかしい。その割には楕円だと調整が面倒くさくてエンジニア泣かせだ。ゆえに、かつて一世風靡したこの技術は、もう競技の世界では廃れてしまった。しかし、私は楕円チェーンリングが大好きだ。ケイデンスが低くなっても、短径区間が軽くて角速度が高まるので、膝に大きな負荷がかからない。ケイデンスが高くなっても、長径区間が重くて角速度が低まるので、股関節が忙しくならない。ゆえに、ケイデンス管理がおざなりでも走りやすい。そのうえでちゃんとケイデンス管理をすれば、疲労を最小限に抑えられる。「頑張っていないのに意外に速く走ってしまう」という感覚になるのが楕円チェーンリングの最大の美点だ。ペダリングスキルが高いガチ勢には不要の機構かもしれないが、身体の故障を防いで長く乗りたいエンジョイ勢には向いている機構だと信じる。
楕円チェーンリングの取り付けと調整はなかなか厄介だ。O.Symetricの52Tの長径は56T相当にもなってフロントディレーラの高さが足りないので、アダプタが必要だ。かつては「Wishboneの7mmアダプタ」を取り付けるのが定番だったが、それはもう売っていないので、代替品を探す必要がある。今回は、Amazonで見つけたスペーサ2枚を重ねた。1枚は上端4.7mm、下端2.4mm、角度4mmのスペーサで、もう1枚は均等3mm厚のスペーサだ。それらを重ねると、上端7.7mm、下端5.4mmとなり、FDが斜め上にずれる。スペーサの分だけネジの長さが足りなくなるので、ホームセンターでM5のキャップボルトネジを買ってくる必要がある。20mm長と25mm長を両方買って試すと良い。チェーンキャッチャーがある場合は25mm以上が必要だろう。アダプタで嵩増ししていることと、ネジが斜めになっていることは、ディレーラ全体がロール方向にずれやすくしている。よって、ネジの締込みはかなりしっかりとやる必要がある。走行中にロール方向にずれると、変速が決まらなくなったり、最悪チェーン落ちしたりする。もしそうなった場合、手で押して角度を直して、必要ならネジの締め増しをする。


インナーにはO.Symetricの36Tをつけようと思っていたのだが、フレームと干渉して装着できなかった。タイヤクリアランスと剛性の要請から、最近のカーボンロードバイクはチェーンステーとインナーチェーンリングのクリアランスがギリギリになっている。よって、真円36Tよりも大きいインナーチェーンリングは干渉してしまう。O.Symetricの36Tの長径は39T相当くらいあるので、駄目だ。そこで、ブロンプトンで暗峠と都道201号の攻略のために使ったCycloidの32Tに切り替えた。CycloidはO.Symetricと同じくらい楕円率が高いが、長径35T相当くらいなので、なんとか収まった。

ワイドレシオとDi2
52Tと32Tの差は20Tもあり、メーカー推奨のFDのキャパシティである16T差を大きく越えていて、しかも楕円という魔改造に手を出している。この設定をシマノの人が見たら噴飯ものだろう。しかし、Di2のFDの能力はすごい。こんな構成でもなんとか変速できてしまう。調整のコツは5つある。一つ、クランクとアウターの間にスペーサを入れて、インナーとアウターの幅を調整する。今回は1mmのスペーサを入れた。インナーとアウターの距離が狭すぎるとチェーンガイドのインナー側の壁がアウターに接触し、距離が広すぎるとチェーンが上がらずにアウターとインナーの間に落ちることになるので、0.5mm単位で微調整する必要がある。二つ、サポートボルトを調整してチェーンガイドとチェーンリング回転面をきちんと平行にする。取り付けボルトをゆるめてからサポートボルトを調整し、また取り付けボルトを締めるのが重要だ。三つ、アウターの最長径の歯とFDのチェーンガイドの歯の距離を1mmくらいにする。四つ、仕上げに、E-tubeアプリでチェーンガイドの左右位置をずらして、走行中にチェーンガイドとチェーンが接触しないように調整する。五つ、台座とFDの間のスペーサを2枚使っているせいでロール角がずれやすいので、ボルトをしっかり締め付ける。ちゃんと調整すると、なんとか変速するようになって、私も驚いた。Di2のインナーからアウターにチェーンを上げられるのはオーバーストローク機能のおかげで、チェーンガイドの位置をずらしてもリアのギアに関わらずチェーンのすれが起こらないのはオートトリム機能のおかげだ。Di2で駄目ならフリクション式変速機を導入して手動でオーバーストロークとトリムをしなきゃいけないところだが、カーボンロードでは現実的じゃない。
FDの変速は若干もたつく。インナーからアウターに上げる場合、変速ピン以外の場所ではチェーンが引っかからないので、変速操作をしてから実際にチェーンがかかるまでに最大でクランク半回転くらい遅れる。しかし、ロングライドで使う分には実用になる。もたつくのはインナーからアウターに上げる時だけで、その際には既にそこそこの速度域に達していて急加速を要していないだろうから、多少変速が遅れても問題ない。アウターからインナーに落とす時は坂が迫っているのでなる早で変速して欲しいわけだが、チェーンを下に落とすだけなので変速性能は以前と変わらない。チェーンキャッチャも一応買っておいたが、チェーンキャッチャなしでもチェーン落ちはしない。チェーンキャッチャーをつけた方が安心ではあるが、その分だけFDの締め付けが甘くなってずれやすくなるので、悩ましいところだ。
フロントがワイドレシオになったところで、リアもワイドレシオにすべく、シマノ純正CS-HG710 12速の11-36Tを導入した。amazonで8010円。でかい。

11-34Tと11-36Tを比べると以下のようになる。つまり、違いは最下位の3速のみであり、平地巡航での使用感には全く影響がないながら、登坂性能は顕著に上がる。
- 11-34T: 11, 12, 13, 14, 15, 17, 19, 21, 24, 27, 30, 34
- 11-36T: 11, 12, 13, 14, 15, 17, 19, 21, 24, 28, 32, 36
RDのキャパシティはアウターローとインナートップの組み合わせの丁数差のことだ。最も大きい歯車の組み合わせであるアウターローに合わせてチェーンの長さを決めると最も小さい歯車の組み合わせであるインナートップでチェーンが余るが、それをチェーンテンショナーの可動範囲で巻き取れるかという話になってくる。で、105のRD-R7150のキャパシティは41Tだ。今回の構成ではアウターローが52T+36Tの88で、インナートップが32T+11Tの43なので、差は45となり、キャパシティを大幅に越えている。ゆえに、アウターローに合わせてチェーンの長さを決めるとインナートップでチェーンが弛んでしまうことになる。仕方ないので、チェーンの長さはそのままにして、たすき掛けは絶対にしないと割り切って運用することにした。Di2のシンクロモードを使うとともに、左レバーを無効化してフロントのみの変速を禁止する。そうするとどんなに頑張ってもたすき掛けできないので、ブルベ後半で朦朧としていても誤操作のしようがない。
アウターが52Tになったおかげで、アウター12速の変速比は平均52/11=4.72になり、70rpmで42.54km/hの速度が出ることになる。長径56T相当での踏み応えは56/11=5.09相当にもなる。それでいて、最短径の踏み応えは48/11=4.36相当なので、意外に踏めてしまう。アウター12速のままでゼロ発進してもなんとかなるくらいだ。とはいえ、やはり重いものは重いので、12速は峠の下りでしか使わない。平地巡航ではアウター11速の平均52/12=4.33、長径56/12=4.66相当でも十分すぎる踏み応えがある。アウターでチェーンが暴れると外側に落ちてしまう懸念をしていたが、FDのチェーンガイドが良い仕事をしてくれていて、外側にはまず落ちない。O.Symetricの乗り味はRotorなどの普通の楕円チェーンリングとは違う摩訶不思議な心地よさがある。貧脚によりトップ側が使いこなせていないなら、そもそもアウターチェーンリングは52Tじゃなくて50Tや48Tで十分で、変速性能も高まるはずだとは思う。しかし、長い下り坂というのは結構あるもので、その際にケイデンスを上げすぎないでまったりと走るには、変速比4.72は有用だ。空走させるのではなく、低いケイデンスと弱いトルクでゆっくり回す方がアクティブレストの効果が高まるし、適度なペダル荷重をかけてサドル荷重を逃がす方が尻が長持ちする。
インナーが32T、リア1速が36Tになったおかげで、インナー1速の変速比は何と32/36=0.888にもなった。70rpmで8.00km/hの軽さなので、暗峠も早歩きの気分で登れてしまうだろう。チェーンリングはBCD110では32Tより小さくできず、スプロケットはDi2に対応する範囲では36Tより大きくできないので、これがオンロード系コンポで可能な最も軽いギアの組み合わせだ。しかも楕円で短径30T相当とかなので、膝の負担が小さい。実際のところインナー1速は日常生活ではほとんど使わないのだが、お守りとしては心強い。日常生活ではインナー3速で十分で、その32/28=1.14は11速でコンパクトクランクのインナー1速34/28=1.21よりも軽い。一方、ブルベの場合は急坂でも心拍数とパワーを上げないようにしたいので、インナー1速も普通に使う。勾配10%以上の坂でケイデンス70にしようとすると、変速比0.888でもパワー200Wを越えてしまうので、もっと軽いのがあってもいいくらいだ。

アウターとインナーで違う製品を使っていて、形が完全に相似形ではないので、双方を行ったり来たりするとペダリングに違和感が生じるのではと懸念していたが、それは杞憂だった。以下の写真で分かるように、O.Symetricの方が長方形に近いような形をしていて、パワーゾーンとデッドゾーンのメリハリが強い。パワーゾーンが長く感じるとともに、じわっと重くなって急に軽くなるという乗り味になる。それに比べると、Cycloidは数学的な楕円により近い形で、徐々に重くなって徐々に軽くなるという感じだ。最長径が3時付近にあるので、ほんの若干ながら膝関節の負荷が高い構造のはずだ。しかし、実際に乗ってみると、違和感は全く無い。元々O.Symetricの最長径が早めに来ることと、Cycloidにはオートフォーカス機能があり、トルクが強くかかるほどに咬合部が外側に滑って最長径の位置が微調整されることが原因だろう。O.Symetricが良いのは知っていたが、Cycloidもかなり良い。

この構成のもう一つの美点は、楽しさにある。変速比が0.888から4.72までの5.31倍の変態的な比率になって、しかも楕円チェーンリングの独特な乗り味になっているのは、もはや各地の公園にある「おもしろ自転車」のようではないか。実際、めっちゃ楽しい。最も重いギアにして体重を掛けているだけでも、平地で短時間なら45km/hとか出せる。勾配16%以上の壁のような激坂であっても、ペースを落とせば登れてしまう。ガチ勢じゃなくてもそれができるってところが重要だ。ちなみに、グラベル系のコンポGRXなら38/51=0.745という変速比があるので、0.888程度の変速比は生ぬるい方だ。さらに、MTB系のコンポAlivioだと、フロントが44-32-22Tの3段でリアが11-34Tの9段という組み合わせが作れ、インナー1速22/36=0.611からアウター9速44/11=4.00までの比率6.54倍になる。山や旅の足と考えると5.31倍程度の比率は生ぬるい方だ。
105なんて要らない、12速なんて要らない、電動変速なんて要らない、フロント32Tなんて要らない、リア36Tなんて要らない、というのは普通に自転車を楽しむ上では全て事実だ。超長距離においてもそれらが必須というわけでもない。しかし、エンジョイ勢でもブルベを完走したいとか、荷物を積んで旅したいとかいった要件があるなら、話は別だ。少なくとも私にとってワイドレシオは有益だ。その有益な装備を詰め込むブリコラージュの結果としての車体のなんと美しいことか。
ワイドレシオ設定だと変速操作が難しくて乗りにくいと思われるかもしれないが、Di2のシンクロモードがその問題を解決してくれる。以下の図を見ていただきたい。ギアを上げていく際には、インナー9速(32/14=2.29)の次がアウター6速(52/19=2.74)になる。インナーからアウターに上げると同時にリアを3段分瞬時に下げるという芸当を自動的にやってくれるので、変速比の上昇1.19倍でつながりがよい。同様に、ギアを下げていく際には、アウター4速(52/24=2.17)の次がインナー7速(32/17=1.88)になる。アウターからインナーに下げると同時にリアを3段分瞬時に上げるので、変速比の下降が0.86倍でつながりがよい。こんな複雑な手順を手動でやっていたら疲れてしまうが、Di2ならワンクリックだ。しかも本当に一瞬でギアが変わり、重すぎたり軽すぎたり感じる瞬間がない。この手軽さがあるからこそ、ケイデンス管理という面倒事もやる気になる。

手動だろうが自動だろうが、変速機構が複数ある以上、ハンチング(hunting)の副作用がある。今回の例だと、1.88と2.74を跨いで上げ下げを繰り返す状況だとギアの入れ替わりが目まぐるしくなる。アウターとインナーで変速比が被っている重複区間がヒステリシスマージンとなってハンチングを緩和しているのだが、ワイドレシオだとそのマージンが狭いので、ハンチングが起きやすくなる。たすきがけを防ぐために、インナーとトップ側3枚、アウターとロー側3枚の組み合わせを禁止しているのだが、それもマージンを狭めている。ワイドレシオなのはハードウェアの制約なので今さら変えられないが、ハンチングとたすきがけのトレードオフはソフトウェアの設定であり、Di2のアプリで簡単に調整できる。今のところ、多少のハンチングを許容してたすきがけを嫌う設定にしている。ハンチングが起きても頑張るのは人間ではなく機械であり、レースじゃないならそんなに忙しく変速するわけでもない。一方でたすき掛けは機械抵抗が増えて人間が頑張らなきゃいけなくなる。
インナーからアウターに上げる場合、チェーンラインとオートトリムの関係で、リアが9速以上でトップ側に位置している方が変速が決まりやすい。その観点で言うと、シンクロモードでリアを高速に下げられてしまうのは都合が悪い。よって、ギアを上げる方向に限ってはシンクロモードでもリアを下げないという設定にするか、リアを下げる速度を遅く設定すると、変速の安定性を高められる。しかし、それは最後の手段であり、外出先でなぜか変速がうまくいかなくなったような場合にだけ頼るべきだ。FDの基本設定をきちんと煮詰めれば、シンクロモードを普通に使っても変速できる。
12速のスプロケのラインナップは、105だと11-34Tと11-36Tで、デュラエースとアルテグラは11-30Tと11-34Tだ。そして上位グレードでは11-30Tを選ぶ人が多いらしい。変速時のケイデンスとトルクの変動が小さいクロスレシオの特製を好んでいるからだ。そして、激坂でも50T/30T=1.66や52T/30T=1.73の変速比でもケイデンスを高く保てるパワーがあるからだ。トッププロになるとチェーンリングが54Tなどに大型化することでスプロケも合わせて大型化して11-34Tが選ばれるらしいが、いずれにせよ11-36Tまでの需要はガチ勢にはない。エンジョイ勢は、そこから逆張りして考えるべきだ。レースに出ないのなら、ケイデンスやトルクを厳密に管理する必要はなく、心拍数が上がりすぎない範囲のケイデンスと、乳酸が出すぎない範囲のトルクに収められれば良く、速度が多少変動しても構わない。よって、クロスレシオの必要性は薄い。むしろ、激坂で低ケイデンス高トルクになりすぎないようにできるだけ軽いギアが欲しい。それでいて、下り坂でもアクティブレストとして適度な負荷のペダリングをし続けるために、ある程度重いギアも欲しい。11Tは無くてもよくて、12T始まりでも良いのだが、そんなラインナップはない。そう考えると、スプロケは11-36Tの一択だろう。チェーンリングを今回のような変態的な構成にするのは他人にはおすすめできないが、純正の50-34Tのままでも34T/36T=0.94の変速比は手に入る。インナーだけCycloid 32Tに変えるなら、FDに特殊な調整をしなくてもポン付けでいけて、変速性能も落ちないらしい。インナーだけ楕円形だとインナーの長径とアウターの径の差がむしろ減る区間があるので、そこで変速がすんなり決まるとのこと。それなら楽に36T/32T=0.888が手に入る。インナーだけ楕円にして負荷のかかる登坂区間で膝を守るというのも合理的な選択だろう。
追記:PCD110だと33T未満のチェーンリングを付けるには楕円にするしかないと思っていたが、Stoneという中華メーカーからPCD110用の46T-32Tというチェーンリングセットがアリエクに出ていた。インナーのボルトの位置が本当にギリギリになっていて、シマノじゃこれ作らんだろと思わせる形だ。重いギアが要らないなら、それを使うのもありだろう。

フロントシングルが流行っているらしいので、それについても検討したが、私の乗り方には合わないので却下した。GRXコンポのRD-RX822-SGS(10-12-14-16-18-21-24-28-33-39-45-51T)と44Tチェーンリングの組み合わせなら、変速比はローで44/51=0.862、トップで44/10=4.40となり、変速比の変域に関してはフロントダブルと遜色なくなる。しかし、平坦で多用しがちな11速(44/12=3.66)周辺や登坂で多用しがちな3速(44/49=1.12)周辺のいずれもチェーンラインがかなり斜めになってしまう。チェーンの屈曲角が大きくなる10Tや12Tを多用することにもなる。それらは数ワットとは言え機械抵抗を増やし、その状態で走る時間が長くなることになる。摩擦が大きいと、わずかだがチェーンやギアの摩耗も早まるし、わずかだが油切れも早まる。ワイドレシオになると、トップ付近が1T刻みではなく2T刻みになってケイデンスの維持がしにくいという欠点も一応ある(ただし、ロングライドではトップ付近を使う平地巡行または下り坂では脱力して漕ぐので、弊害は少ない)。フロントシングルの方が走りに集中できるという意見は分からなくもないが、チェーンラインという概念が頭をよぎると、むしろ集中できなくなるのではないかと危惧している。フロントシングルの方が空力が良いという意見もあるが、前輪とダウンチューブとドリンクボトルとツールボトルとチェーンリングとペダルと人間の足によって既に乱流が起きている場所を多少整流したところで、人間と各種装備を取り除いて行った風洞実験のような結果は得られまい。重量に関しても、軽いギアを得るためにスプロケットを巨大化させる必要があるので、軽くはならない。知らなければ悩むこともないのだが、もう知恵の実を食べてしまっているのだ。フロントダブルなら、平坦はアウター9速(52/14=3.71)周辺、登坂はインナー3速(32/28=1.14)周辺を多用するが、そのいずれもチェーンラインは真っ直ぐに近い。アウターチェーンリングが大きいとスプロケ側で小さいギアを使わなくて済むので、チェーンの平均屈曲角も小さくなる。フロントダブルの欠点はフロント変速がもたつくことだが、ロングライドでは、平坦区間はアウターのみ、登坂区間はインナーのみで完結できるので、フロント変速の回数がそもそもそんなに多くない。グラベルバイクやマウンテンバイクでもなく、レースに出るわけでもなければ、路面状況や最適加速度が刻一刻と変わるわけでもないので、変速の頻度は相対的に低い。そして、Di2なら、そのフロント変速もシンクロシフトによって全く意識せずに行われる。むしろ、GRXのフロントダブルに今回の改造を施して52/10=5.2から32/51=0.627までの8.28倍の変域にしてみたいくらいだ。無駄に金がかかるからやらないけど。
ブルベの巡航速度とケイデンスと変速比
ブルベは15km/hの速度で走り続ける能力を認定するものだが、休憩時間込みなので、走行時の平均速度はもっと高い必要がある。平地で条件が良い時には25km/h、条件が悪い時でも20km/h、登坂とそれに伴う下りは別枠という感じらしい。700cホイールに30cタイヤをつけた場合の外周は2.146mということにすると、速度25km/hの際の車輪回転速度は194.16rpmだ。20km/hだと155.32rpmだ。
ロードレースでの最適ケイデンスは90rpmと言われるが、ブルベなどのロングライドではもっと低く、75rpmくらいだと言われる。ロードレースは乳酸が溜まる負荷を出すので心拍数を上げて血流を強くする必要があるが、ロングライドではできるだけ心拍数を下げて走行することが望ましい。乳酸を出さない負荷で走ることを前提とすると、ケイデンスを上げる動機がない。ケイデンスが低いほど、心肺機能や尻にかかる負荷は小さくなるが、トルクが必要になるので脚の筋肉の負荷は上がる。しかし乳酸が溜まる負荷を出すと持たないので、速度を抑えて負荷を調整することになる。個人的には、75rpmは高すぎて心拍数が上がりやすいので、65rpmから75rpmの間に収めるようにしている。70rpmが最適点ということにしよう。
ブルベの高速巡航時には車輪を194.16rpmで回すことが望ましく、最適ケイデンスは70rpmなので、典型的な変速比は194.16/70=2.77ということになる。低速巡航時の車輪155.32rpmだと、典型的な変速比は155.32/70=2.21ということになる。てことは、私のギア構成だと、高速巡航時にはアウター6速を下限にし、低速巡航時にはアウター4速を下限にして走ることになる。ケイデンスが70rpmを割って60rpmとかになったとしても、レースではないので、急いでギアを下げて速度を稼ぐ必要はない。じわっと踏み続けて速度が戻るのを待てば良い。高速巡航時に赤信号で停止した際にも、アウター4速の2.17で発進すれば脚の負担は低い。つまり、平地はアウターだけ使っていれば大体いけて、ハンチングの心配はない。
登坂区間ではインナー縛りで走れる。インナー9速が2.29で、それで70rpmなら、2.146*2.29*70*60=20.64km/hであり、ロングライドの登坂でその速度を出すことは稀だ。ゆえに、登坂でもハンチングの心配はない。登坂の後には下りがあるが、その際には平地巡航よりも高い変速比を使うので、アウター縛りで良いはずだ。ゆえに、下りでもハンチングの心配はない。登ったり下ったりを繰り返すコースがあればハンチングが問題になるだろうが、実際の峠道だとそういう状況は出てこない。せっかく稼いだ標高を捨てるのは土木工学的に非効率だからだ。登坂中にたまに出てくる平坦や下りは、インナーのままで漕ぐか、脚を休めていればいいだろう。
ビッグプーリー
アウターに52Tという大きなチェーンリングを使っていることは、その分だけスプロケット側で軽い大きなギアを選択する頻度が高まることを意味する。チェーンは、大きな歯車同士で引っ張られる方が、各リンクの屈曲角度が浅くなるので、摩擦抵抗が減る。すなわち、歯車が大きいほどチェーンの駆動効率が良くなる。例えば、フロント52Tでリア19Tの組み合わせだと、チェーンリンクの角度はフロント側で6.92度で、リア側で18.94度となる。フロントが50Tの場合、ほぼ同じ変速比をにするにはリアを18Tにすることになるが、その場合のチェーンリンクの角度はフロント側で7.20度で、リア側で20.00度となる。フロント52Tが駆動効率で有利なのは明白だ。
同じ理屈で、ビッグプーリーを使ってチェーンの駆動効率を高めるカスタマイズが一部で流行っている。105の純正だとガイドプーリーもテンショナープーリーも11Tなので、それらに巻き取られる際にチェーンリンクは32.72度も曲がる。仮にそれを17Tにするなら、角度は21.17度まで緩和できる。カセットスプロケットに12枚もの歯車を積んでいることから考えると、2つのプーリーが11Tから17Tに大径化することによる重量増はわずかなので、ビッグプーリーにしない手はないとも思えてくる。
しかし、良いことばかりなら、そもそも純正でなぜビッグプーリーになっていないのか。最大の理由は、ガイドプーリーを大径化すると、変速時にガイドプーリーにかかる横方向のトルクが増すので、変速性能が悪化することらしい。また、チェーンリングとスプロケットの間であるドライブ側ではペダリングのトルクに応じて100Nmとかの張力がかかるが、スプロケットとプーリーの間のリターン側の張力はチェーンテンショナーに引っ張られる10Nmとかのトルクに過ぎないので、プーリーを大径化したとしても実走時には数ワットしか削減できない。その割には重量と空気抵抗が増えるので、11Tの方がマシだとシマノは判断しているのだろう。チェーンリンクの曲がり角はプーリーの歯数に反比例するので、歯数に対する限界効用の低下が早いが、歯数に応じて長さは線形、投影面積や重さは線形以上の費用を生じる。
機械抵抗の低減はそもそもの出力が小さい人にこそ有益で、レースに出ないなら変速性能も重要ではなく、速度が低いなら空気抵抗の増加の影響も小さいので、ビッグプーリーはむしろエンジョイ勢がやるべきカスタマイズではある。なので私もやってみたくはあるのだが、コスパが悪すぎるので躊躇している。安いのでも3万円とか5万円とかかかる。もしプーリーを交換するとしても、シマノGRXコンポのプーリーを導入するだけにするだろう。GRXだとガイドプーリーは11Tで、テンションプーリーは13Tになっている。105のブッシュベアリング式と違って、GRXはボールベアリング式なので、プーリー自体の抵抗が若干減るはずだ。ガイドプーリーの径はそのままなので変速性能は変わらず、テンションプーリーは若干大径化して若干チェーンの抵抗が減ることになる。テンションプーリーのアームとチェーンのクリアランスは11Tで15mmくらいあるので、13Tに大径化して数mm減っても問題ないだろう。
スプロケットの使用ギアとガイドプーリーとテンションプーリーは、全て回転面が同じ平面上に位置するようにアームで保持されている。したがって、ガイドプーリーに巻き取られる際と出ていく際のチェーンリンクの屈曲および伸展では、横方向の圧力がかかっていないので、相対的に摩擦力は小さい。一方で、テンションプーリーから離れたチェーンは、チェーンリングに向かって斜めに伸びる。よって、チェーンがテンションプーリーから出ていく際の横方向の圧力は相対的に大きく、摩擦力も相対的に大きい。よって、大径化の恩恵はテンションプーリーの方が得やすいと考えられる。テンションプーリーは大径化の弊害も小さいことから考えると、GRXでテンションプーリーのみを大径化したのは合点がいく。それでも13Tに敢えて抑えていることに、シマノがいかに大径化に慎重なのかが伺える。GRXのプーリーセットだけなら1820円で買える。シマノでさえ認めた安全な大径化が比較的安価に行えることになる。
とはいえ、現在の純正プーリーで全く問題なく動いているので、おそらくブラインドテストで弁別できない軽微な改善のために手間をかけるのも億劫だ。よって、当面はお預けだ。というか、ビッグプーリー化で「ギア1枚軽くなった」とか言ってるYouTuberは何なの。仮にギア1枚というのを13Tと14Tの差とすると、150Wの抵抗が139W相当になるということだが、そんなイノベーションは簡単には起きないだろと。
パワーメータと速度計と心拍計
ブロンプトンのBBをホローテック2化してクランクを105にした時に、ついでに4iiiiのPrecision 3というパワーメータを買った。左アームだけのもので、105のクランク長165mmだ。それを流用することにした。左クランクアームはホローテック2スプラインに互換性があれば、105でもUltegraでもDura-Aceでも付けられるが、世代によってQ-factorが違うことには注意しなければならない。4iiii付きの左クランクアームは105のR7000なので、Q-factorが146mmになるように幅と角度が設定されている。一方でRE8付属のR7150(クランクはR7100と同じ)はQ-factorが148mmになるように幅と角度が設定されている。
想定するQ-factorが2mm違うということは片側で1mm違うということなので、何らかの方法で左ペダルの付け根が1mm外側に来るように調整したい。1mmずれていてもブラインドテストで気づかないだろうが、200kmで3万回転以上クランクを回すのだから、左右非対称による疲労の偏りは避けたい。方法は3つある。クランクアームを1mmずらすか、ペダルを1mmずらすか、クリートもしくはトウクリップを1mmずらすかだ。クランクアームをずらす方法では、スレッド式BBのカップの内側に内径35mmで厚さ1mmのスペーサを入れるか、プレスフィット式BBの外壁とアームの間に内径24mmで厚さ1mmのスペーサを入れる。その分だけスプラインの噛み込みが1mm少なくなるが、安全マージンがあるので実用上の問題はなく、脱落防止の爪もちゃんと引っかかる。クリートに関しては1mm内側につければ靴が相対的に外側に来るので簡単だ。トウクリップは取り付け位置を1mmだけ外側につければ、つま先に感じるトウクリップの感触で足の位置を決めているので、だいたい左右対称の位置に足の位置が収束する。ペダルの根本に1mmのワッシャーを入れる方式は、ペダル全体が1mm外側に行くので、最も直感的だ。ペダルのアームへの噛み込みが1mm減るが、こちらも安全マージンが十分にあるので、強度的な問題はないだろう。
美観とメンテ性が最も良さそうなので、BBの外壁とアームの間にスペーサを入れることにした。BBとアームの間には元々何も無いので互いに擦れる構造になっているのだが、両者を押し付ける圧力が無いので、ちょっとクランクを回せば互いに触れない状態になって、摩擦力はゼロになる。スペーサを置いた場合、スペーサはアームと供回りするようになるが、スペーサとBB外壁の間の圧力が無いので、やはり摩擦力はゼロになる。よって、抵抗にはならないと考えられる。それでいて、スペーサがついていることは外観上では全然わからない。ということで、4iiiiのパワーメータ付きのR7000左アームクランクを装着した。アームの裏にパワーメータが貼り付けられているので、フレームとのクリアランスが心配だったが、大丈夫だった。R7000の模様とR7100の模様が微妙に違うので、車体を右側から見た時と左側見た時で印象が変わることにはなるが、両側から同時に見ることはできないので、言われないと気づかないだろう。
測れるのは左クランクのパワーだけなので、それを2倍して両側のパワーとみなすことになる。左右の脚力には数パーセント単位で違いがあるから、理想的には両足パワーメータが欲しい。しかし、ブルベでパワーメータを使うのは疲労の管理をするためなので、傾向さえ分かれば良く、多少の誤差があっても構わない。パワーメータはケイデンス計も内蔵しているので、別途のケイデンス計は必要ない。
4iiiiのパワーメータはトルク効率やペダル平滑性が分かるのが面白い。トルク効率は、クランク角全周に散らばった全サンプルに対して、正のトルクのサンプルの合計値を分母とし、正負全てのサンプルの合計値を分子として、割合を取ったものだ。トルク効率が100%になると、クランク全周で正のトルクが出ていることになるので、ゼロトルクの引足を練習するのには役立つ。これはちょっと自慢なのだが、私はハーフクリップでもトルク効率100%が出せる。とはいえ、引足を正のトルクに完璧にしようとすると変な漕ぎ方になってむしろ疲れるので、実走でトルク効率を高める努力をする必要はない。引足区間がほぼゼロトルクであれば、正と負の間を行ったり来たりするはずだ。よって、むしろ100%にならない方が良い。実際、私がロングライドで脱力して漕いでいると、トルク効率は平地で75%、登坂で85%くらいになる事が多い。とはいえ、それより高かろうと低かろうと別に問題はない。
ペダル平滑性はクランク1周における平均トルクを最大トルクで割ったものだ。踏み込みが強いか引足が弱いと低くなり、逆だと高くなる。引足や死点で踏み足と同等の正のトルクを出し続けられると100%になるはずだが、それは人間には無理だ。また、完全なゼロトルクの引足だけをして踏み足を自重だけに任せるなら、50%になるが、それも実際には難しいし、そうする実用的な意味がない。ゼロトルクの引足だけだと40W未満しか出ないが、実際にはのんびりしていても100W以上で走るので、ペダル平滑性は脱力して走っても20%とか25%とかになる。しっかり漕げばそれ以下になる。これも高かろうが低かろうが気にする必要はない。というか、ペダル平滑性に実用的な意味はほとんどない。膝を保護する観点では最大トルクをそのまま表示してそれを一定以下に抑えたいのだが、トルク表示に対応するサイコンは少ない。最大トルクはペダル平滑性とパワーとケイデンスから逆算できるが、走行中に暗算するのは面倒くさすぎる。総じて、トルク効率やペダル平滑性はペダリング練習中に面白がるための指標であり、最適値を追求する類のものではない。とはいえ、ロングライド中の気分転換として、恣意的にトルク効率やペダル平滑性を上げたり下げたりして遊んでみるのも一興だ。
なお、4iiii以上にコスパの良いパワーメータとして定評のあるMageneのPES P505やP515は、ペダル円滑性は出すのに、トルク効率は出せない。Mageneに限らず、スパイダー型のパワーメータは左右の足の合計トルクしかわからず、左右差はクランク角で区別しているからだ。つまり、右クランクが前側にある間のトルクは、右足の踏み足と左足の引き足を合算して右足のトルクとみなしている。逆もしかりだ。スパイダー型は左右の総合的なトルクが正確に出せるが、実は左右バランスは代替値に過ぎない。そして、ペダル円滑性も引き足区間を無視して算出せざるを得ないので、ほとんど意味のない指標になっている。全く異なる測定値を同じ名前で扱うのは欺瞞と言わざるを得ない。トルク効率とペダル円滑性を正確に算出するには、左右独立で歪みを検出するしかない。それができるパワメで最安なのはやはり4iiiiなのが現状だ。Q-factorやチェーンラインが純正と変わらないのもよい。とはいえ、片足計測のパワーを2倍するよりは、両足合計のパワーを測るスパイダー方式の方が精度が高いのは明白なので、悩ましいところだ。
速度計(車輪回転計)は別途につける必要がある。ブロンプトンにつけていたCoospoの速度計をRE8に移植した。前輪ハブにつけても後輪ハブにつけても良いのだが、後輪にした。前輪だとLEDの光が目に付くのが鬱陶しいのと、後輪ハブはどっちみち乱流の中なので、多少突起が増えても抵抗の増加が少なそうなのが理由だ。心拍計はCoospoのアームバンド方式ものを利用する。
サイクルコンピュータ
RFX8にはCatEyeのPADRONE SMARTというサイコンがついていたが、どうにも接続がよく切れるので使わなくなってしまった。それ以後、スマホのIpBikeアプリとANT+レシーバを組み合わせて使っていて、各種センサーデータの表示やスマホの地図とルート案内が同時にできるので満足していた。しかし、今回はサイコンを導入する。ブルベで電池持ちの不安を抱えることは避けたい。遠隔地でDNFした場合にスマホだけは生きていてくれないと生存性に関わるので、サイコン機能は分離すべきだろう。要求仕様としては、以下のものだ。
- 走行経路とセンサーデータの履歴をFIT形式でエクスポートできる
- オフライン地図データ内蔵で、ルートナビがルート補正付きでできる
- GPXもしくはRide with GPS経由でルートのインポートができる
- GNSSがGPSとQZSS(みちびき)対応
- 電池が30時間以上持つ
他にも、ANT+で一連のセンサーのデータが取り込めるとか、USB-C充電だとか、IPX7防水だとか、いろいろ条件はあるが、大抵のサイコンでそれらは満たされている。で、全てを満たすものでかつ比較的安価な製品として、BrytonのRider 650とiGPSPORTのiGS630が選好に残った。それでしばらく市場を監視していたら、ヤフオクでiGS630Sが17050円で出ていので、ポチった。

が、届いてみたらなんとiGS630SではなくiGS630だった。出品者が大手企業なこともあり、その旨を連絡したらすぐ返品返金という流れになった。間違えることは良くないが、誠実に対応することは良いことだ。で、せっかくなので、返品する前にiGS630をちょっと使ってみた。これも35時間電池が持つので、600kmブルベに出たとしても休憩中の充電1回で済むことを示している。それでいて、2.8インチカラー液晶の画面が見やすい。反射型液晶なので、昼間はバックライトを0%にしても、外光の反射がバックライトになってそこそこの視認性が得られる。各種センサーとの接続も簡単で、画面のカスタマイズも本体とアプリで簡単にできる。スマホと同期させて、GPX取り込みでのルート作成や走行ログのFITやTCXでのエクスポートも簡単にできる。総じて、私の用途にとって何の不足もないものだった。でも中古美品12000円が相場なのに17050円で掴まされたのではホモ・エコノミクスのゲームとしては面白くないので、返品せざるを得ない。

引き続き市場を監視していたら、Bryton Rider 650が16000円で出ていたので、ポチった。バッテリーは33時間持ち、機能的にはiGS630と遜色ない。じゃあiGS630を安く調達してもよいじゃないかという話になるが、趣向を変えてBrytonを使ってみることにした。マウント接合部をガーミン方式にすげ替えられるので、仕様上も問題ない。

届いた商品は今度は正真正銘Rider 650だった。筐体の容積はiGS630とそんなに変わらず、横に太くなった。重さも90gでほぼ同じだ。画面のコントラストや解像度はiGS630の方が良い。機能もiGS630の方が多い。てことで、性能と機能では負けていると言わざるを得ない。2025年発売と後発なのに意外だった。UIもなんだか古臭い。タッチ操作で多くのことができるが、走行ログ記録の開始と停止、ページの切り替え、ラップには物理ボタンが割り当てられている。また、iボタンにステータスページや地図ページを割り当てると、走行ログ記録中でなくてもセンサーの値や現在地の地図が確認できるようになっている。タッチ操作だけでも物理ボタンだけでも所望の操作が完結しないことがあり、戸惑う。長野のくそ寒い場所に住んでいると手袋を外したくないので、タッチしないと駄目な場面になると苛つかざるを得ない。
さらに、シングルタップするとクイックステータスページのが駄目だ。クイックステータスページは画面の明るさを買えたりバッテリーの残量を確認したりスマホの通知を確認したりする機能だが、最も実行しやすいシングルタップという動作でなぜか走行とは関係ない管理用の機能が呼び出されることになってしまっている。さらに、ステータスページの各項目を長押しすると、走行中なのに、項目の編集機能が呼び出されてしまう。つまり、走行中はページめくりだけがしたいのに、誤動作で管理機能や編集機能を起動することが多すぎるのだ。Garminもそうらしい。電源ボタンを押してタッチ操作を無効化すれば誤動作を防げるが、そうするとスワイプでページめくりができなくなる。タッチ操作無効化を入れた点はユーザの使用感を大事にしていると評価できるのだが、そもそも誤動作するUIになっているのがおかしい。iGS630では編集機能が完全に分かれていたが、そうすべきだっただろう。クイックステータスページも表示機能と編集機能が混在しているのが駄目だ。CMSじゃないんだから、編集しやすくしないでいいのよ。
表示面の下部に真っ白な「Bryton」ってロゴが書いてあるのもいけてない。表示面に高コントラストで文字を置くのは、認知ノイズでしかない。GarminもWahooもiGPSPORTもそうなのでBrytonだけの問題ではないのだが、ユーザの利便性とブランド誇示のどちらが大事か考え直して、せめてダークグレーにしろと言いたい。なので、ビニールテープ貼って隠してやった。画面の上端と下端の両方に貼ると段差ができてガラスの保護にもなる。サイコンに関わらず、いちいちパーツ毎にブランドロゴを書かれると、文字だらけになっちゃうだろ。ブランド認知度が大事なのは分かるが、ユーザは君たちの広告担当ではない。

そして、ナビが微妙に使いにくい。ナビ中に心拍数など警告が出ると、OKを押すまでダイアログが出続ける。手袋をしているとOKが押せないので、ずっと地図が見られない。また、ルート外のコースを敢えて走っていると、ナビ中にセンサーデータの方を見ていても勝手にリルートした結果の地図を出そうとするので、センサーデータが見られなくなる。そして、そもそも解像度が低くて地図が見づらい。なぜか4iiiiのトルク効率とペダル平滑性が取得できない。走行ログのエクスポート形式がFITだけなのも利便性が悪い。Rider 650はセンサーのステータス画面やナビとして普通に使える製品ではあるが、iGS630に比べると微妙に使いづらい。高いのに使いづらいというのは、やはり許容できない。

ということで、購入3日目にして売り払うことを決断し、初めてメルカリで出品をすることになった。オークション形式だと時間が制約になって最適解が得られないので、17000円固定価格で出してから徐々に下げる手動ダッチオークション形式にしてみた。面倒だが、これも勉強である。結果として、 6日後に16000円で落札された。途中で何度か値下げ要求があったが、応じなかった。私がその値段で買ったので、私と同等の経済観念の人間がいる可能性が高いからだ。現金に困っていない私としては、早く売らなきゃならない理由がない。あまりに長いと製品が陳腐化するが、数日でそれが進むわけでもない。結果的には、買った時と同じ値段で捌けた。送料こちら負担で手数料10%取られるのでそれでも赤字だが、授業料としては妥当なところだろう。私にとってはババ抜きみたいな取引だが、欠陥を隠して取引するレモン市場を形成しているわけではない。仕様通りの製品が単に私の価値観に合わなかったというだけだ。そして、これもまた合意の上の取引なのでパレート改善であり、あとは購入者の好みに合致して彼または彼女にとっての消費者剰余が生じるのを願うのみだ。
再びサイコン難民になってネットを彷徨い、IGS630無印の中古11000円とIGS630Sの新品25000円が候補になった。両者ともタッチ操作に対応していないので、手袋をはめていても絶対に操作感が悪化しないことが保障されているのが良い。そして、やはりIGPSPORTSの製品はコスパが抜群だ。無印のバッテリー持ち30時間に対してSの方は45時間で、かつSだけにリルート機能とデュアルバンドGNSS機能があり、機能も性能も当然ながらSの方が上だ。しかし、無印の方を買うことにした。600kmブルベをやるにしても30時間以内には休憩するので45時間はオーバースペックで、ブルベで道を間違えたら元の道に戻らなきゃならないのでリルートは不要で、デュアルバンドGNSSを有効にすると電源消費が激しいのでブルベでは意味がない。フルGNSSならシングルバンドでも十分な精度が出る。QZSSに対応している時点で、準天頂軌道の3機の内の1機と赤道上静止軌道の1機とは通信できる。あとは30機くらい飛び回っているGPSのうち2機と通信できれば4点測量が成立する。GLONASS、Galileo、BeiDouも含めれば常に10機以上は捕捉できるので、屋内やビルの谷間でなければ、メートル級の精度は全く問題ない。経験上、林道などの樹木に囲まれている程度でも、5m以上の誤差が出ることは稀だ。ホイール速度計を使うなら位置情報での速度推定はしないので、デュアルバンドによるサブメートル級の精度は不要だ。そして、サイコンは壊れたり失くしたり盗まれたりする可能性が高いことを考えると、ハイエンドを買うべきじゃない。IGPSPORTはモデルチェンジが激しい企業なので、現行ラインナップであるSをプレミアム価格で買うのは損だ。すでにディスコンになった無印はもはやファームアップは期待できないが、致命的なバグはすでに出尽くしているだろうからその点では安心だ。
IGS630無印でもGPXファイルを取り込んでルートナビをする機能は当然ある。ブルベの主催者や有志が配布するファイルを取り込んでおけば、何の苦労もせずにルート作成ができる。もちろん自分で作ってもいい。スマホ側のアプリは単体でルート作成をする機能もあるため、Ride with GPSなどの外部サイトに依存せずにルート作成ができる。iGPSPORTのアプリも使いやすい。目的地をアプリで検索してデバイスに送ればすぐにナビが開始される。


IGPSPORTのアプリを使えばスマホだけでルート作成ができる。ただし、自転車モードだと幹線道路を避けるという致命的な不具合があるので、自動車モードにしないと使い物にならない。また、使い勝手も直感的ではなく、始点と終点を指定してから、経由地を追加するという謎の仕様になっている。出先で都度目的地を入れて行動する観光サイクリングのような使い方なら使えなくもないが、正直言って使いやすいとは言い難い。そもそも、ルート検索のアルゴリズムが拙い。「なるべく太い道を使う」「なるべく交通量が多い(通りやすい)道を使う」という概念が実装されていないので、自動車モードでも農道や裏路地を普通に通してくる。自動車モードだと高速道路などに乗ってしまうのも問題だ。この機能を作っている開発者は自分で使っていないだろう。これはIGS630ではなくIGPSPORTアプリの問題なので、BiNavi Airなどの最新機種を買っても同じ使用感になってしまう。逆に言えば、IGPSPORTが今後改良されれば、古い機種でも恩恵が受けられるはずだ。
経由地がたくさんある場合やコースを微調整したい場合はPCで作業した方が早い。Google Mapsで経路検索をしてから、「リンクをコピー」して、そのURLをMaps to GPXというサイトにペーストすればGPXがダウンロードできる。その後、サイコンをPCにマウントしてコピーするか、Google Drive経由でスマホに送って、IGPSPORTアプリ経由でサイコンに送る。面倒くさいが、慣れれば5分もかからない。なお、Google Mapsのルート検索でも自転車モードではなく自動車モードで有料道路を除外する方がまともなコースになる。自転車モードは交通密集地帯を避けようとしすぎて路地裏とか農道とか階段とかを通らせようとしてくるし、下手すると通行不可の水道橋とかも出てくる。ただし、自動車モードだと、たまに無料の自動車専用道がコースに入るので、そこだけ注意だ。Maps to GPXはGoogle Mapsモバイル版が生成するシェア用URLには対応していないのにも注意だ。モバイルでルート作成を完結させたい場合、マップのURLでGoogle Mapsアプリが自動起動しないように設定を解除したうえで、Google Mapsのブラウザ版を使う。ルート検索の結果を「シェアする」でURLを取得すれば、Map to GPXで処理できる。

実際問題として、サイコンのナビはアホだし使いにくいので、観光サイクリングでナビ機能を使いたい場合には、スマホの地図アプリを使った方がよい。Google Mapsの自転車モードには幹線道路を避ける不具合があるので、Google Mapsの自動車モードかYahoo Mapの自動車モードが最適だ。検索ルートが自動車専用道に乗ってしまう場合にのみ、両者の自転車モードに切り替えると良い。Ride with GPSやKomootは経路探索が使いにくい上に無料版だとルートの保存ができない。NaviTimeやBikemapは経路探索が賢いが無料版だと機能制限が多すぎて実用にならない。スマホでルート作成を完結させたい場合、BRouter-webも使えて、完全無料でGPXの保存もできるが、IGPSPORTと同様にOpenStreetMap系なので検索機能も道の選択もアホだ。総合的に言って、Google MapsとYahoo Mapの併用が最強だ。スマホでナビをすると電池持ちが心配になるが、走行中は画面を切って音声案内だけさせれば、そんなに電池は食わない。迷いそうな時だけ画面を点けて確認すればよい。
Di2連携ができるのも便利だ。シンクロモードだと左レバーが余るので、それをサイコンのページ切り替えに割り当てられる。そうすると手を離さなくても地図とセンサーの確認ができる。タッチ操作よりもむしろ便利だ。BrytonでもDi2レバーでページ切り替えはできるのだが、「進む」しかなく、またレバーを押してか反応するまでに1秒くらいかかるので、苛つく。IGS630Sは「進む」と「戻る」を各レバーに割り当てられるし、反応が機敏なので、断然使いやすい。気軽に切り替えられないとセンサーや地図のどちらかを見なくなってしまうので、オーバーペースや経路外れのリスクが高まる。Di2のシフトインジケータがサイコン上に表示できるのも嬉しい。赤信号などで停止する際には、発進時のことを考えてアウター3速に落としたくなるが、シフトインジケータを見ればそれが簡単かつ確実にできる。また、オートバイのマニュアル変速と同じ要領で、坂の斜度に合わせて一発で最適変速比を合わせるのが楽しくなってくる。ロードバイクはギアの段数が多すぎるので、その遊びはシフトインジケータがないとやりにくい。
サイコン上に表示するページの構成がアプリで設定できるのも便利だ。私は表示するページを以下の5つに絞る。それぞれに以下のような情報を含む。各ページのレイアウトやページの並びがアプリで簡単にカスタマイズできるのが素晴らしい。
- 即時情報ページ:現在速度、現在ケイデンス、現在心拍数、現在MHRゾーン、現在3秒平均パワー、現在FTPゾーン、現在勾配、現在ギア、活動時間、距離
- グラフページ:速度グラフ、ケイデンスグラフ、心拍数グラフ、パワーグラフ、現在トルク効率、現在ペダル平滑性
- 統計情報ページ:活動時間、実測時間、距離、獲得標高、平均速度、平均ケイデンス、平均心拍数、平均パワー、TSS、消費カロリー
- 雑多情報ページ:現在時刻、日の出時刻、日の入時刻、温度、標高、進行方位、総走行距離、サイコンバッテリー、Di2バッテリー
- 地図ページ:地図、現在心拍数、現在3秒平均パワー

グラフページの実際のスクリーンショットがこれだ。特に登坂区間で、心拍数とパワーとケイデンスを管理しながら無心でペダリングをする際にはこのページを表示する。時間や距離を表示しないのが重要だ。パワーは発揮筋力の加減で簡単に調整できても、心拍数を意識的に調整するのは難しい。しかしそれをやろうとして自らの身体と対話していると、全く何も考えない無の境地に至る。実際には心拍数に拘っているので身心脱落に達してはいないのだが、心拍数以外の雑念的なものが消え去ってきて、Z2はおろかZ3上限に来ても苦痛を感じず、正気が長時間維持できる。

ブルベでは、時間と距離を見ないと各PCの通過時間が守れない可能性がある。しかし、主催者が各PCの場所や通過時間を設定するにあたっては、距離と勾配を勘案して無理のない値を算出しているはずだ。試走もして実際に無理がないかどうか確認してくれてもいる。よって、トラブルがない限りは、カメ作戦で一定のパワーで走り続けていてPCで足切りされる確率は低い。もちろん、その一定のパワー低すぎたら駄目だ。私の重量比FTPは220W/65kg=3.38で、巷で完走の基準とか言われている3.0は越えているので、無理をしないで走ればいけるはずだ。そして、走力がキリギリであるほど、カメ作戦よりも無理をすると完走率が下がる。よって、グラフページに時間と距離を表示して焦ることに合理性はない。想定した負荷を徹底して一定ペースを保っても駄目なら、ペースを崩したってどうせ駄目だ。
同じ理由で、iClimbとかClimb Proとかいう、登坂区間の勾配や現在位置を可視化する機能を私は無効化している。ロングライドにおいては、坂がいくら続こうが続くまいが、勾配がどれだけであっても、やることは変わらず、淡々と同じパワーで踏むだけだ。坂でも特段に高いパワーを出さないのであれば、坂だから辛いということはない。よって、「あとどれくらいだから頑張れる」みたいな感情も全く湧いてこない。もちろんそれはロングライドの途中で現れる坂を乳酸を貯めずに走る場合の話だ。ヒルクライマーが坂の頂点で体力の限界を迎えるために出力配分を調整するのであれば、勾配の可視化は有用だろう。
USB-Cの充電ポートは筐体裏側にあるので、マウントしている状態で給電や充電をするには、マウントアームが肉抜きされている必要がある。私のマウントアームはそれに該当するので、出先でもし電源が足りなくなっても、モバイルバッテリーと繋げれば使い続けられる。IGS630が1300mAhで、リチウムイオン電池からUSBを介しての送電効率は3.7V/5V=74%が理論値で、さらに熱損失などによって65%ほどに効率が落ちるので、35時間使って空になったIGS630をさらに35時間給電しながら使うと、モバイルバッテリーの2000mAhを消費することになる。ブルベ以外ではそんなに連続で使うこともないだろうが、もし出先でサイコンのバッテリーが少なくなってきたら、サイコンの下にぶら下げているRN800がモバイルバッテリーとしても使えるので、それと繋げると楽だ。RN800のバッテリー容量は4000mAhなので、IGS630を満充電したとしてもRN800には2000mAhが残る計算になる。ブルベの場合、ライトが一晩持たないのは困るので、ライトから給電するよりはモバイルバッテリーから給電した方が良いだろう。最終的にライトのバッテリーが切れてもライトをモバイルバッテリーから給電すればいいわけだが、USBで電気をリレーするのは65%の掛け算になって無駄なので、ライトを使い切りそうな場合はライトから電気を抜くのは止めたほうが良い。


各所のレビューを見る限り、IGS630にはそこそこ粗もあるらしい。勾配の表示が遅れて出てくるというのは私も強く感じているところだ。10秒くらい前の勾配が画面に表示されるので、ギア選択やトルク管理などの現在の行動の参考に全くならない。実用上は現在もしくは1秒後の勾配を示してくれると嬉しいわけだが、それをやるにはコースを先読みしてGSIの標高APIを叩くようなことをしなきゃいけないので、サイコン単体では難しいだろう。よって、勾配データは過去の情報と割り切って眺めることにしている。ナビがヘボいというのは、私は全く感じなかった。リルート機能がない以上、その精度は予め作ったGPXデータに依存するだけなので、ちゃんとデータを作っていさえすれば問題ない。左ボタンで地図の拡大もできるので、細い道も間違えない。ただし、周辺施設や川や鉄道などの地形地勢が表示されないので、周辺の情報を読取るのには全く役に立たない。オリエンテーリングの略地図を見ていると割り切るべきだ。私はこの簡略表示が結構好きだ。安定性に関しては、まだ短期の利用なので何とも言えない。今のところクラッシュしたことがないので問題は感じていない。クラッシュしても途中までのログが残る機能と、履歴の走行ログを選んで「ここから記録を続ける」ができると嬉しいのだが、無い物ねだりだ。
疲労管理
これで、速度、ケイデンス、心拍数、そしてパワーを観測しながら走ることができるようになった。ブルベにおいては、ケイデンスと心拍数とパワーを一定範囲内に収めつつ淡々と走るのが目標となる。ブルベは疲労を管理するゲームだが、疲労度を直接測るのは難しいので、代替指標を用いることになる。心拍数に関しては最大心拍数法に対する割合で5段階にゾーニングするMHR法を用い、パワーに関してはFTP(functional threshold power:最大1時間平均パワー)に対する割合で7段階にゾーニングするコーガン式を用いる。以後、MHRゾーニングの指標をZと数値で表し、FTPゾーニングをLと数値で表す。
私の場合、最大心拍数178bpmなので、その70%以下のZ2領域と言われる125bpm以下に心拍数を抑えるべきだ。FTPは220Wなので、その75%以下のL2領域と言われる165W以下にパワーを抑えるべきだ。運動負荷をZ2かつL2に抑えておくと、糖質代謝よりも脂質代謝が優勢になるので、乳酸の蓄積を防ぐとともに、血糖値の低下を穏やかにしつつ長距離走れるとされる。そしてケイデンスは最も効率が良い70rpm周辺にすべきだ。165W出すと平地で無風なら33km/hくらい出る計算になる。しかし、私の場合、その負荷だと心拍数が徐々に上がる心拍ドリフト現象が起きてZ2に収まらなくなるので、平地は150Wくらいでまったり走ることになる。150Wでも31km/hくらい出る計算になるのだが、信号や起伏を考えると平均速度は落ちて、20km/hから25km/hの間に落ち着くことになる。速度は気にせず、ケイデンスと心拍数とパワーだけを管理するのが、結果的に平均速度を最善に導く。
平均速度を高めにして走って貯金を作ってから長めに休憩を取るのか、平均速度を遅めにして休憩を短く済ませるのか、という選択肢がある。心拍数とパワーに余裕がある若い衆は前者でも行けるだろうが、そうでない貧脚中年は後者を選択せざるを得ない。経験上、疲労度を一定以下に抑えれば休憩時間をほぼゼロにでき、数時間連続で走っていても問題なくなる。食事も車上で済ませて淡々と走り続ける方が、グロス速度の観点で有利だ。ウサギとカメのカメ作戦である。その遂行にあたって最大の課題となるのは、元気よく自分を抜いていくウサギ達に惑わされずに、機械と運動生理学のみを信じてカメに徹することができるかだろう。
Z3やL3に入って乳酸の濃度が上がると脂質代謝が阻害され、脂質代謝が阻害されると糖質代謝で乳酸が生成されるというのが、乳酸濃度を一定以上に上げると運動しながらではなかなか下がらなくなる機序だ。なので、フィードバックループに入らないように常に運動負荷を抑えるのが大事だ。とはいえ乳酸もまた代謝で分解されるので、一時的に乳酸を生成してしまったとしても、なる早で運動負荷を下げて濃度を抑えれば被害を最小化できる。捨鉢にならずに、這いつくばり続けるのが大事だ。マクロ視点では、登坂区間でL3に入って乳酸が多少溜まっても、平坦区間でL2の中間以下にしてアクティブリカバリーすれば良い。平坦や下りで30km/h以上出すと空気抵抗の非線形な上昇でエネルギー効率が下がるので、たとえ心拍数やパワーのゾーンに余裕があったとしても、必要以上に飛ばさずにリカバリーに当てるべきだ。
パワーに関しては、3秒平均パワーを見るのが良い。クランク1周毎のパワーを見ると、変動が大きすぎるからだ。また、私のパワーメータが左のみの計測なのも変動を大きくしている。左右のバランスは常に振れているからだ。その点で明らかに両足パワーメータの方が優れている。とはいえ、長期的に上限値を管理するだけなら、同一指標ならば良いので、左足の3秒パワーを見れば十分だ。心拍数とパワーはゾーンで色分け表示できるので、予めゾーンを入力しておけば、いちいち上限値を覚えておく必要はない。サイコン側のアラート機能は敢えて使わない。上限値を超えると音が鳴るのは最初は便利なようにも思えるが、慣れてくると、上限値を超える時は越えなきゃならない理由がある時に限定されてくるので、うっかり越えちゃったのと同じ扱いにされると苛つく。ただし、心拍計のバイブ警告機能をZ3上限の142bpmにして運用する。心拍数がZ4に入るのは数秒でもコストが高いので、早期発見したい。サイコンの場合は気づくのが遅れる可能性があるが、バイブならすぐに気づく。
ところで、心拍数とパワーの両方が管理指標になっているのって、二重管理じゃないのか。実際のところ、私も含めて中年は最大心拍数が低くなるので、日々運動してFTPを維持している場合には、心拍数の上限値が先に来ることが多い。ならば、心拍数だけを管理していれば良いような気もしてくる。しかし、心拍数は運動負荷が高まってからそれに応じて高まる仕組みなので、越える時には大幅に越えてしまうし、それに気づいてからパワーを抑えても適正値になるのに時間がかかる。例えば、平地巡航時にふと表れた坂で踏みすぎてしまうと、心拍数は上がらないのにパワーだけ250Wとかになってしまう。一方で、パワーメータの表示の遅延は数秒なので、ほぼ即時的な運動負荷が分かる。パワーに上限を設けておくことで、筋肉の短期的な高負荷を防ぐとともに、心拍数が閾値を大幅に超える事態の発生率を低められる。また、筋肉毎の負荷(発揮する張力と時間)によって代謝の切り替えが行われるが、各筋肉の負荷を測定することは簡単ではないので、動員する全ての筋肉の結果としてのパワーに上限を設けるのは簡便法として合理的だ。ならばパワーだけ見ればいいじゃないかという話にもなるが、それも駄目だ。心拍数が上がるとアドレナリンが出て、多くの骨格筋が本気を出して糖代謝を始めてしまうからだ。糖代謝が始まると数10分は脂質代謝に戻らないので、骨格筋にも心臓にも本気を出させないようにするのが重要だ。よって、パワーの閾値も心拍数の閾値も越えないように負荷を保守的に調整する。
心拍数とパワーの両方を低く維持して実際の道を走るのは、実際にやってみるとものすごく難しいので、練習が必要だ。坂などで短期的にパワーを出さねばならない場合、トルクを上げてしまうと比例して筋肉の張力も上がってすぐに代謝が切り替わってしまうので、同一トルクのままギアを落としてケイデンスを上げて対処することが望ましい。ならばケイデンスを高めにして走れば良いことになるが、そうすると心拍数が上がってしまう。Z2上限が低い中年にとっては、心拍数の調整は本当に難しい。日常的に心拍計を付けてみると分かるが、寒いだけでZ2を超えるし、料理で火を使うとZ3も越えてしまう。ゆえに、平地を淡々と進める場面ではパワー150Wを目標値にしつつ、「加速はギアを下げてから」を心がける。登坂はパワー165Wを目標値にしつつ、「踏みすぎるくらいなら遅くてOK」を心がける。頑張らないことで速くなるという事実は、Comfort is Speedというモットーの妥当性を実証するものだが、頑張らないで進むことには高度な機材と忍耐力が必要なのだ。
ところで、脂質代謝の上限がL2上限であり、L3以上では糖質代謝が行われ、糖質代謝によって乳酸が生成されるならば、LT(乳酸閾値)がL3上限とされるというのはどういうことなのか。L3では何が起こっているのか。一般的に言われるLTは乳酸が蓄積するLT2(第二乳酸閾値)のことであり、乳酸が生成されはじめるLT1(第一乳酸閾値)との用語の混用がある。LT1はFatMax(脂質代謝上限)とも重なる。LT2はMLSS(最大乳酸定常状態)に達する負荷でもある。つまるところ、L3は糖質代謝で乳酸を生成しつつも蓄積はされないという負荷領域ということになる。超長距離を走るなら糖質代謝では無理が出る。糖質を補給し続けても消費量が吸収量を上回ってハンガーノックに陥るからだ。脂肪代謝ならば体脂肪だけで数万kcalという実質無尽蔵の貯蔵庫を使うことになるので、脳が疲労して眠くなるまでは走り続けることができる。よって、やはりブルベ本番では脂質代謝優勢のL2で走る方策を考えるべきだろう。L2に徹しているつもりでも登坂区間では一時的にL3になってしまうのは仕方がない。10%を超える区間では、L2の出力では止まってしまう。峠を登りきるまではL3上限までは許容する。脂質代謝が途絶えても、短時間であれば補給で間に合うので問題ない。その乗り方を会得して400kmに挑めるようになると、今度は眠気=脳疲労との戦いになるのだろうが、それに関しては未知の領域なので現状では何も言えない。
補給
200kmを、空走区間含めた平均パワー150Wで、L2領域徹底で、ネット走行時間9時間で走り切ると仮定する。ネット平均速度22.2kmで9時間走ると200km走れるし、平均150Wならネット平均速度22.2kmに到達するはずで、これは現実的な値だ。その場合の補給戦略はどうなるか。まず、総カロリーだが、150Wで9時間走ると、150*9*3600=4860kJの仕事をすることになる。1calは4.184Jなので、4860 / 4.184 = 1161kcalとなる。自転車のエネルギー変換効率を24%と仮定すると、運動による消費カロリーは4839kcalとなる。1/4.184が0.24と非常に近いので、仕事量と消費カロリーがほぼ同じになるという簡便法を使っても良い。実際の効率は人によっても体調によっても機材によっても違うので、あまり厳密に計算しても意味がない。随意運動とは別に、生きているだけでエネルギーを使う基礎代謝があるので、その分を計上する必要がある。40代後半の私だが、筋肉多めなので、1日あたり1600kcalとしよう。グロスで12時間かかったとすると1600/24*12=800kcalだ。つまり、4860+800=5660kcalが走行中の総消費カロリーになる。
一般的なサイクリストにとって、L2領域では脂質と糖質を半々程度で消費するが、多少乗り込んで来ると脂質利用の割合が上昇して脂質6:糖質4の比率くらいになる。基礎代謝では元々安静時には脂質6:糖質4の比率くらいだが、その割合は運動負荷に連動して脂質優位と糖質優位が切り替わる。脂質は体脂肪が実質的に無尽蔵にあるので補給する必要はない。よって、5660kcalの40%の2264kcalを糖質(グリコーゲン)として賄う必要がある。前日に糖質を多めに取るカーボローディングをしていたとして、2000kcal分くらいはスタート時の筋グリコーゲンや肝グリコーゲンなどとして蓄えられると仮定し、ゴール時に500kcalを残しておくと仮定すると、2264-2000+500 = 764kcalとなる。カーボローディングしておくと、200kmであれば、走行中の摂取カロリーは意外に少なくて済むということになる。
764kcalを走行中にどう補給するか。走行時間ではなく経過時間で考えるので、1時間あたり64kcalを取ると言い換えてもいい。L2領域に徹底して走れるのであれば、糖質補給のほとんどは飲み物で賄える。羊羹やゼリーなどを食べて血糖値を上げなければならないというのは、L3以上で走るロードレースの考え方だ。L2で走るなら、脂質代謝を阻害しないために、血糖値を上げすぎてはいけない。血糖値が急激に上がるとインシュリンが大量分泌されて、脂肪代謝が阻害されるとともに、その後に血糖値が下がってしまう。血糖値は下げすぎてもいけない。ゆえに、吸収がゆっくりとした糖分を飲み物に混ぜて摂取し続けるのが最適解となる。例えば、700mlの水に30gのイソマルツロース(パラチノース)と15gのEAAと1gの塩を混ぜた飲み物を作っておく(追記:後にEAAは10gに減らして、クエン酸1gを追加するようにレシピ変更した)。また、そのような混合粉末をジップロックで小分けにして持参して道中で水を買って生成し続ける。3時間で700mlボトルを1本消費するなら、4回分を持参すればいい。1本あたりのエネルギーはイソマルツロースの120kcalとEAAの60kcalの合計180kcalくらいあるので、720kcalがそれだけで摂取できてしまう。EAAにフルーツ系の味を選んでおけば、それに甘味と塩味が加わるとだいたいポカリスエットみたいな味になる。夏場に水分が足りない場合は、薄めて使う。塩分補給が足りない場合は、塩飴や塩タブで補う。
残りは44kcalしかない。これは、何を食っても満たせる。朝食を食べた後に出走するだけで、500kcalくらいは賄われるので、200kmなら走行中は絶食でも問題ない計算になる。実際には全行程を脂質代謝の負荷で走れるわけではないので、ある程度の食事はした方が良いだろうが、積極的に高カロリーのものを選ぶ必要はなく、コンビニ休憩の際のお楽しみくらいの位置づけで良い。血糖値を急激に上げなければ何を食べてもいいし、量が少なければ、消化が良かろうが悪かろうがあんまり関係ない。300km以上の場合、時間や距離を決めて、たとえ空腹感を感じていなくても、定期的におにぎりを摂取する戦略になる。また、それでも低血糖になった場合やDNFでの撤退時に備えて、羊羹やカロリーメイトなどの非常食をサドルバッグに忍ばせておくべきだ。非常食が取り出しやすい場所にあると食べたくなってしまうので、サドルバッグの奥底に眠らせておく。
距離が伸びるほどスタート時のカロリー貯金の貢献割合が減るので、300km以上では道中での補給食の割合が増える。極論として、貯金が全く利かない超超長距離を想定して、時間あたりの最大摂取カロリーから最大パワーを逆算してみよう。カロリーを飲み物から摂ろうがゼリーから摂ろうが固形食から摂ろうが、1時間あたりで吸収できる糖分は最大300kcalくらいだ。脂質代謝モードなら300/0.4=750kcalが使えることになる。そこから基礎代謝分67kcalを引くと、683kcalが残り、それに相当する1時間あたりの最大仕事量は683kJくらいになる。3600秒で割れば仕事率は189Wだ。カロリー貯金が利かない距離になると、消化器系がボトルネックになる。しかし、脂質代謝を保つなら、最大パワーの制限値は189Wに維持できる。糖質代謝にすると300-67=233kcalしか使えないので、最大パワーの制限は64.7Wになってしまう。もし1時間で300kcalを摂るなら、ドリンクからは180/3=60kcalしか摂れないので、残り240kcalは食事で摂ることになる。実際に毎時間2個おにぎりを食えと言われたらかなりの苦行になるので、ゼリー等の消化に良いものを選び、イソマルツロース以外の糖分を摂ることでスループットを稼ぐことだろう。糖質代謝の割合が高いトッププロがガットトレーニングとして吸収量を上げる努力をするのも頷ける話だ。しかし、素人がプロの真似をするとおそらく身体を壊すので、脂質代謝の割合を上げる努力をまずすべきだろう。また、一般人向けであるブルベでは、300kmや400kmならまだカロリー貯金がかなり利くし、600kmなら仮眠前後に再充填できるのが救いだ。
シートポスト
30Cのタイヤと剛性抑えめのフレームとホイールのおかげで、以前よりも手や尻の痛みは抑えられている。しかし、100kmを超えると尻が痛くなってくる可能性はなくもないので、その対策に万全を期しておきたい。RE8の公式ページには、RPシリーズと比べてしなりが3倍以上のシートポストを搭載しているという売り文句があるのだが、残念ながらそれが該当するのはUltegraモデル以上だ。シートチューブを短くしてシートポストを長くすることでしなりやすくしているのだが、私の105 Di2モデルについているZoomのOEMのアルミシートポストは長くしても全くしならないので、宝の持ち腐れになっている。実際のところ、悪路を走ってみて、シートポストが尻痛の対策として機能しているとは全く感じなかった。モデル毎の差別化をしたいのは分かるが、このシートポストは製品の真価を損じていると言わざるを得ない。
そこで、カーボンシートポストを導入することにした。要件としては、外径27.2mmで、長さ30mm以上で、軽くて衝撃吸収性が良いものということになる。車体にRoubaixやDomaneを検討していた私としては、Roval(Specialized)のTerraやBontrager(Trek)のRSLあたりの高級部品を使ってみようと思って中古品を探したが、手頃なのがなかったので諦めた。次に、TNIのLW168というシートポストか、その廉価版のTNI Blackカーボンピラーというのを買おうとしたのだが、各所のレビューを見ると硬いという評判だったので辞めた。
結局、もっと安いELITA ONE 62 PROというのをアリエクで調達した。カタログ重量140gという軽さで、3513円という安さが良い。ヤグラの造りが心配だが、YouTubeに上げられていたレビューをいくつか見る限り、すぐにぶっ壊れそうな造りではなかったので、購入してみた。実物を見てダメそうなら返品すればいい。
届いた製品を実際に測ってみたところ、ヤグラとネジ込み込みで123.7gであった。元のシートポストが301.1gなので、177.4g軽くなったことになる。パイプの厚さも均等で、バリもないので、普通に良質の製品だと思われる。しかし、ここで問題が起きた。オフセット(セットバック)が0mmのものと25mmのものがあるのだが、サドルを前に出しやすいように0mmにしたら、前すぎた。サドルを後退させてヤグラをレールの前端付近にすればなんとかなるが、そうするとレールとヤグラの寿命が怪しくなる。

ELITA ONEの商品紹介ページでは、アルミより剛性が高く、しかもアルミより衝撃吸収性が高いと謳っている。これは自己矛盾だ。衝撃を吸収するには変形することが必要で、剛性が高いというのは変形が少ないということを意味するので、剛性と衝撃吸収性は同時には高められないはずだ。で、実際の製品は、元のアルミシートポストと遜色ないくらい剛性が高く、全体重を掛けても撓まない。実際走ってみると、アルミに比べると高周波振動の角が取れた感じはするが、低周波振動は全く減衰していない。軽いのは素晴らしいのだが、形状が想定と違っていて、衝撃吸収性が思ったほどでもなかったので、これを使い続けるモチベーションがない。よって、返品することにした。初回注文なら返品して全額返金されるのがアリエクの良いところだ。
ELITA ONEの製品の品質自体には問題がなさそうなので、性懲りもなく同社のMASTER SEATPOSTというのを購入した。オフセット25mm。カタログ重量150gで、実測値は144.3gだっで、31cmになるように切断したところ、134.9gになった。つまり元のシートポストからの軽量化は166.2gということになる。値段は5522円。TerraやRSLのようにヤグラの直下6cmほどが扁平になっていて変形に方向性をつけるとともに、Ergon CF ALLROADのように扁平部が中空になっていて剛性を低めるようになっている。このMASTER SEATPOSTは62 PROのように剛性の高さを謳っていないので、もう少し曲がることが期待される。

実際につけるとこんな感じで、安物なのに結構格好いい。オフセットも丁度よい。ロゴは無い方が良いので後で紙やすりで削った。ヤグラがボルト一本で締め付ける方式なのでずれないか心配だったが、カーボングリス塗って規定トルクの12Nmで締めると全くずれない。サドルの前後位置はBB垂線からの後退幅4cmくらいで、そうするとヤグラがレールの真ん中あたりに来る。これはUCIの規定である後退5cm以上というのに違反しているが、レースに出ないのでどうでもいい。というか、小柄な人は5cmも後退させたら後ろ乗りになりすぎて膝を痛めてしまうだろう。また、登坂では車体全体が後ろ方向に傾くので、それを相殺すべく前乗り気味になるのだが、その際にサドルが後ろ過ぎるとノーズの先端に座ることになって会陰が痛くなってしまう。登坂は速度が遅いので距離に対する滞在時間が長くなるわけだから、登坂区間での快適性とのバランスを考えることも大事だ。

肝心の衝撃吸収性だが、体感できる程度の向上があった。体重をかけると目視で変形が確認できる程度に剛性が低下している。目視なので雑な値だが、全体重をかけると1mmくらい撓む。走行中に亀裂や段差などを踏んだ時は3G以上の衝撃がかかるので、3mm以上撓むことになる。一方で、通常走行時にはほとんどの撓みを感じない。走行中のサドル荷重はペダリングに伴って変化して60%と20%の間を行き来するとして、もしシートポスト以外が完全剛体なのであれば、シートポストの撓みは0.6mmから0.2mmの間で0.4mmの変形を繰り返すことになる。実際にはサドルのクッションやパンツのクッションや尻の肉などのより柔らかいものがより大きく撓むので、シートポストの撓みが直列バネに加わったところで、その変化には気づかない。仮にシートポストに応力が集中して0.4mm変形したとしても、変形量が微細なので、変形による弾性エネルギーはペダリングのクランク角の位相差もほとんどなく回収され、力が逃げるという感覚もヒステリシスロスも発生させない。それでいて、段差や亀裂を踏んだ時の尻への衝撃は、体感できる程度には改善している。例えば、亀裂に草が生えて3cmくらい盛り上がっている部分を踏んだ時、アルミシートポストだと尻の肉にピリッとした痛みが走っていたが、カーボンシートポストに変えてからは、シートポストの弾力でボヨンと尻が跳ね上げられる感覚に変わった。もうちょい柔らかい方が良いような気もするが、実際にそれに乗ってみると不満に思うかもしれないので、現状で良しとしよう。
尻に関してはこれで満足するとして、手への衝撃はどう考えるべきか。手に関してはグローブを着用すれば痛みや痺れの問題はほぼなくなるし、RE8にしてから素手でも手が痛くなるほどの衝撃を感じることは少なくなっている。ロングライドでの手の痺れに関しては、衝撃が原因ではなく、長時間同じ場所を圧迫し続けることなので、適宜ハンドルの持ち方を変えたり、たまに上半身を起こしてまったりと走れば良い、ということにする。
自転車を壁などの構造物に立てかける際に、フレームと壁が接すると傷つくので、ハンドルとサドルによる二点支持にすることが多い。そうすると、接点がこすれる。ハンドルに関してはバーテープが摩耗するが、バーテープはいずれ交換する。サドルに関しては、カバーが摩耗するが、それを交換することは不可能だ。よって、私はサドルの左右の出っ張りの端の部分にだけ爪用のトップコートを塗って保護している。LiteFly2 のようなウレタンっぽいカバーは特に摩耗しやすいので、トップコートで表面保護するのは有効だ。
ところで、クランク角3時の位置でのペダル軸の垂線上に膝関節の中心が来るべきという経験則であるKOPS(Knee Over Pedal Spindle)に照らすと、私の場合、上述のサドル位置だと膝が1cmほど前に出すぎていることになる。膝が前に出すぎると膝を痛めやすいという説もあるが、私はそれには同意しない。なぜなら、ペダルはBBを中心とした円運動をするので、股関節がどこにあろうと、ペダルを公転させるための脚の筋肉の使い方はBBと股関節の距離と各関節の曲がり具合で決まるからだ。BBと股関節の軸を基準として、脚にかかる重力の方向はサドル位置によって影響を受けるが、角度が数度変わったところで大した違いはない。サドル位置の変化によるより重要は影響は、股関節の角度だ。サドルの前後位置を変えて高さを適切に調整すると、BBを中心にして下半身の幾何学的構造を回転することになる。ハンドル位置を変えずにサドルを前寄りかつ高くすると股関節の屈曲は浅くなり、後ろ寄りかつ低くすると股関節の屈曲は深くなる。サドルを前にして股関節の屈曲が浅くなる方が、呼吸もしやすくなるし、股関節の屈曲や伸長に関わる筋肉も使いやすくなる。股関節の筋肉が存分に力を発揮すれば、その分だけ膝関節の負荷を減らせる。結果として、KOPSよりも前乗り気味にした方が膝が楽になる。敢えて後ろ乗りをやってみると、上死点付近で膝関節を伸ばしてペダルを前に押し出す動作に頑張らなきゃならない感覚があり、それは私のガラスの膝では耐えられない。ただし、前乗りにすればするほど良いかというと、そういうわけじゃない。ハンドルの位置が同じであれば、上半身が窮屈になってくる。ハンドル位置を前や下に移してさらに前傾姿勢を強くすると、上半身を支える体幹が耐えられなくなり、またハンドル操作も覚束なくなる。全てはトレードオフだという当然の帰結になる。ただし、UCIの5cmルールやKOPSという経験則に固執する必要が無いということは、幾何学的に考えれば分かることだ。
サドル
しばらくはブロンプトンで使っていたSelle SMPのVT30Cを使っていたが、それはブロンプトンに返した。ブロンプトンはBBが前にオフセットされている関係でサドルも前に限界まで出したいが、それにはレールが長いSelle SMP製品が都合が良い。私の坐骨幅は10cmくらいと非常に狭いので、VT30Cは幅155mmというのは広すぎる。ブロンプトンでは乗車姿勢が直立気味になるので広めでも丁度よい感じだったが、前傾姿勢が強いロードバイクだとサドルの奥に座りにくい感じがする。よって、RE8用に幅が145mm程度の軽量サドルを探すことにした。
S-Worksのパワーサドルの評判が良いが、模倣製品の多くは20%とかの値段でほぼ同じ使用感を実現できているという。その代表格がTNIのLiteFlyだ。その改良版のLiteFly 2というのが出ていたので、それを買うことにした。中古で探したが良いのが無かったので、新品だが3割引の8457円になっているのを見つけてポチった。

その後、ワールドサイクルからメールが来た。
この度ご注文いただきました下記商品について、メーカーによる予告の無い 大幅な仕様変更がございましたのでお知らせいたします。 【商品名】 TNI LiteFly2 ブラック カーボン サドル 【変更内容】 サイズ:143x240mm、155x240mm 重量:幅 143mm 152g、幅 155mm 154g ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ サイズ : 142x235mm、150x235mm 重量:幅 142mm 125g、幅 150mm 120g 見た目のデザインや形状はほぼ変わりませんが軽量になった分、 全体の厚みとクッションが薄くなりました。 恐れ入りますがこの仕様の商品でのご提供とさせていただいて よろしいでしょうか。
これはいわゆるサイレント改訂とかランニングチェンジとか言われるメーカー側の横暴だ。製造行程や原料調達の都合で仕様を変えざるを得ない事情はあるのだろうが、その場合は商品名を変えろよと言いたい。同じ商品名で仕様をしれっと変えてしまうと、販売店やエンドユーザが大混乱に陥る。そんな中でも、ワールドサイクルは仕様変更を注文者に通達した上で購買意思を確認するという手順を踏んでいて、誠実な会社だと思った。
この件は気になったので深堀りしてみた。日本でのTNI製品の販売元であるTRI SPORTSの商品説明を見てみると、以下のように書いてある。
ショートノーズ形状のカーボンサドル。 穴あきタイプ。 2種類のサドル幅から自分にあったサイズをお選びいただけます。 LiteFly Ⅱ カーボンサドルと比べ、サドル長が短くなり、パッドが厚くなりました。 また、ノーズ部は下側に下がっており、前傾姿勢がとり易くなっています。 素材:カーボン+パッド レール:フルカーボン 7×8.8mm サイズ : 142x235mm、150x235mm 重量:幅 142mm 125g、幅 150mm 120g
つまり、商品説明ページはワールドサイクルが把握している新仕様にすでに置き換えられている。そして、この商品説明はおかしい。LiteFly IIの商品説明で「LiteFly Ⅱ カーボンサドルと比べ、サドル長が短くなり、パッドが厚くなりました」というのは意味がわからん。さらに、「重量:幅 142mm 125g、幅 150mm 120g」ってのが本当なら、幅が狭い方が軽いことになる。そんな事があり得るのだろうか。製品誤差が大きくて、無作為に選んだ個体がそうだったとかいう話なのだろうか。謎だ。
さらに、Googleで「TNI LiteFly 2」で検索すると、Amazonの商品ページを参照する以下の結果が得られる。ページタイトルが「TNI Lite Fly II (LiteFly2) Saddle TNI Light Fly 2 Saddle (143)」であることに注目されたい。

それをクリックすると、以下のページに飛ばされる。商品名が「TNI LiteFly カーボン サドル 143mm ブラック」であることに注目されたい。つまり、「LiteFly 2」のURLをしれっと「LiteFlyの新型」の商品ページにすり替えているのだ。さらに、商品説明には「 LiteFly Ⅱ カーボンサドルと比べ、サドル長が短くなり、パッドが厚くなりました」とある。「TNI LiteFly」無印が商品名なのにLiteFly 2の商品説明と同じ文言が書いてある。

さらに、レビューの一つに、興味深いものがあった。「ライトフライ2より薄く薄く作られてますの説明が大嘘。 写真見てください上がライトフライ2 したがライトフライの新型です。最初間違えて届いたのかと思ったくらいです。即返品しました」とある。

以上の情報を総合すると、TNI社は、パッドが厚いLiteFly 2という商品の存在を無かったことにして、「LiteFlyの新型」として幅142mmと幅150mmを選択できるようにしたいのではないかと推測できる。それと同時に、形状をLiteFly無印に寄せた上でパッドの厚さを薄くして軽量化を測りたいということではないか。そのような製品を作るのは良いのだが、なぜ商品名を変えたり戻したりして市場を混乱させるのか。SEOやレビュー引き継ぎやサプライチェーンのコスト回避などの理由があるのは分かるし、商品説明に「デザインは予告なく変更になる可能性がございます」と書いてはあるが、コンセプトが変わるほどの仕様変更をするのは不誠実としか言いようがない。
私としては軽量ながらもクッション性が高い製品が欲しいので、ワールドサイクルにはキャンセルさせてもらった。そのうえで、旧仕様のLiteFly 2をヤフオクで調達した。写真を見る限り、Amazonのレビューにあった「LiteFlyの新型」ではなく、旧仕様のLiteFly 2と判断でき、値段は7736円+送料と手頃であった。TNIが不誠実であることと、その製品が要求仕様に合っているかどうかは関係ない。旧仕様のLiteFly 2はいくつかレビュー動画を見る限りまともそうだ。

旧仕様のLiteFly 2でも幅143mmと幅155mmからモデルを選べるようになっている。当然私は前者を選んだ。長さが250mmから240mmに縮んで、140g(実測139.3g)に軽量化されつつ、クッションが分厚くなっている。私は着座位置をそんなに変えないので、UCI規定とは関係なく、停車時に尻に引っかかりにくいショートノーズを好んでいる。クッションが分厚さは予想以上で、8mmくらいのストロークがある。クッションが底付きしてもカーボンシェルとレールも若干しなるので、段差等で突き上げられたりしても、尻肉への衝撃は空間的および時間的に分散されるはずだ。

実際に乗ってみても、仕様から想定された通りの座り心地だ。幅が狭いので奥まで座れるし、それでも足が動かしやすい。太腿をより垂直に近く動かせるので、若干サドルを上げた方がちょうど良くなった。さらに、ノーズ近くまでクッションがアンコが詰まっているので、前乗りやエアロポジションをしても会陰部が痛くなりにくい。峠などの長い登坂区間でサドル荷重が高い状態が続く場合にも血流が滞る感じがしない。衝撃をうまくいなす点ではVT30Cも良い仕事をしてくれるのだが、圧力の分散という点では私にはLiteFly 2の方が合っている。これは買って良かった。今となっては旧仕様のLiteFly 2は貴重だ。「LiteFlyの新型」は120gという驚異的な軽さだが、クッションが薄いのでは意味がない。
ヤフオクで買ったサドルにはTNI Blackカーボンピラーというカーボンシートポストも付いてきたので、既に付けているELITA ONE MASTER SEATPOSTと乗り比べてみた。結果としては、TNIの方が硬かった。しかもTNIの方が重い。よって、ELITA ONEの方を残して、TNIの方はメルカリで出品した。4500円で売れた。手数料と送料引いて3300円の利益となり、サドルの費用は実質5000円くらいで済んだことになる。これは心の中で良いスコアになった。

「ロードバイクはペダル荷重の割合が大きくてサドル荷重の割合は小さいので、サドルのクッションは少なめでOK」という言説があり、実際に全くクッションのないカチカチのカーボンサドルを使っている猛者もいる。しかし、現実的にはずっと腰が浮くような強いペダリングができる人は少数だろうし、私はそれに含まれない。そして、ブルベやロングライドではレースのような高出力では走らないし、連続走行時間が20時間とかになるので、要求仕様が根本的に違う。走行中のサドル荷重はペダリングに伴って変化して60%と20%の間を行き来するという仮説を既に述べたが、アクティブレスト状態で軽くしかペダルを踏んでいない場合にはサドル荷重の割合はもっと高いだろう。ペダリングしながら休憩しているようなものなので、その休憩時間にカチカチのサドルに座るというのは賢い選択ではない。ならば、ゲルシートとかが入ったもっと分厚くて柔らかいサドルをなぜ選ばないのか。経験上、あまりに柔らかい座面だと、圧力集中が緩和される代わりに坐骨から離れた場所にも圧迫面積が広がって、本来荷重を支えるようにできていない軟部組織まで圧迫されることで別の痛みが生じる。また、太腿の動きを阻害することで出力が低下し、内股が擦れて痛くなる。よって、適度な硬さと適度な広さと適度な形が求められ、そして何が適度なのかは人によって違う。だからサドル沼とか呼ばれるのだ。私もずっとサドル沼の中にいるが、ブロンプトンにはVT30C、RE8には旧型LiteFly 2というのでとりあえず抜け出せたことにしよう。
ペダル
ペダルはMKSのUrban Platformにハーフクリップをつけて運用していたが、元来はブロンプトンで使っていたものだ。Ezy Superior機構で簡単に付け外しできるので、ブロンプトンの折り畳みに最適なものだ。ロードバイクでも十分に使える性能ものだが、ブロンプトンを再整備してそちらで使いたいので、RE8用に新しいフラットペダルを調達することにした。
Urban Platformで採用されているトリプルシールドベアリングの回転がめちゃくちゃ良いのを知っている身としては、それ以外を使う気にならない。Dura-AceペダルよりもUrban Platformの方が断然回転が良い。シールドベアリングなのにシールの抵抗がここまで低いというのは驚異的だ。材料と研究開発にもっと金を掛けているはずのDura-Aceでなぜそうしないかというと、重くなるからだろう。大パワーをかけて走っている状態ではペダルの回転抵抗の割合は些末になるので、重量を増すほどの価値はないと判断しているのだろう。同じ理屈で、大パワーをかけて走らない私には、多少重くなっても回転抵抗が小さいペダルが望ましいことになる。実際、低速で脱力して走っている時には、回転が滑らかなペダルと渋いペダルには体感できる差がある。シールドベアリングは水やゴミが侵入しないの美点があり、実際Urban Platformの回転の滑らかさは数年乗ったいまでも全く変わっていない。
Urban Platformを再び買うことも考えたが、表面がツルツルで滑るので自分で滑り止めの改造をする必要があり、それが結構手間がかかる。よって、今回は、踏み面にもともとギザギザが付いているものを選ぶことにした。また、ハーフクリップが付けられることも必須だ。そして、ペダルヒットの確率を下げるために幅は狭い方が良い。マウンテンバイクと違ってペダル上の足が横方向にずれる乗り方はしないので、ペダルが広いことの意味は皆無だ。着脱機能は無い方が軽いので良い。以上を満たすものは、MKS SYLVAN STREAM NEXTだ。中古で探しても良品が見つからなかったので、Amazonで普通に7700円で買った。さらに、鋼板のハーフクリップと、停車時に下に向いたペダルを蹴返しするパーツSPIN-2もAmazonで調達した。また、ハーフクリップの位置を前にずらすために、M5の25mmのキャップボルトと、ナットと、0.8mm厚のワッシャー68枚をホームセンター調達した。

ハーフクリップの位置調整は、つま先を完全に入れた状態で母指球と小指球の間の垂線上にペダル軸が来るようにした。ワッシャーが68枚なのは、4つのボルトに17枚ずつを挟んで、0.8*17=13.6mmだけずらすためだ。ロングライドではペダル軸がもっと踵寄りになっている方が足首への負担が少ないとも言われるが、あまり強く踏み込まないのが前提であれば、殊更に足首の負担を軽減する必要はない。ある程度の踏力を足首で調整できる方が走りやすいと私は感じる。また、つま先を前に出しすぎると、トウオーバーラップの確率が上がる。今の設定でもギリギリつま先が前輪に掠るが、前輪の動きを邪魔するほどではないので許容する。

完成したペダルセットは、予想通り乗りやすい。SYLVAN STREAMはUrban Platformよりも滑り止めギザギザが高く、かつ踏み面がわずかに凹面になっているので、足の固定力が増している。靴のつま先をハーフクリップの奥まで突っ込むと、鋼板の弾力で靴底が滑り止めに押し付けられるので、下方向に踏力を発揮していなくてもそれなりの摩擦力が発生する。それによって、下死点付近での後ろ方向への引足(巻き足)がやりやすくなった。下死点付近で大きなトルクを入力しようとすれば疲れてしまうが、フラットペダルの摩擦力が許す範囲でやる分には顕著な疲労は起こさない。トルク効率を100%にする遊びもやりやすくなった。下死点付近以外のクランク角での感触は以前と変わらず、軽快そのものだ。

ハーフクリップと蹴返しは黒に塗装した。ペダルが真っ黒なのに合わせるという美観の理由もあるが、より切実なのは、無塗装だとハーフクリップからの反射光がキラキラと眩しいからだ。エアロポジションを取っていると反射光が結構なストレスになる。塗装も重ね吹きしない適当なものだが、どうせ泥まみれになるし、走行しているうちに接触面の塗装は剥げてくるので、丁寧に仕上げても意味ががない。むしろ剥げてきたくらいが渋くて格好良くなる。

ハーフクリップはもっと流行るべきだと心から思う。試しにハーフクリップを外してペダルを漕いでみると、引足区間でペダルと足が見事に離れてしまう。上り坂では、クリップなしで踏み足だけで漕ぐと、思ったよりも疲れる。自分がハーフクリップに完全に適応しているのを感じる。一方で、その自分がビンディングペダルとビンディングシューズで漕いでみても、全く違和感がない。ロングライド用のゼロトルクの引足を実践するにあたっては、ハーフクリップで十分だと改めて思う。それでいて、ビンディングシューズと違ってとにかく気が楽だ。激坂でケイデンスが落ちてくると、ビンディングシューズの場合、もし止まったら立ち転けしてしまうかもしれないと焦って一生懸命漕いでしまうが、ハーフクリップだったらその心配がないので、止まっても構わないと割り切って速度を落とせる。どんなに急勾配でも自動車が通れる程度ならば押し歩きするより自転車に乗っている方が効率的なので、どんなに遅くても漕いで登れるという利点は大きい。あと、赤信号とかで停止した後の発進で、踏み足のクランク角を2時の位置に持っていく所作が楽だ。ハーフクリップは漕ぎ出しの際に足をクリップに入れるのに手間取るというのが唯一の欠点だが、漕ぎ出し前のクランク角の調整が楽になった分、総合的な認知負荷はクリップなしのフラペと同じかむしろ減っているのではないか。
ボトルケージ
購入時にボトルケージがついていなかったので、当然つけなければならない。壊れない程度に頑丈で軽ければなんでもいいので、アリエクで安かったカーボン製のものを入手した。2個で2486円、重さは1個16gだった。重いよりは軽い方がいい。標準的なボトルケージは50g前後、25g以下は軽量と呼ばれるなら、16gは超軽量と呼んでもいいだろう。耐久性は破壊試験をしないと分からないが、命を預ける部品ではないのでそんなに心配はしていない。直径75mmのボトルが入る仕様だが、R250のツールボトルに工具類や輪行袋を詰めまくってパンパンに膨らんだ状態でも何とか入る。トップチューブがスローピングしている分だけ、縦がギリギリになったが。

フレームストレージがない車種でも、整備系を全てツールケースに入れてボトルケージに装着できると便利だ。特に工具類は重いので、サドルバッグではなくボトルケージに入れた方が低重心になって良い。もうひとつのボトルケージには750mlとかの飲み物を入れれば、夏でも給水ポイント間で飲みきって困ることはそうそうない。
ライトとサイコンマウント
ブルベの日本の統括団体であるAudax Japanの規約から装備の項目を抜粋する。
第6条 装備 夜間走行のために、車両に確実に固定された前照灯と尾灯とを装備することが必要である。灯火は常に完全に機能することが必要である(予備灯火は強く推奨される)。少なくとも一つの尾灯は(点滅モードではなく)常時点灯モードでなければならない。上記の要求を満たせない走者は出走を許可されない。 灯火は夕方から明け方まで点灯しなければならない。また他の視界不良の条件下(雨天、霧等)でも同様である。走者は、グループで走ろうと単独であろうと上記の要求を満たさねばならない。いかなる走者も各自の灯火を使用しなければならない! すべての走者は反射ベスト、反射たすき、反射肩掛けベルト(Sam Browne belt)、もしくは前後の見えやすい位置に反射素材がついた同様のものを着用しなければならない。 本夜間走行規則のいかなる違反をも、走者は即座に失格となる。 ベル装着とヘルメット着用を義務付ける。400km以上では前照灯2つ、ヘルメットに尾灯(点滅可)を装着すること。
ライトに関しては、200kmなら1つ、400km以上では2つ必要ということになる。最初に出るのは200kmだからライト1つでも行けるし、おそらく主に日中だけ走って夜間走行の時間は短いので、電池切れの心配もない。とはいえ、400kmの準備も兼ねて2個揃えて置こう。今まで使っているOLightのRN800というライトはそのまま使うとして、追加でアリエクで1032円だったTOSUOD V-1500 PROというのを入手した。

このライトは格安なのにカタログ仕様で1500ルーメン出ることになっていて、IPX6防水で、しかも重量が150gで、RN800の172gよりも軽い。カタログ値では、蓄電容量は4800mAhであり、1500ルーメンで3時間、600ルーメンで4.5時間、400ルーメンで9時間持つらしい。蓄電容量4000mAhであるRN800は800ルーメンで2時間、400ルーメンで4時間、200ルーメンで8時間というのから考えると、V-1500のカタログスペックは明らかにおかしい。このトリックは中華ライトにありがちで、昇圧回路を省いて製造コストを下げるとともに、光量を徐々に下げることで持続時間を稼いでいると考えられる。RN800はそのような詐欺的減光をしないのが素晴らしいライトなのだが、V-1500はそうではない。
LEDの技術革新が起こっていないので、両者のLEDの効率が同じだとみなそう。RN800を基準にして、100ルーメンを1時間維持するのに必要な電気は250mAhだということになる。それに基づくと、RN800は1600ルーメン時間の能力があり、V-1500は1920ルーメン時間の能力があることになる。よって、V-1500のhighモードで3時間持続するというのなら、その平均光束は640ルーメンくらいのはずだ。midモードで4.5時間持続するというのなら、その平均光束は427ルーメンくらいのはずだ。lowモードで9時間持続するというのなら、その平均光束は213ルーメンくらいのはずだ。つまり、V-1500は200ルーメンで9時間使えるライトだと思っておけば、がっかりすることはない。
RN800のlowモードで8時間、V-1500をlowモードで9時間持つので、合計17時間持つ。冬でも一晩の持続時間としては十分だろう。200ルーメンは下り坂で高速走行するには暗いが、高速走行する区間だけは出力を上げればよいので、問題ないだろう。もし足りなくなってもモバイルバッテリーで給電すればいい。片方を使いながらもう片方を充電すればよいが、RN800もV-1500も給電中の点灯ができる仕様にはなっている。実際にV-1500のlowモード(カタログ値400ルーメン、推定値213ルーメン)とRN800のlowモード(カタログ値と推定値とも200ルーメン)を点灯させて比較してみた。予想通り、点灯直後はV-1500の方が断然明るかったが、30分経過したら両者はだいたい同じ明るさになった。知らないで買っていたら憤慨するところだが、RN800と使用感がそんなに変わらない割には、値段が半額1/6以下なので、お買い得のライトだ。
中華系ライトはだいたいガーミンマウントに付けられるようになっている。ハンドルにガーミンマウントを巻き付けるのが手っ取り早いが、普段遣いでライトが出っ張っているのはちょっとださい。よって、ガチのサイクリストがよくやる、サイコンマウントの下にライトをぶら下げる方式を導入する。すなわち、サイコンとライトを合わせて250gくらいの物体を保持するマウントアームが必要となる。RIDERACEなるアルミ製のマウントアームを448円で購入した。激安部品だが、上部にガーミンマウントとブライトンマウントとキャットアイマウントを付け替えられ、下部にGoProマウントでライトやカメラ等をぶら下げられるという今風の機能を備えている。アルミ製で、ハンドルステムにハンドルと友締めする方式なので、頑丈さに関してはカーボン製や樹脂製のものより信頼できる。実際に付けてみると以下のような感じだ。上部にはサイコンの代わりにガーミンマウントのスマホホルダを取り付け、下部にはV-1500付属のガーミンマウントGoProマウントアダプタを介してライトを吊るしている。アームだけで50gくらいあるのだが、カメラとかも吊るす可能性があるので、樹脂製でなく金属製が良い。

サイコンマウントとは別に、ハンドルステムの上にもガーミンマウントをつけた。そこにはスマホをマウントする。GoProとかのカメラをマウントするのにも使えるだろう。


尾灯
尾灯は、常時点灯で一晩持つものが必要になる。点滅ではなく常時点灯で13時間とか持つ必要があるが、充電式でそんなに長時間持つものは少ないので、乾電池式のものを使う人が多いそうな。400km以上ならヘルメットにつける尾灯も必要で、それは点滅式でも良い。
乾電池式の尾灯なんてダイソーの110円のものでも良さそうではあるが、不安要素を抱えて走るのはよろしくないので、定評のあるCatEyeのSL-WA10 WEARABLE miniをアマゾンで2個買った。耐水で、点灯60時間、スロー点滅550時間、ラピッド点滅140時間ということで、十分な仕様だ。1個12gという軽さも良い。まあ、1個1123円の価値があるかというと微妙。300円くらいが適正かと。

ついでに、普段使い用の尾灯も買うことにした。乾電池だと面倒くさいので、充電式のものを探した。メルカリにCateye Rapid Mini TL-LD635が1500円で出ていたので落札。常時点灯3時間、ラピッド5時間、グループライド20時間、点滅30時間ということで、普段使いには十分な仕様だ。グループライド(パルス)モードが秀逸で、じわっと明滅するので、見る側の目に優しい。グループライドする時以外でも常にこれを使うべきと思う。重さは21.5g、で車体につけるなら軽い。マイクロUSB充電なのが残念ではあるが。

道路交通法では、夜間走行時とトンネル内や濃霧などの状況下では反射板か尾灯のどちらかを使用することが求められている。そして、尾灯は常時点灯していないと法的な尾灯とは認められない。よって、普段遣いでTL-LD635を使うとしても、夜間走行時には常時点灯する必要がある。しかし、3時間しか持たないのでは、それなりの頻度で走行中に切れてしまうだろう。ゆえに、備えとして反射板をつけておくことが望ましい。法的にというよりも自分の身を守るためだ。そこで、サドルのレールに吊り下げられる166円の反射シートをつけることにした。重さも3グラムしかない。

本番ではシートポストにはサドルバッグをつけるので、その際には尾灯はシートポストではなく、右側のシートステーにつける。尾灯は車体に固定することが求められるため、サドルバッグにつけられない。かといってシートチューブにつけると、タイヤが邪魔で後ろから見えづらくなる。ライトに付属のゴムだとシートステーが細すぎてずれてしまうので、TPUバンドを4本くらい束ねて締め付ける。シートステーが前後に扁平なので斜め横向きになってしまうが、それで良しとする。もし車検で固定が甘いとか角度がつきすぎとか言われたら、その場でシートポストの下端あたりに移動させればいいだろう。シートステーは左右選べるが、左側通行である我が国では、右側につけた方が目立つ。また尾灯を車体中心につけていると錯覚された場合に、追い越しの側方間隔を多めに取ってもらえることが期待できる。逆に、左側につけると危ない。

フォレストカーキの配色の車体に赤いライトや反射板がつくのは、ダサい。尾灯や反射板は100m先から照らされた時に視認できる赤色であることが定められているので、赤であり目立つことは必須で、ダサくなくす方法はない。ならば、昼間は外しておけばいい。ただし、忘れて出かけて夜になってしまうと危険かつ違法になるので、反射板をサドルのレールの内側に付けておくことにした。それなら絶対に忘れることはないし、空気抵抗にもならない。夜間走行の際にはそれを外側に出す。尾灯は夜間走行とロングライドの場合だけ装備する。
ベルも付けた。自転車のベルを走行時に有意義に鳴らしたことが今まで一度もなく、法律とブルベ規定がそれを求めるので、仕方ない。東京ベルのマイクロフレックスベル18g。というか、ブレーキ操作をおろそかにしてまでベルを鳴らすべき状況が全く想像できないのは私だけではあるまい。「警笛ならせ」の標識があるカーブではベルを鳴らす義務があるのだが、その場合でもハンドルから手を離さずに徐行しつつ「あー」とか叫んだほうがマシなんじゃないか。

DHバー
DHバーを使うと、空気抵抗を低減しつつ、上半身を休めながら楽に進むことができる。DHバーは低速域だと効果が薄いと言われるが、25km/h巡航でも上ハンドルに比べて15Wほどの省力化ができるそうだ。向かい風の際にはさらに大きな効果がある。確率論として、コースの半分は向かい風になる。常にDHバーを使う必要はなく、交通状況が許す範囲で、向かい風だったり体幹が疲れた時に使うと、顕著に疲労を削減できる。ブロンプトンで使っていた中華カーボンDHバーが既にあるので、それをつけてみた。

走ってみたところ、持ち手の棒とクランプが一体型ものは、そのままだとロードバイクでロングライド用に使うには不向きだと分かった。肘置きが低くなりすぎる。私の場合、上ハンドルのサドルからの落差が3.2cmで、ブロンプトンで使っていた肘置き一体型のDHバーをつけると、DHバーの肘置きの位置は上ハンドルと同じくらいになるので、サドルからの落差は3.2cmくらいになる。そうすると、肘の高さと膝の高さが同じになるくらい窮屈になる。プロの選手だとそのくらいのポジションになっている人もいるが、それを素人が真似したら腹肉が支えて横隔膜が圧迫された上に背中や尻の筋が引きつって全く速くならないどころか、おそらく身体を壊すか事故るかで終わる。ロングライドでは、空力性能の向上は二の次で、楽にペダリングや呼吸ができるかどうかが最も重要だ。言い換えれば、楽にペダリングできる範囲で肘置きを低く狭くすることになる。そのためには、経験上、肘置きの高さがサドルと同じくらいになるのが理想的だ。よって、ハンドルからのスタックハイトが3.2cmのDHバーが理想ということになる。トライアスロンだとDHバーの嵩上げをしている人は結構多いようだ。
新しいDHバーを買おうとも思ったが、スタックハイトが3.2cmちょうどの製品を探すのは難しい。ゆえに、既存のDHバーにスペーサを噛ませて嵩上げするのが望ましい。クランプが上下方向にハンドルを挟む方式で、31.8mm径のハンドルに対応しているスペーサだ。Profile Designとかがそのようなスペーサを出しているが、高さ20mmの2個セットで6500円とかいう法外な価格なので、アリエクで互換品を買った。20mmの1セット1021円のを2セット買って。それを2つ重ねるのだ。ホームセンターでM5の60mmのキャップボルトも買った。

20mmのスペーサ2枚を噛まると40mmになるが、斜め上に傾けて付けるので、32mmくらいになる。これで高さは理想的になった。DHバーを傾けると腕の角度が上がってグリップが顎の前くらいに来るハイハンズポジションになるのだが、腕が水平なのに比べて姿勢が楽だし、操作性も良いし、空気の整流の観点でも有利らしい。あとは左右の幅だ。ハンドルのパイプの太さが中心付近から少し離れるとテーパー形状で細くなっていくため、クランプは中心に寄せて付ける必要があるが、テーパーが始まるギリギリまで寄せることで、左右の肘置きの中央の間隔を14cmくらいにできた。これなら呼吸は問題ないし、ステアリング操作もしやすい。慣れてきたらもうちょい狭くしてもいいかもしれない。

DHバーをつけると、ハンドルにアクセサリを付ける場所が制限される。サイコンとメインライトはハンドルの前に突き出したマウントにつけているので影響を受けないが、ベルとサブライトをどうするかが問題になる。ハンドルの中心部の上部はDHバーが占領しているので、ハンドルの下にしか場所がない。よって、DHバーの右クランプの右下にサブライトをぶら下げ、左クランプの左下にベルをぶら下げる。サブライトはメインライトの斜め後ろに位置して前方全体を照射できないが、実際にサブライトを使う時にはメインライトと付け替えるので問題ない。車体に固定されてさえいればブルベの車検は通る。ベルはもはや使える位置に存在していないが、これも付いてさえ居れば車検は通り、実際には使わないので使い勝手はどうでもいい。DHバーを使う場合にはサドルの角度を若干前下がりにして、股間の圧迫を緩和するとともに、さらに前後位置を若干前に出して、ペダル荷重を増すと良い。TTバイクのようにサドルをもっと前に出すと、DHバーの位置を下げてより深い前傾姿勢にしても呼吸が妨げられないようにできるが、公道での視野や操作性、そして首の疲れを考えると、レース以外でそれをやるのは現実的じゃない。それに、DHバーを握っていない時間もそれなりにあるので、DHバーに最適化してサドル位置を決めるわけにはいかない。
DHバーの利点は空力性能が向上するだけではなく、体幹を休める効果もある。肘置きに上半身の体重を全て預けられるからだ。DHバーを握っている間は手への圧迫は無くなり、尻の圧迫位置が変わって圧力が弱まるため、手や尻に圧迫痛を緩和するのにも役立つ。ロングライドでは定期的にダンシングして尻を休めることが必要になるが、DHバーを握る姿勢はそれに似た効果を体力を温存したまま得ることができる。ただし、通常ハンドルの落差が大きい場合と同様に、前を見ようとして顔を上げると首に負担がかかるという欠点がある。よって、身体を休めたければ、基本的には首を上げずに斜め下を見て走ることになる。そもそもDHバーはブレーキの反応が遅れるので歩行者が居るような場所では使えない。また、首を上げて周囲を確認し続けなければならない交差点や路傍の施設が多いような場所でも使えない。とはいえ、田舎の幹線道路だと交差点も路傍の施設も疎らになるので、使える区間が意外に多い。国道17号や18号で東京と長野を行き来する場合、半分くらいの区間で使える。
ブルベでDHバーをつけられるかどうかは主催団体によって違うが、利用可能であれば是非とも使いたい。私が参加できる範囲で例を示すと、AJ群馬とオダックス埼玉ランドヌール東京はOKだが、AR日本橋とAJたまがわとAJ千葉はNGだ。SRを狙うなら600kmがラスボスになるので、そこだけはDHバーがOKな団体を選ぶのが良さそうだ。DHバーがないと400kmを倒せないなら、DHバーがあっても600kmは倒せない。でも、DHバーなしで400kmを倒せたなら、DHバーありで600kmを倒すのは少し楽になるだろう。難易度が上がるほど、その少しの差が成否を分けることになる。
リアビューレーダー
自転車の後方から来る車の接近を検知するレーダーの表示にサイコンが対応しているので導入を検討したが、金かかって重くなって管理が面倒くさくなる割には実際の効用が低そうなので止めた。私は車が来ようが来まいが車道の左端を走るので、後方からの車の接近が分かったところで行動を変えることがない。道路交通法にも、自転車を含む軽車両は車道の左端を走れと書いてある。左端以外を走ると違法なのだ。左端を走っているのに車がなお突っ込んできたとして、それが分かったとしても避ける場所がない。
横断や右左折や車線変更をする際にはレーダーがあったとしても目視が必要なので、レーダーで予断を作ることはむしろ危険だ。目視は安全確認に絶対必要と認めるならば、レーダーを使うということは、「レーダーに映っているから目視する」「レーダーに映っていないから目視しない」のどちらかまたは両方を行動に組み込むことになる。目視自体に前方から視線を切るリスクがあるので、それをレーダーでフィルタリングするという意見は真っ当なようにも思える。しかし、レーダーに接近車が映る度に目視するのは頻度が高すぎて危険だ。レーダーに映っていないから目視を省いたり、タイミングをずらすというのも危険だ。行動変容に際して最適なタイミングでの目視は、レーダーに頼らずに行うべきだ。目視による安全確認を従来と変わらずした上でレーダーも見るというのなら、レーダーを扱う分だけ認知コストが上がっていることになる。レーダーで事前に確認した上で目視をすると反応速度が上がるという主張は、レーダーに車が映らなかったが目視して車がいる場合に予想と違って驚くことを意味している。予断で行動を変えてはいけない。横断や右左折は、それをなすべき地点で停車または徐行をしてから確実に目視の上で遂行する。車線変更は、自転車は左端を走るという規定により、基本的にはしない。左折レーンのある交差点で直進する場合でも、直進レーンに車線変更してはいけない。そして、左折レーンで直進する際にも、目視で後方確認する必要がある。車線変更とは言わないまでも、障害物や水たまりを避けるための進路変更はあり得るが、それをレーダーに頼って目視せずに行うことはむしろ危険だ。トラック等に追い越されて風で煽られる際の心の準備ができるというのも、現実的じゃない。驚愕反応に対する備えは虚報の継続によって無効化される。つまり、距離の概算だけでは煽られるかどうかがわからず、レーダーによる情報だけだと、実際には煽られないことが多すぎて、次第に何も反応しなくなっていく。接近車の度にハンドルを握りしめていたら疲れてしまうだろう。
さらに、レーダーは接近を警告するものであって、接触不回避性について警告するものではない。衝突が不可避だと分かった場合に落車覚悟でさらに左に避けるとか、受け身を取るとか、筋防衛性収縮でダメージコントロールするとか言った達人級の技ができたと仮定しても、接近する度にそういった対応をするわけにはいかない。よって、左端を走っているのに接触されたらどうしようもないと諦めて、それを気にする認知負荷を他の安全確認に回したほうが良さそうだ。制御不能なものに認知コストを回しても何も回収できないので、安全プロトコルを遵守した上で、制御可能なものに認知コストを回すべきだ。
とはいえ、結構な数の人が、「レーダーは便利」「レーダーは安全」と発言している。それなら、レーダー搭載と非搭載で事故率に差があるというエビデンスがあるのかと思って探してみたが、見当たらない。尾灯を点滅させると後続車に車間距離を開けてもらえるというエビデンスが、なぜかレーダーの安全性の根拠として語られていることもあるが、当然それは尾灯の効果であってレーダーの効果ではない。レーダーで接近を検知すると点滅パターンを変えるアクティブフラッシュ機能についても、普通のフラッシュライトに比べて事故を減らすという報告があるわけじゃない。そもそも点滅ライトを見逃すほどの前方不注意をしているドライバーが点滅パターンを変えるくらいで注意を取り戻すというのは願望に過ぎないのではないか。
また、警視庁の平成26年統計によると、自転車と車両の事故の形式別では、出会い頭57009件、左折14236件、右折14251件、その他10846件、追い越し追い抜き3121件、正面衝突1786件、すれ違い1671件、追突1564件なので、後方から轢かれる3121件は全体104484件の3%弱にしかならない。3%なら良いって話にはならないし、後方からの追突の致死率が高いのも事実ではあるが、レーダーによる安全性の寄与は3%の内部に留まり、それを減らすというエビデンスもなく、むしろ増やす可能性すらあるので、レーダーがあるから安心というのが見当外れだということは理解すべきだ。繰り返すが、3%だから無視して良いのではなく、3%のインシデントを増やすか減らすか判然としない対策のために97%のインシデントを増やすリスクを負うとすれば、それは割に合わないということだ。
以上を鑑みて、リアビューレーダーは安全のための装置ではなく認知バイアスとしての安心を得るための装置だと私は判断している。安心がむしろ危険を生む。「見えないからなんか怖い」という不安を敢えて消さずに、目視や徐行や停止という安全プロトコルのみに依拠する方が安全だと私は思う。よって、現状ではレーダー導入は保留している。ただし、使わないで否定するのは良くないので、機会があれば試してみたいとも思っている。試した上で安心を手に入れたとしても、それが安全であるかどうかは別問題で、そもそも安全=無事故というのは悪魔の証明になるので、自分というサンプルが天寿を全うしただけでは安全性は証明できないし、安全でないことを証明した時には死んでいるというのが辛いところだが。
なお、道路左端の白線の扱いは、歩道があるかによって変わる。歩道がある場合の車道の左側にある白線は車道外側線であり、白線の外側は車道の一部であり、路肩とも呼ばれる。自転車は、安全に走行できる限りは、車道外側線の内側を走っても外側を走っても良い。路肩を走る方が安全と言われる場合もあるが、路肩は舗装状況が悪く障害物も多いので、それでハンドルを取られて事故を起こす可能性もあるから、路面状況や交通状況に合わせて判断することになる。歩道がない場合の車道の左側にある白線は、路側帯の標示である。白線自体が路側帯なわけではないが、白線上も含めたそれより左側の領域が路側帯となる。路側帯は歩行者の通行のためにあるが、歩行者の通行を妨げないことを条件に、自転車は路側帯を通行しても良いことになっている。また、追いつかれた車両の義務として、できる限り道路の左側端に寄って後続車に進路を譲らなければならないというのがある。車道の左端ではなく路側帯を含む道路の左端なので、その場合は路側帯に入る必要がある。路側帯と車道との行き来は進路変更に該当するので、その度に後方確認が必要になる。リアビューレーダーやバックミラーがあればその補助にはなるが、結局は目視をしなければならない。車に追い越される度に車道と路側帯を行ったり来たりフラフラする方が危ないので、現実的には路側帯がある道路では自転車は路側帯を走り続けることがほとんどだろう。結局のところ、歩道があろうとなかろうと、自転車は原則的に道路の左端を走り、みだりに進路変更しないのが安全ということになる。左端を安全に走っていて、それを車が追い抜けないなら、それは自転車のせいじゃない。後続車が来ようが来まいが、左端を走り続けるだけなのだ。もちろん、それで渋滞を作るのは本意ではないので、後続車をあまりに待たせるようなら道路外で停車して抜かせるなど退避行動を取ることもあるが、それはリアビューレーダーで判断すべき話じゃない。
余談だが、手信号には右折や左折があるが、直進がない。よって、左折レーンで直進する場合、後続車にどのサインを出すべきかが悩ましい。後方確認しつつ、キープレフトの範囲内で車線中央側にほんの少し寄って、安易に追い越されない状況を作ってから、そのまま直進するというのが個人的な慣習だ。しかし、若干右への進路変更は右折でも車線変更でもないので右折の手信号は出せない。減速や停止の手信号を出すのもおかしい。自転車は左折レーンで直進するという実態があり、そしてそれは日本全国で毎日何百万回か起きている現象なのに、直進の手信号がないのは制度の不備だと思う。
さらに余談なのだが、国道14号(千葉街道)で千葉方面から東京に向かう途中で出てくる国道357号(東京湾岸道路)への分岐で右側の357号に入るのが、無理ゲーになっている。左折レーン風に見えるのが本線であって、2車線あって、信号がないので、速度を落とさない車がひっきりなしに通る。357号側が右折レーンなのだが、自転車は右折レーンに入れない。右折レーンがある場合は二段階右折するのが原則だが、信号がないので二段階右折できない。よって、357号に入る唯一の策は、分岐の手前で、信号がない二車線を横断することだ。横断禁止じゃないので適法ではあるのだが、怖すぎるだろこれ。ここは通らないのがベストプラクティスなのだが、なんとなく千葉方面に行って東京に帰ってくると、つい通ってしまって、「しまった、罠だった」と後悔するのだ。

ツールキット
ブルベは各地で開催されるため、そこまで輪行する必要がある。また、走行中の遠隔地でDNFした時も、輪行で帰宅する必要がある。また、パンク等の軽微なメカトラブルであればその場で修理して走行を続けたい。以上のことから、ツールキットには輪行と整備に必要なツールと材料が含まれている必要がある。
輪行に関しては、輪行袋と6mmアーレンキーがあれば最低限できる。輪行袋にはPekoのお手製輪行袋を以前から使っている。これは薄手かつ軽量であることを追求した製品だ。ストラップがないので、持ち運ぶ際には袋の隙間から手を突っ込んでフレームを直接持つことになる。生地が薄いので、もしストラップで吊り下げたら確実に破れるだろうが、直接フレーム持ちを前提とすることで軽量化するという割り切りがある。車体を最低限覆うことでJR等の規定を満たすためだけのハック的存在とも言える。
その他に、フレームとホイールを括り付けるために「りんりんバンド」というフック付きのゴムを使う。結構強力なゴムなので、適度に圧迫してホイールがくくりつけられるため、フレームだけ支えて持ち運べるようになり、その際に擦れて傷がつくのを防げる。念の為、スプロケとブレーキブレードにカバーをかけて、フレームの傷や輪行袋の破れを防止している。ダミーローターでブレーキパッドの閉じ込みも防ぐ。
走行時のメカトラと言えばパンクである。チューブレスなのでシーラントがある程度は対処してくれるが、それでもパンクする可能性はある。よって、パンク修理キットを携帯する。といっても、TPUチューブを入れて空気を入れるだけだ。よって、タイヤレバーとTPUチューブと空気入れがあれば良い。TPUチューブにはCYDYとかいうメーカーの2本で1980円のものを買った。32c対応でバルブ長は65mm。修理パッチ付きなのも良い。
空気入れが必要だ。以前はGorixの手動ポンプを使っていたが、電動ポンプを導入することにした。空気圧の表示機能があって、指定空気圧での自動停止機能があって、700Cタイヤの充填が2回以上できて、できるだけ軽いものがいい。で、アリエクでBSCOBBER A5Miniとやらを買った。700mAhで96gで3861円というのが気に入った。1300mAhで160gとかもあったが、3回以上パンクすることは想定しない。
携帯する工具としては、基本的には2mmと3mmと4mmと5mmと6mmがあれば良い。6mmはスルーアクスルに、5mmはサドルやチェーンリングなどに、4mmはハンドルやクリートなどに、3mmはボトルケージやディレイラーなどに、2mmはFDの微調整に使う。2.5mmを使う小物もあるが、外でそれらを調整する必要はないだろう。よって、2,3,4,5,6mmのアーレンキーがついている最も軽いツールキットを買った。プラスドライバとマイナスドライバとトルクスもついて88gだった。個別のアーレンキーの重さを合計しても84gだったので若干損しているが、出先で細かいものが散らばると面倒なので、ツールキットにした。
400kmのコース以上だと、休憩がてら注油することになる。100均の目薬ボトルにチェーンオイルを入れたものと、不織布も携帯する。コンビニ等に入ったら、不織布で軽くチェーンを拭いてから、チェーンの駒に一滴ずつオイルを垂らして、それから買い物やトイレを済ませる。最後に不織布でチェーンを拭いて、不織布はゴミ箱へ。オイルは普段はドライルブを使っているが、ブルベ本番では天候によらずウェットルブのみを使う。
ここまで述べた輪行と整備の道具類は、全てR250のロングツールボトルに入れる。右半分に輪行セット、左半分に整備セットが全て収まる。最後にチェーン鍵もサンドイッチをしてジッパーを締める。「走行中には使わないもの」という位置づけでまとめられるのが気に入っている。全体の重さは752.4gとなった。


ツールボトルはシートチューブのボトルケージに収める。重心を下げるならダウンチューブの下側にぶら下げる方が有利なのだが、ダボ穴がそこにない。バンド式のマウントやタイラップでダウンチューブ下にボトルケージを固定することも不可能ではないが、Q-factorが狭いロードバイクでそれをやると、クランクアームとのクリアランスがギリギリになるので、道中での不具合が起きる不安を抱えることになる。ドリンクボトル2本を使いたいとか、メイン三角内にフレームバッグをつけたいとかいう要件が出たら、ダウンチューブ下収納も考えるが、現状では見送りとする。
ヘルメットとサングラス
ヘルメットは、近所のリサイクルショップで売っていたOKG KabutoのFigoとかいうのを使っている。260gなので、超軽量とは言えないが、まあまあ軽いほうだろう。通気性も良く、頭が蒸れることがない。買った当初は、普通に被って前傾姿勢を取ると目線のところまでヘルメットが下がってきて鬱陶しかったが、アジャスタできつく絞ってからかぶればいいと気づいて。快適になった。これで特に不満はないのだが、強いて言えば、脱いだ後に髪の毛が空気孔の形になっていて気恥ずかしいことだ。
サングラスは、以前はオークリーのロードバイク用のものを使っていたが、どっかに失くしてしまった。その後は、釣り用のサングラスであるサイトマスターのシクロというのをずっと使っている。重さ46gで自転車用サングラスより重いが、ガラスレンズかつ6カーブなのが良い。そして、偏光レンズなのが良い。道路の照り返しが消えるので、視認性が上がるとともに、眼精疲労が緩和される。全体の光量が減るとともに、特に強い反射光が減ると、視界内の最大光源に合わせて調整される瞳孔が開く傾向があるので、カメラレンズにおけるF値の減少と同様に、立体感を増幅させる効果もある。当然UV400の紫外線99.9%カットで、白内障の予防にもなる。偏光度99%の割には可視光透過率が35%もあり、暗い感じはしない。

自転車乗りでサングラスの見え方について語る人は少ない。釣りと違って視覚情報で記録が変わるわけじゃないので、レースの文脈では確かに見え方なんてどうでもいいのかもしれない。しかし、趣味のサイクリングの楽しみの半分くらいは景色を見ることだろう。それなら、競技用のサングラスである必要はない。多少重くなっても、視界が最善になるものを選ぶべきだ。個人的にはガラス製の偏光レンズがおすすめだ。ちゃんとしたガラスレンズは視界の歪みがほとんど無く、色収差も少なく、裸眼と見え方がほとんど変わらない。コーティングが良いものは耐久性も良い。ガラスだと割れた時には目を傷つけるかもしれないが、レースをするわけじゃないので衝突事故の頻度が相対的に低く、単独落車時には多くの場合サングラスは吹っ飛ぶので、眼前でガラスが割れる可能性は低いだろう。また、サイトマスター(タレックス)のレンズは強化ガラスなので、そうそう割れないし、割れても尖った破片にはなりにくい。ちゃんとした偏光レンズは、垂直方向の反射光を激減させるので、空間認識を容易にしてくれる。物体表面の反射率という情報を捨てることになるので、視覚情報の質が全て向上するというわけではないが、自転車で走る上で有用な情報を選別するとは言えよう。フレームの形も重要だ。4カーブだと横から風や迷光が目に入るし、8カーブだと視界が歪むので、6カーブが最善だ。そして、色付きじゃないグレーの方が好みだ。コントラストが高まるからと言ってイエロー系やアンバー系を選ぶと、風景の本来の色が分かりにくくなって勿体ない。
サングラスの弱点は、夜間走行だ。街灯が多く光量が豊富な街中では偏光サングラスをかけていると視認性が良くなることもあるのだが、街灯が少ない場所や田舎道では必然的に視認性が落ちる。JISでは視感透過率75%未満のレンズの夜間時における運転用または路上での使用を禁止している。JISに消費者の行動を制限する権限はないので、取り締まりの対象になることもないが、事故を起こした際に道路交通法の安全運転義務の適合性を問われた場合に、それを根拠に不利益を被る可能性はある。夜でも風や虫が目に入るのを避けるためにメガネはしたい。200kmブルベの後半で夜になるかもしれないくらいならば、裸眼で走りきってもよさそうだが、それ以上の距離になるなら夜用のメガネが欲しくなる。調光レンズなら夜でも明るめになるが、偏光レンズじゃないと昼間の利便性が下がる。調光かつ偏光にすると、偏光フィルタの遮断分に調光フィルタの遮断分が乗るので、可視光透過率がもっと下がって本末転倒になる。よって、偏光サングラスの中で可視光透過率が高いものを昼間に使い、夜用のものを別途持つのが利便性が高そうだ。しかし、嵩張るメガネケースを2個も持ち運ぶのは避けたい。そこで、サイトマスターのケースに同時に入れられるメガネが欲しくなる。まだ買っていないが、折り畳みメガネか、ポケットに入れられる薄手のメガネを探している。
音楽
半日とか数日とか自転車に乗り続けるにあたっては、身体の管理だけではなく精神の管理も重要となる。自転車旅には慣れているので今さらそれが課題になることはないのだが、長い道中には最低限音楽が必要だ。道交法では周囲の音が聞こえない状態で走行することが禁止されているが、逆に言えば周囲の音が聞こえているなら、手段を問わず音楽を聞いても問題ない。外部音取り込み、オープンイヤーイヤホン、骨伝導イヤホン、ヘルメットスピーカ、ネックスピーカ、ハンドルスピーカなどの方法があるが、私は外音取り込み派だ。
イヤホンにはMoondropのGolden Ages 2を使っている。いわゆる平面磁気ドライバーを積んだBluetoothイヤホンだ。BA7機+DDの有線イヤホンKZ ZASに迫る音質で、音の分離がとにかく良く、低音もちゃんと聞こえる。それでいて、無線かつアンプ搭載なので使い勝手が圧倒的に上だ。カナル型かつノイズキャンセル機能も搭載していて、外部の騒音を緩和して楽曲が聴ける。自転車に乗るうえで重要なのは外音取り込み機能の方だが、これも必要十分に機能する。車のエンジン音だけでなくロードノイズや風切り音も聞こえる。重さは片耳5gで、ケース込みでも51gなので、ケースごと持ち運んでも問題ない。ただし、良いことばかりではない。まず、7時間半の連続再生と仕様では謳っておきながら、実際には4時間くらいしか持たない。能率の悪い平面磁気ドライバーをSoCで駆動する構造な割にはそれでも頑張っている方なのだろうが、外音取り込みなどで電気を使うのだろう。また、ノズルがやたら短いので、イヤーピースの選択肢が限られる。自転車に乗りながら使う上では、耳孔への刺さりが浅いと落ちやすいのは困る。
走行中のイヤホンの使用にあたっての天敵は、風切り音だ。髪の毛が長かった時はモミアゲの毛が風切り音を消してくれていたが、丸刈りにしてから風切り音がひどくてまともに音が聞こえなくなった。外音取り込みが風切り音をさらに悪化させている。かといって大音量にするわけにはいかない。耳に悪いし、周囲の音が聞こえなくなったら危険で違法になる。そう思っている人は巷に結構多いらしく、海外ではCat-Ears AirStreamzという製品が売られている。ヘルメットのストラップの耳の前の部分にモフモフを巻き付ける製品だ。残念ながらCat-Earsは日本では売っていなくて、個人輸入品がメルカリで2万円とかで売られている。
モフモフを巻き付けるくらいなら、誰でもできるだろと思って、自分で作った。100均でフェイクファーを買ってきて、ストラップに縫い付けただけだ。巻き付けると肌に当たって鬱陶しいので、外側にだけ縫い付けるのが重要だ。見た目がプードルみたいになったが、効果は抜群である。マイクのファーウィンドスクリーンは-20dbの効果があり、つまり風切り音のエネルギーを1/100にし、音圧を1/10にするが、今回のモフモフもそれに匹敵するくらいに風切り音が減ったと感じる。まるで室内に居るかのように静かになり、適正音量で音楽が聞ける。音楽を聞かないとしても、風切り音が無いと環境音が聞きやすいし、ストレスが減る。前方だけ遮る方式と耳の前後を囲う方式を両方試したが、後者の方が効果が高い。走行風は主に前方から来るとはいえ、後方にも抵抗がある方が耳介周辺の気流が安定的に低速になる。めちゃくちゃ強い横風だと、風上の方の耳の効果は弱まるが、それでも環境音や音楽を聴くには十分だ。

こんな簡単なことで快適性が顕著に上がるが、それをサードパーティ製のパーツや一消費者のDIYで成立させているというのは、無駄であり、それはビジネスチャンスでもある。自転車に乗れば誰だって風切り音が鬱陶しいと思うのだから、OGK KabutoやBridgestoneにおかれては、純正パーツとしてモフモフを供給していただきたい。耳の前側のストラップにスナップボタンをつけておいて、モフモフをパチっと付け外しできるようにしてほしい。そうすればモフモフだけを洗ったり交換したりできる。
ついでに、TPUバンドをイヤホンのくびれにに括り付けて、さらにそれに輪を通してサングラスの弦に引っ掛けられるようにした。これならイヤーフック型と同程度の安心が得られる。走行中にイヤホンが落ちるかもしれないと考えると安心して走れないので、この紐は非常に重要だ。

流す音楽は、気分で切り替えると良い。考え事をしたい時に言語情報が交じるとノイズになるので、クラシカルとかサントラとかゲーム音楽が良い。気分を昂揚させたい時は歌ものを聴きつつ自分で歌っちゃってもいい。そして、時間と疲労感を忘れて淡々と走りたい時はラジオなどの密な言語情報を聴くと良い。個人的に好きなのは、適当なWeb上の記事からNotebookLMの音声解説を作って聴くことだ。事前にダウンロードしておけばネットがない状況でも聴ける。英語モードにすればリスニングの練習にもなる。
反射ベスト
Audax Japanの規定では、「すべての走者は反射ベスト、反射たすき、反射肩掛けベルト、もしくは前後の見えやすい位置に反射素材がついた同様のものを着用しなければならない」と書いてある。また、先達の解説サイトをいくつか見る限り、たすきやベルトを認めないローカルルールがあるとのこと。なので、反射ベストを入手する必要がある。
反射ベストとは何かという具体的な規定はない。現場で個別判断ということになるだろうが、当日に出走禁止になると辛いので、先達の使用実績のあるものから選んでおくのが無難だろう。で、AONIJIEという格安メーカーの1990円のを選んだ。TRIWONDERというキャンプメーカーのOEMとしても売られていて、そちらだと2880円で買える。

色は黄色と水色と灰色と桃色があって、個人的には灰色を選びたいところだが、蛍光色じゃないと駄目な団体もあるらしい。例えばランドヌール熊本の規定だと「蛍光色はいわゆる蛍光イエロー(黄)、蛍光オレンジ(橙)、蛍光ピンク(桃)、蛍光グリーン(黄緑)のいずれかの色を備えた反射材」と書いてある。よって、黄色か桃色の二択になって、ベタだが黄色を選んだ。黄色いベストを着たプードル耳のオジサンが疲れた顔でペダルを漕いでるのは何とも滑稽な姿になるだろう。
このベストは前ポッケがいくつか付いているので、休憩中にスマホやら財布やらサイコンやらの貴重品をしまうのに便利だ。背中の一部以外はメッシュになっていて、サイズ調整ができて風でバタつかないのもよい。また、反射材が腰付近に位置しているので、前傾姿勢で乗っていても視認性が高く、かつサイクルジャージのポッケにギリギリかからない丈になっているので使いやすい。
雨具
雨具と防寒具を兼ねて、モンベルのトレントフライヤーをヤフオクで調達した。7275円の15%オフで6171円。定価25500円はぼったくり価格だろうと思うが、中古なら手が届く。

こいつは186gとめちゃくちゃ軽い割には、防水と防風がしっかりしていて、着て走るだけで暖かい。脇を開けて湿気を逃がせるので、走行中の汗が溜まることもない。とりあえずこいつをサドルバッグに忍ばせておけば、軽い雨であれば乗り切れる。峠の下りなどで身体が冷える場合も、こいつを着ておけば緩和できる。季節に合わせて中に着るサイクルジャージやジャケットを調整する。真冬はロングライドしないと割り切れば、防寒具はトレントフライヤーだけで十分だ。畳んでジップロックのMサイズに押し込むと非常に小さく運べるのも良い。
普段のロングライドの場合、雨が降っていたらそもそも出かけない。出先で雨が降ってきた場合、最寄りの交通機関まで走行してから輪行で撤退し、また最寄り駅から自宅まで走行する。その走行に耐える雨具があればよい。脚が濡れても仕方ないと割り切って、下半身の雨具は用意しない。ブルベの場合には、全日程が雨っぽかったらDNSにして、そうでなければトレントフライヤーだけで頑張る。半分以上が晴れだと仮定し、濡れた部分は走っている間に乾くと期待する。どうしてもという場合には道中のコンビニやスーパーでレインパンツを調達するという手段を取るかもしれないが、多分やらない。経験上、下半身が濡れても半日くらいは走っていられる。濡れると皮膚が弱くなって血が出るという意見もあるが、私はどうにも肌が強いようで、そうなったことはない。むしろレインパンツこそがガサついて内股に擦れるし、チェーンへの巻き込みを気にして走るのも嫌だ。
手の痺れの対策と手袋
ロングライドでは、手の痺れが問題になることがある。主な原因は、衝撃と静的圧迫だ。衝撃の例としては、私が自宅から街に降りる際に亀裂がふんだんにある道路を50km/hで降りる際に、衝撃によって手の筋肉や神経が痛めつけられて手が痺れるというのが挙げられる。衝撃を緩和するためには、RoubaixのFuture ShockとかREDSHIFTのSHOCKSTOPとかのメカ的なサスペンション機構が最も効果的だ。しかし、冷静に考えると、ロングライドにおいて峠の下り坂を走っている時間は、1割にも満たないだろう。その間に一時的に手が痺れたとしても、平坦や登りになればそのうちに回復する。下りだけで構成されるコースというのはあり得ない。石畳のような悪路をひたすら走る場合には平坦でも衝撃が問題になり得るが、自転車旅で敢えてそのような道を選ぶことは稀だし、ブルベで出てくることも稀だろう。ゆえに、手の衝撃吸収のためのギミックは、オフロードやグラベルや石畳を主戦場としないなら、オーバースペックな割に重量増加が大きいので、導入を見送っている。有り体に言えば、オンロードでサスペンションステムを使うのは、気休めに過ぎず、無駄だ。
残る痺れの原因は、静的圧迫である。これは、長時間乗っていれば必然的に起こる。静的圧迫の対処としては、手袋などで圧力を分散するのと、持ち手を適宜変えるというのがある。私はRockelというメーカーの指出し手袋を昔から使っている。薄いながら手の平にパッドも入っているが、衝撃吸収の効果も圧力分散の効果も低い。なのになぜそれで甘んじているかというと、持ち手を変えれば多くの場合で対処できるからだ。特にDHバーが使える場合、それに体重を預ける時間が長いので、そもそも手が痺れることが稀だ。手袋は衝撃吸収というよりは落車時に手を保護するためと保温のためにつけている。ただし、DHバーが使えない場合に備えて、先達のブログに書いてあった化粧用パフを手袋に入れる方法も試している。これはかなり良い。100均で買ったパフを手の母指球と小指球の間に入れておくと、衝撃と圧迫の両方を緩和してくれる。ただし、暑いと手汗を吸ってしまって気持ち悪くなるのが難点だ。そこで、医療用ソルボセインのシートを入れることを考えた。靴のインナーソールに貼るソルボヒールという商品のSサイズを半分に切って掌底の部分に挿入することにした。化粧用パフが2gのところソルボヒールは1枚28gだが、半分に切って14gにすれば気にならない重さになる。つま先寄りと踵寄りの半分に分けたうちで、つま先寄りを使うのが重要だ。そうすると掌底の部分だけが分厚くなる。実際に使ってみたところ、靴底なだけに衝撃吸収効果は絶大で、柱などを掌底打ちしても痛くないほどだ。母指球と小指球を支点として橋をかける構造なのが奏功していて、ブラケットを握っている際の圧力をきちんと支点にも分散してくれる。元々厚手のパッドが入っている手袋を使えばいいという話もあるのだが、市販の手袋は親指の可動性を確保するために母指球と小指球の間の肝心な部位のパッドが薄くなっているので、可動性を犠牲にしてまでそこを保護するには後付けでパッドを入れるしかない。


指出し手袋の保温効果は低い。峠の下りなどでは手がかじかんで不快かつ危険だ。よって、峠が絡むコースでは、おたふく手袋の蓄熱インナーグローブを携帯している。こいつは薄手ながらかなり暖かい。指先がタッチパネル用に通電するようになっているので、スマホの操作ができるのも便利だ。しかし、防風効果は弱く、防水でもないので、真冬や雨天では通用しない。そこで、100均のビニール手袋を雨具と一緒に携帯している。ビニールの層で防風と防水ができると、インナーグローブの蓄熱機能が十全に働いて、厚手のグローブに匹敵する温かさになる。それでいて重量や体積は非常に小さい。
バッグ類
泊りがけロングライドに行くなら、着替えや雨具やアメニティや充電器などを持ち運ぶ必要がある。ブルベにおいても同様だ。バックパックだと大量の荷物を運べるのだが、尻に重みがかかって痛くなったり、背中に汗が溜まったり、ヘルメットが押されて鬱陶しかったりという問題があって、許容できない。ロードバイクの軽快性を損なわないで荷物を運ぶとなると、サドルバッグとトップチューブバッグの組み合わせが最適解だろう。
サドルバッグには、走行中に取り出さないものを全て入れる。旅であれば、Tシャツ、トランクス、短パン、タオル、ウィンドブレーカ、栄養食品(プロテインとEAAの小分け)、ポンチョ、歯磨きセット、塗り薬セット(日焼け止めや虫よけ等)、充電器セットが必要だ。場合によってKindleとカメラと蚊取り線香も持っていく。そうなると、10Lくらいのものが良さそうだ。かつ、インナーバッグなしで防水性能があるべきだ。それを満たすものとして、Gorixの10Lのバッグをメルカリで5500円で調達した。

このGorixという大阪のメーカーが私は結構好きだ。売れている他社製品のパーツを模倣して中国や台湾で作って安価に提供するという姿勢があからさまな会社で、概して8割や9割の性能を5割や6割の値段で出してくるので、コスパが良い。当たり外れがあるのは他のメーカーも同じであり、一撃で最適な製品に出会うことは稀だ。ならば、最初にGorix等の廉価品を買っておいて、目利きができるようになったら、より高いメーカーの製品を買うという戦略が合理的だ。で、サドルバッグのようなリバースエンジニアリングが容易なパーツに関しては、模倣品(模造品ではない)の性能が元の製品に劣るわけではなく、後発な分だけ細かい改善が入ってむしろ優れている場合もある。よって、高いメーカーのものを買う意味が薄い。十分な容量と固定力と防水性があればそれで良い。
実際のこのGORIX GX-SB13はそつなくできている。外装が防水仕様なので、インナーバッグを必要としない。固定用バンドの配置もよく考えられている。荷室が一つで、余計な仕切りやポケットが無いのも良い。着替えやタオルなどはそのまま奥に突っ込んで、途中で出すかもしれないカメラやウインドブレーカは手前に入れれば良い。中敷きがあるおかげで、荷物が少なくても多くても形が崩れない。脱いだ衣服はバッグ上部のバンジーコードで固定できるので、春や秋の上着の管理も楽だ。
自転車のフレームが小さい場合や、サドルが低い場合には、サドルバッグとダイヤの間のクリアランスが問題になる。このサドルバッグの場合、おそらくサドルの付け根と後輪タイヤまでの距離が25cm以上あれば安心して付けられるが、私の場合は20cmしかなく、普通につけるとサドルバッグがタイヤと接触してしまう。そこで、シートポストに巻き付けるベルトをサドルの下部にある穴に通すようにした。そのうえで、プラスチックバックル式の固定用ベルトと固定用強化ベルトで締め付けると、なんとかクリアランス3cmくらいを確保できた。プラスチックバックルは強い力には耐えられないので、それは横揺れを防ぐ程度の締め付けで良い。上下に揺れてタイヤとバッグが接触しないための締付けは固定用強化ベルトで行う。こいつは結構強めに締め付けて大丈夫だ。結果として、サドルバッグ全体が水平に後ろに伸びるような取付形状になり、図らずも空力性能が良さげになっている。バッグ全体が防水なのでマッドガードにもなって一石二鳥だ。


春夏秋でバッグの中身はほぼ一緒だ。気候に合わせた服装をするのだが、それは着ているものが違うだけなので、バッグに入れるわけじゃない。洗濯は宿泊施設で行い、乾くまでの間はTシャツ短パン姿で布団や毛布にくるまっていれば良い。そして、冬は自転車旅をしない。ならば6Lくらいでも足りそうなのだが、ギリギリなのは良くない。旅をするなら、出先で何かを調達するだろう。夜はビールやらおつまみやらを買うだろう。釣竿とルアーでライトゲームをするかもしれない。望遠レンズで動植物を撮るかもしれない。寝袋とマットを入れてバス停で野宿するかもしれない。
ブルベの場合、走るだけならもっと小さいサドルバッグでも良いはずだが、実際には自転車旅セットとほぼ同じ荷物を載せることになる。なぜなら、実施場所で前泊するからだ。走行時に不要なものは当日だけコインロッカーに預けるという手もあるが、DNFした場合にわざわざ元の場所に戻って荷物を回収するのがだるくなるので、全部運んでしまった方が楽だ。
走行中に使うものは、トップチューブバッグに収める。スマホ、モバイルバッテリー、財布、イヤホンの充電器、補給食を収めることになる。これはどのメーカーのもだいたい同じ形状なので、RockbrosのSサイズのものメルカリで1400円で調達した。

サイズが長さ21.5cm、幅5.5cm、高さ8.5cmしかないので、上述の小物類を入れたら、他に欲張る余地がない。とは言え、このサイズが絶妙なのだ。長さがこれ以上になると、停車時に股間にぶつかってしまう。幅がこれ以上になると、ペダリング時に膝がぶつかってしまう。高さがこれ以上になると、ねじれ方向の剛性が保てなくなる。この製品は、横の壁がしっかりしていることで、中身が入っていてもいなくても箱型を維持できるのが良い。欲を言えばトップチューブバッグにカメラを入れたいところだが、マイクロフォーサーズ機でも無理だった。リコーGRならギリギリ入るかもしれないが、持っていない。交換レンズが入れられるだけでも良しとしよう。財布は入らないので、自転車用の小さい財布を100均で買おう。

トップチューブバッグの最大の問題は、普通に漕ぐと膝がほんの擦れることだ。これを何万回も繰り返すと、たぶん血が出る。ここで、なぜ擦れるか計算しよう。R7100系のQ-factorが148mmで、自然に足を置くと足の中心はペダル根本から60mmの位置にあるので、スタンス幅は148+60*2 = 268mmだ。車体中心から足の中心までの水平距離はその半分なので134mmだ。車体中心からトップチューブバッグの端までは55/2 = 27.5mmだ。膝とトップチューブが擦れる部分の、大腿骨中心あたりからの水平距離は64mmだ。そうすると、膝関節の上死点における膝中心の車体からの水平距離は91.5mmとなる。134mmから引いた42.5mmだけ、膝中心が足中心よりも内側に入っていることになる。

私は坐骨幅が10cmほどと一般男性の下限レベルなので、股関節幅も下限レベルと考えると16cmほどと考えられる。つまり股関節中心の車体中心からの距離は80mmだ。股関節から膝関節までの距離と膝関節から踏み面までの距離はだいたい同じとすると、134mmと80mmの中間は107mmなので、股関節と足中心の線分よりも膝中心が15.5mmほど内側に入っていることになる。しかし、踏力の重心が足の中心ではなく母指球だと考えると、134mmより30mmくらい内側の104mmが車体中心からの距離になるので、104mmと80mmの中間は92mmとなり、内側への寄りは0.5mmになる。よって、特に内股気味のペダリングをしているわけではなく、むしろ理想的な足運びをしていると言える。つまり、幅が5.5cmのトップチューブバッグを付けて骨盤狭めのサイクリストが普通に漕ぐと、膝が擦れるのは自然だということだ。
トップチューブバッグが上から見て長方形になっているのが不合理だ。よって、文房具のバインダークリップで後端を絞ることにした。分厚いものは前方に詰めれば、収納性もほとんど悪化しない。こんなことで、まったく膝が擦れなくなった。そもそも元々トップチューブバッグがこの形状になっているか、スナップボタン等で後端を絞る機能を備えているべきと思う。Gorixあたりがやってくれることを期待。

洗車なし運用とガラスコート
以前は月に1回くらい自転車を洗車していたが、心を改めて、これからは洗車しないことにした。水をかけて良いことなど何も無いからだ。BBやホイールやヘッドパーツなどのベアリングは、シールで保護されているとはいっても、水を掛ければ侵入のリスクがある。その他の鉄製のパーツは、洗車してから乾くまでの間に錆びが進行するリスクが上がる。そして、水をぶっかけて洗ったとて、駆動系の効率は全く上がらない。チェーンの洗浄と注油だけ、定期的または汚れた際に行うだけにする。それが最も自転車を長持ちさせる。
とはいえ、表面に泥や油がついているなら綺麗にしたくもなる。その際には、不織布で水拭きだけをする。その作業を簡単にするために、ガラスコートを施した。ホイールやクランクを外してから、カーボンフレームの表面にAZのアクアシャインコートを2日かけて4度塗りした。ガラスコートは非常に薄いので衝突による傷を防ぐような効果は期待できないが、拭き取りや靴でのこすれ程度の小キズを防ぐ効果は十分に期待できる。そして泥や油の拭き取りが格段に楽になる。自転車は汚してなんぼだと思っているので、トップコートを重ね塗りしたからとて、ピカピカの状態で維持しようとは全く思っていない。そもそも洗車をしないのだからピカピカで維持できるはずがないし、清掃の頻度もまた収穫低減の法則に従う。重要なのは、メンテナンスコストを下げることと、製品寿命を伸ばすことだ。ガラスコートは、施工が面倒である以外は特にデメリットはないので、やって損はない。

さらに、チェーンと接触してチップ剥げする可能性の高い部位には、ネイル用のトップコートを塗っておいた。具体的には、右側のチェーンステーの四隅と、BBの右側の周囲である。通常のチェーン落ちや変速時の軽いチェーンスラップや整備時の接触程度による衝撃なら、これで大部分防げるだろう。チェーンサック等により、チェーンが落ちた状態でフレーム上で引きずられるような場合には無力だが、その場合は保護フィルムでも駄目で、重量増を伴うチェーンステープロテクタが求められる。しかし、ロングライドでのケイデンス調整に伴う変速では、大トルクをかけたまま変速することは稀で、チェーンスサックがそうそう起こるものではないので、省略した。
なお。例外的に洗車する場合もある、海風や融雪剤を浴びた後だ。塩化ナトリウムや塩化カルシウムは錆を発生させやすいので、その場合は全体に軽く水をかけてから乾拭きする。長野には海がないが、冬期は融雪剤が撒かれまくる。基本的には雪や雨の後では走らないようにしているが、それでもたまに予期せず濡れた場所を走ることはあるので、その後だけは汚れに応じて洗浄の措置を取る。
自転車保険
ブルベに出るには、その当日をカバーする自転車保険に入っている必要があり、事故相手への損害賠償の上限が1億円以上である必要がある。期待値で考えると保険と宝くじは買わないのが最も効率的なのだが、出走に必要なのであれば買わざるを得ない。てことで最も安い商品を探したところ、PayPay自転車保険が月額140円と、楽天自転車保険が月額210円が候補になった。前者はPayPayを入れるのが面倒くさいので避けて、後者を選択した。
ブルベに出走する月だけ保険を買えばいいはずだが、ここでブルベのエントリシステムが立ちはだかった。ブルベのエントリは開催日の1ヶ月以上前に締め切られるので、その前にエントリしなければいけない。そして、エントリ時に保険の証券番号を入力する必要があり、その保険が開催日をカバーしている必要がある。しかし、月払いで保険を購入する際には、購入時に即座に補償期間が発生して、1ヶ月後には切れてしまう。そのことから、年払いするしかないと早合点して、年払い2220円の保険を買ってしまった。これは失敗だった。なぜなら、月払いでも勝手に契約が自動更新されるからだ。月払いでも、1ヶ月早く契約しなきゃならないことにはなるが、申込日と開催日の両方をカバーする可能性のある証券番号を入手できる。年払いにしたのは失態だ。しかも年払いは、満期日の1ヶ月前にならないとその設定を解除できない罠が仕掛けられている。満期を知らせるメールが来ることになっているが、楽天グループからのメールは無視するかスパムフォルダに入る可能性が高い。自分のスケジューラに解約作業を登録しておくべきだ。そうでないと一生無駄に金を毟り取られかねない。ECサイトも保険会社も携帯電話会社もこのようなダークパターンが十八番なので、奴らに搾取されないための自己防衛策を常に考えることが必要だ。2220円なんてのはちょっと良いランチで吹っ飛ぶ額かもしれないが、楽天に出し抜かれたとすると結構イラッとするだろう。
田舎に住んでいると、そもそも道を人が歩いていない。これは比喩ではなく、本当にそうなのだ。渋谷区で1時間走ったら1000人以上の人とすれ違うかもしれないが、東御市で1時間走っても10人にもならない。よって、自転車が車に轢かれる確率はある程度あっても、自転車が人を轢く確率は非常に低い。それなのに都会人と同じ保険料を払うなんて金をドブに捨てるような行為だが、他に方法がないのでどうしようもない。
椅子なしチェアリング
徒歩や自転車やオートバイや四輪車で携帯椅子を運んで景色の良いところに行って座ってまったりするという究極のアクティビティがある。どうやって移動するか、どこに移動するか、現地で何をするかは、特に規定も合意もない。出先で豆を挽いてからコーヒーを淹れて飲むとか、わざわざ湯を沸かしてカップラーメンを食うとか、端から見ると完全に無意味で非合理なことをやっているのだが、当人達がそれで満足なら良いのだ。普通は家じゃないとできないことが出先でできるというところに有能感が発生する。魚屋で魚を買えるのに敢えて釣りをするのと同じだ。私はその自由さに憧れているのだが、冷静になると、別に椅子要らなくね、と思うのだ。そこで、私はチェアリングと同じことを椅子無しでやっている。自転車で適当な場所に行って、土手や木の切り株や石やベンチに座ってまったりするのだ。ある程度太い大臀筋のおかげで、柔らかい椅子がなくても全く問題なく座っていられるし、冷えたり痺れたりもしない。昼寝がしづらいという制限はあるが、あまり昼寝をする質じゃないので問題ない。
現地で何をするかという話だが、私は基本的に散歩をしつつ風景写真を何枚か撮って、あとは適当な場所に座ってKindleで読書をする。カメラはマイクロフォーサーズのE-M5M3で、レンズ交換できるカメラの中では最小最安で、かつ頑丈さに定評がある。こいつにF1.8の軽量単焦点レンズを組み合わせれば、なんとか自転車旅にも持っていけるセットになる。でかいズームレンズを持ち歩くよりも、標準画角の単焦点レンズを付けておいた方が、サッと出してサッと撮ってサッとしまえるので撮れ高が良い。広角画角で撮ってトリミングする方が潰しが効くという考えもあるが、広角はスマホに任せればいい。望遠画角だと自転車と何かを入れて撮るためにはかなり遠くまで歩かないといけない。よって、やはりカメラ専用機に付けるレンズは標準画角がバランスが良い。自転車を停めて散策する時だけは中望遠レンズや広角レンズにも適宜付け替える。
読書している間はチェアリングで正のスコアを稼いでいるとみなすと、旅に失敗という概念がなくなる。特に自転車旅は天候の影響で移動しづらくなるので、「移動しなくても別に良い」という自分ルールを設けることが重要だ。出雲で2日間、旭川で3日間ずっと雨に降られて、図書館やらイオンやらで本を読んで過ごしたことがあるが、なかなか有意義な時間だったと今でも思う。快活CLUBなどの漫画喫茶に泊まると、漫画は夜に飽きるほど読むことになるので、昼間は小説を読みたい。旅にノートPCを持っていってプログラミングしたりブログ書いたりするというのを考えることもあるが、その活動に熱中しすぎて移動しなくなってしまう予感がするので、控えている。旅先で思いついたネタをメモしておいて帰宅してから形にするというのが健全だろう。
私は釣りも好きなので、椅子なしチェアリングついでに海に糸を垂らしたい。しかし、長野には海がない。自転車旅のついでに各地の海岸でライトゲームをやるというのを妄想してはいるが、旅の荷物に釣り道具を加えるとサドルバッグだけでは厳しいので、どうしたものかと悩んでいる。
日々の運動
家が地蔵峠の中腹にあるので、毎日買い物に行くためにスーパーに行って帰ってくると、55分くらいのコースを自転車で走ることになる。行きは400mの標高を下ってほぼ何も力を使わずに走って、帰りは獲得標高400mで平均勾配8%の登坂をする。日常的に走る際にはペース配分など全く考えずに、音楽を聞きながら気ままに走るだけだ。その場合にどうなるかと思って走行ログを記録すると、以下の図のようになった。


心拍に関してはZ1が20.3%、Z2が16.9%、Z3が26.7%、Z4が26.3%、Z5が6.4%という感じだ。パワーに関してはL1が41.5%、L2が16.7%、L3が15.4%、L4が13.8%、L5が7.9%、L6が4.3%という感じだ。下りの区間は運動負荷がほぼないのでパワーがL1やL2の部分の多くはそれを反映している。下りでは運動しなくても心拍数が上がるので、Z2が多いのはそのためだ。そうなると、実際の運動負荷はZ3以上とL3以上が多くを占めることになる。これはロングライドの能力を上げるには負荷が高すぎ、また実施時間が短すぎるということを示している。とはいえ、夕食前にスーパーに行って夕食時間に合わせて調理をするのが目的であって、トレーニングのためにやっているわけじゃない。乗用車やオートバイに乗らないだけで、自分で自分を褒めるべきだ。
ブルベの完走率を最大化するためのベストプラクティスは数値を最優先することなので、私もブルベ本番ではそれに従うつもりではあるが、日常ではあんまり数値を追い求めたくない。サイコンを見ていたら景色が楽しめないじゃないか。数値に縛られたら好きなペースで走れないじゃないか。そもそも、ちょっと疲れることが心地よいのに、疲れないようにするなんて馬鹿みたいじゃないか。逆に、平均速度を気にして疲れ果てるのも馬鹿みたいじゃないか。よって、普段はセンサー類とサイコンは全て外して走っている。サイコンの跡地には方位磁針をつけて、気が向いた方角に走ってから見知らぬ土地を彷徨うのを楽しんでいる。
しかし、ブルベというゲームに挑むなら、態度を改めるべきだ。今後はより頻繁にセンサー類を付けて走って、心拍数やパワーを管理して走る練習もしていくべきだろう。最大心拍数(MHR: max heart rate)とFTPが高ければ疲労管理の難易度が下がるが、MHRは加齢で下がる一方でトレーニングで上げることはできない。パワーより心拍数が上限に来ることが多いので、これは困った問題だ。しかし、MHRを上げることはできなくても、1回の拍動で流せる血流=拍出量を増やすことはでき、そうすると心拍数が上がりにくくなる。安静時心拍数(RHR: resting heart rate)が低いほど、拍出量が高いということになる。日本一周した直後のRHRは52だったが、おそらく今はもっと高くなってしまっているだろう。
FTPを上げるには高めの負荷で走るべきで、拍出量を上げるには長時間走るべきだ。その二つの中間を狙うのがSST(Sweet Spot Training)というやつで、Z3とZ4の間くらいで1時間くらいの運動をする。素人レベルではそれが最も効率が良いとされる。一方で、プロや実業団レベルになると、敢えてL3を避けて、長時間のL2でベースを作って短時間のL4以上で追い込むというポラライズドトレーニングが好まれるらしい。当然私はSSTの方を選ぶことになる。図らずも地蔵峠の中腹に住んでいるので、帰宅時にどうしてもL3で40分くらい漕ぐことになる。週末にロングライドする際にはポラライズドトレーニング的なことをしても良いかもしれないが、L5とかになると苦しすぎて自転車が嫌いになってしまうので、気が向いたらやるくらいで良いだろう。低MHRかつ高RHRかつ低FTPという三重苦でブルベに挑むのもRPGの低レベルチャレンジみたいで面白い。とはいえ、クリアできないと凹むので、RHRとFTPに関しては参加者の平均値くらいには持っていきたいところだ。
「It never gets easier, you just go faster.」というレモン氏の名言がある。トレーニングで速く走れるようになった分だけ速く走るなら、決して楽にはならないという、ガチ勢の宿命を見事に表現している。一方で、速く走れるようになっても必要十分な速さでしか走らないエンジョイ勢は、走り込めばその分だけ、時間あたりの負荷は下がってくる。自分の目標となる走力を手に入れたら、それ以上高めるためのトレーニングは必要なく、その走力を維持する程度の運動を日常生活の中に取り込めば良いだけだ。私の場合、少なくとも麓のスーパーに行って帰るだけの走力を維持しないと、このクソ田舎で生きていけない。自動車に乗れば良いという話もあるが、それをやり始めると転がるように体力が落ちてしまうだろう。
まとめ
自転車旅を快適にして、ブルベの完走率を上げるために、Anchor RE8をカスタマイズした。楕円チェーンリングの導入により、膝を温存したロングライド向けのペダリングがしやすくなった。パワーメータ等のセンサーとサイコンの導入で、疲労と代謝を厳密に管理しながらの走行が可能になった。中華カーボンシートポストの導入で、軽量化と衝撃吸収性の向上が図れた。ボトルケージをつけて、ライト2個と尾灯2個をつけて、ツールキットも準備して、バッグ類も取り付けて、保険にも入った。
高価な自転車の購入に多大な調査コストを投入するのは分かるにしても、数千円や数百円のパーツの購入でそれをやるのは不合理に思われるかもしれない。しかし、知識は再利用できるので、償却コストで考えると見方が変わる。自分という人的資本への投資だと捉えても良いだろう。数百円のパーツでも製品仕様を見ておく癖をつけておくことが、消費者剰余を最大化させると思っている。まあ、買い物は悩んでいる間が一番楽しいという、趣味化した側面もある。これもまたゲームなのだ。そもそもロングライドやブルベが非合理な活動=遊びなので、その中で合理性を追求したところで非合理の枠組みからは逃れられない。それにもかかわらず合理性を追求するのは、ゲームでハイスコアを追求したり、スポーツで勝利や記録を追求したりするのと同じく、内発的動機づけだ。なぜ無駄に長距離を走る必要があるのかという問いは、なぜ無駄に生きる必要があるのかという問いと同じだ。必要などない。そうしたいからそうするに過ぎない。
それにしても、カスタマイズに金と時間を使いすぎた。とはいえ、私が実現したい装備は全て揃っているので、しばらくは消耗品(タイヤとオイルと電池など)以外は買わなくていいはずだ。「現状の装備が最善であり、それ以上はない」という感覚に到達すると、妙な満足感がある。あとは乗るだけだ。これで遅いなら自分の脚力が不足しているせいだ。これで不快なら無い物ねだりをしているだけだ。切り分けができていると意思決定が簡単になる。
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