Magene PES P515導入
パワーメータMagene PES P515をAnchor RE8とブロンプトンにつけて問題なく使えたという話。スパイダー型なので疑似両足計測だが、総合的なパワーの計測値としては片足型よりも正確なので、ペース管理には十分な性能だ。また、パワーメーターを使った疲労管理や補給戦略についても改めて考えた。

購入の背景
4iiiiのPrecision 3というパワーメーターを使っていたのだが、突然壊れて電源が入らなくなった。シマノ純正のクランクに後付けで溶接するタイプであり、普通に漕いでいるだけでギシギシ言うので不安に思っていたが、懸念が現実になってしまった。45800円もしたのに、1年ちょっとしか持たなかった。牛丼100杯の価値は無かったと言わざるを得ない。
ロングライドやブルベにあたっては疲労管理が非常に重要だ。心拍数センサーだけでもある程度のペース管理はできるのだが、心拍数はパワーに対して遅行指標であり、心拍数が上がリ過ぎたと分かった時には既に乳酸が生成され始めていることになる。よって、走行中に現在のパワーを知ることは疲労管理にとても役立つ。また、FTP(機能的作業閾値)、NP(正規化パワー)、TSS(トレーニング負荷値)などのコーガン式の管理指標を使うにはパワーを知ることは必須となる。消費カロリーから補給戦略を立てるのにもパワーを知るのは役立つ。
純粋にサイクリングや旅を楽しみたいのなら、心拍数もパワーも知らなくて良い。むしろサイコンなんて付けない方が楽しめる。ただし、健康維持やトレーニングとして自転車に乗るなら、話は別だ。スコアを見なくてもシューティングゲームは楽しめるが、スコアが見られるともっと楽しい。同様に、運動の後にサイコンが示す各種の指標を見て振り返る楽しさというのもある。運動生理学的な観点では速度やケイデンスよりも心拍数とパワーを知ることが重要だ。
ということで、高くてもパワーメーターは欲しい。4iiiiやStagesのようなクランク後付け方式のものは導入が楽だが壊れやすいことが分かったので、別方式のものが良い。となると、ペダル型かスパイダー型かになるが、私はフラットペダル派なので、ペダル式は駄目だ。よって、スパイダー型しか残らない。
スパイダー型パワーメーターは、クランクとチェーンリングの接合部である4本足のスパイダーの歪みを測定する。つまり、左右のクランクアームのどちらから力が伝わって来ているかは区別せず、左右の総合的なパワーを計測している。クランクアーム型よりもチェーンに近い位置で計測するため、両足のクランクアーム型よりも総合的なパワーを正確に測定できる。もちろん、片足クランクアーム型で測定値を2倍しているよりも遥かに正確だ。頑丈さの観点でも、スパイダーと測定器が一体化した構造であることは有利そうだ。
ただし、両足の入力を別々に測定しているわけではないことには注意すべきだ。スパイダー型は左右バランスの値を算出するが、それはあくまでクランク角によって右足パワーゾーンと左足パワーゾーンを分けているだけに過ぎない。実際には右足パワーゾーンの入力は右足の踏み脚と左足の引き脚の総合だが、それを全て右足のパワーとして計上している。極論すると、右足だけで漕いで踏み脚と引き脚で完全に同じ力で回せば、左右バランスは1:1として計上されてしまう。ゆえに、左右バランスの値はあまり信用できない。さらに言えば、ペダル円滑性はもっと信用できない。本来のペダル円滑性は引き脚区間も含めてクランク全周の平均トルクを出して、それと最大トルクとの比率を出すものだが、引き脚区間を全く測定できていないのであれば、測定内容が根本的に違うということになってしまう。そして、引き脚区間の負のトルクの計測が必要なトルク効率に関しては、それっぽい代替値すら出せない。とはいえ、私がパワーメーターを導入する最大の目的は疲労管理なので、細かいペダリングダイナミクスの値よりも、総合的なパワーが正確に分かる方が重要だ。
製品選定
スパイダー型のパワーメーターとしては、Quarq、Rotor、Power2Max、Sigeyi、Xcadeyなどのメーカーの製品があるが、高コスパ製品として最近出回っているMageneのPES P515を選んだ。まず何より、安い。楽天の最安値で40439円だ。

P515の前の製品であるP505というのもあって、そちらは新品で34400円、中古30000円とかで出回っているが、今回は多少高くても新型の方を新品で買った。パワーメーターは故障しやすいので、その場合に保証が利く方が良い。また、新型の方が重量と精度と電池持ちが若干良い。
元々使っているシマノの150 R7100のクランクセットを変えた場合にどうなるかを事前に検討していた。まず、Anchor RE8のBBはBB86規格であり、PESシリーズが元々対応している。また、PESシリーズはホローテック2(シェル幅86.5mm、アクスル系24mm)互換を謳っているので、R7100もその一部であるから問題ない。クリアランスを調べるための型紙が公開されていたので印刷してあてがってみたところ、問題なかった。

R7100のQファクターが148mmのところ、P515は147mmに狭まる。数ミリ狭くなる分には、ペダルにワッシャーを噛ませて広げれば対応できるが、1mmの違いなら何もしなくても良いだろう。フレームとクランクアームの間のクリアランスはR7100の時点で十分であり、P515のアームが特段分厚いということもないので、問題ない。
チェーンリングの互換性が最大の懸念点だ。PESシリーズはシマノ11速の純正チェーンリングはつけられるが、12速の純正チェーンリングは実質つけられない。チェーンラインが2mm外側に広がってしまうらしい。おそらくアウターチェーンリングの形がスパイダーに合わなくて外側に浮いてしまって、アウターチェーンリングとインナーチェーンリングととの間隔が開きすぎて、まともに変速できなくなるのだろう。そもそも私は純正チェーンリングを使っておらず、O.Symetricの52Tを削ったものとSugino Cycloid 32Tをつけているくらいなので、アウターが浮くことはない。R7100のチェーンラインは44.5mmだが、P515に専用チェーンリングを付けた場合のチェーンラインや45.0mmになる。この0.5mmの違いは、スパイダーの爪とチェーンリングの間に噛ませるスペーサを調整することで吸収できる。
R7100のクランクアームのみの重さが549.5gであることからすると、P515の625gにすると75.5g重くなることになる。とはいえ、シマノのパワーメーター付きアルテグラクランクR8100-Pは610gなので、P515がとりわけ重いわけではない。

設置
製品が届いたので、まずはブロンプトンに設置してみた。ホローテック2のBB用の工具を使ってクランクアームを組み立てる手順になっていて面食らったが、ブロンプトンのホローテック2化の際にその工具を買っていたのですんなりと作業できた。BBシェルにTokenのTK878EXを使う場合、右ワンに2.5mmのスペーサ2枚噛ませて右クランク全体を合計5mm外側にずらすと、Qファクタの左右対称性が整う。


シマノのクランクと違って、固定ボルトが1本だけなのと、脱落防止ピンの代わりに固定ボルトの裏側のOリングで固定する方式になっている。素直にシマノの方法を踏襲できないのは特許の関係だろう。

外周円を2方向から締め付けて接触部の大部分で圧力をかけられるシマノ方式に対して、ボルト1本締めだと圧迫できる部分が偏るので、比較すると外れやすいことは明白だ。シマノ方式だと位置決めキャップにクランクを固定する役目を持たせていないので樹脂製で締め込みトルクも極小(素手で回すくらい)だが、1本締め方式だと位置決めキャップにも頑張らせなきゃいけないので、金属製になっていて、それなりのトルクで締め付ける必要がある。よって、取り付けマニュアルにあるように、位置決めキャップを軽いトルク締めてから、固定ボルトをしっかり締めた上で、位置決めキャップを締め増しして、さらにOリングを締め付けて膨らませて位置決めボルトが緩みにくくするという手順を厳密に守る必要がある。ダサい機構だが、シマノの特許が切れるまでは仕方がない。
Anchor RE8にもすんなり設置できた。クリアランスの問題は全くなかった。チェーンラインが変わった分、FDのヨー角を若干調整したら、変速も全く問題なく決まるようになった。

チェーンリングの装着方法も、R7100と全く同じ構成で問題なかった。Anchor RE8においては、インナーはスパイダーの爪の内側にそのままつけて、アウターとスパイダーの爪の間には1mmのスペーサを噛ませる。O.Symetricのチェーンリングはシマノ純正より厚みが小さいので、スペーサによってFDの移動量と合わせる必要がある。一方で、ブロンプトンでは足でチェーンを押して変速しているので、スペーサは合っても無くてもよい。無い方がアウターとインナーの距離が減ってチェーンリングが理想的になる。ロードバイクに付ける際には、スプロケの段数が多いので、アウターとスパイダーアームの間に1mmのスペーサが必要になる。でないと、インナートップ付近でアウターとチェーンが接触してしまう。
使用感
クランクアームとしての剛性はR7100とほとんど変わらない。というか、クランクアームの剛性を語れるほどの大トルクを私はかけられないので、どうでもいい。車重が重くなっているのも、Tシャツ1枚より小さい違いなので、気づかない程度だ。Qファクターの違いも、全く体感できない程度だ。見た目も悪くない。PESのロゴが白文字で目立つのが気になるが、そのうち汚れて目立たなくなるだろう。
充電は専用の充電ケーブルを使う。満充電で330時間も持つので、時速20kmで走ると6600km持つことになる。Di2のバッテリーは1000km持つと言われ、変速回数依存でもっと長く持つ可能性は高いが、6600kmも持つわけじゃない。つまりDi2を充電する際に同時に充電すれば、P515のために充電時間を設ける必要はない。ブルベや旅行などの際にも、出かける前に充電しておけば、道中で充電が必要になることはまずない。

使い始める前に、Magene Utilityというスマホアプリで接続して、アクティベーションを行う必要がある。キャリブレーションはアプリから手動でもできるが、オートキャリブレーション機能があるので、手動でやる必要はないらしい。パワーメータは温度にって測定値が変わるのが宿命だが、オートキャリブレーションが温度も加味するので、乗る度に何かをする必要もない。
パワーメーターとしての精度の良し悪しは、同時に測定する比較対象がないので、何とも言えない。いつもの道をいつも通りの感覚で走った時に、4iiiiのパワーメーターとあまり変わらない値が計上されているとは思うが、その感覚は全く当てにならない。片足測定のクランク型に比べるとスパイダー型のサンプリングレートは実質2倍になるので、即値のパワーも、3秒平均パワーも、より安定的な値が出てくるのは明確な美点だ。
左右バランスとペダル円滑性が推定値に過ぎないことは既に述べたが、左右バランスについては推定値であってもそこそこ参考になる。いつもの地蔵峠のコースを登ったところ、私の左右バランスは左54:右46ということで、左が明確に強いことが分かった。右の引き足がめちゃ強いから左の値が大きく出ているという可能性もゼロではないが、常識的に考えてそれはないので、左の踏み込みが強くて右の踏み込みが弱いと考えるのが妥当だ。どのコースを走ってもこの傾向には再現性がある。おそらく無意識に右膝の古傷を庇っているのだろう。木刀素振りで左脚での蹴り出しをするのも関係しているかもしれない。楕円チェーンリングの導入で右膝の痛みはほぼ克服できたので、今後は気が向いた時に左右バランスの補正に取り組みたい。走行中に確認する場合、左右バランスの即値は変動が大きいので、3秒平均左右バランスの方が有用だ。しかし、走行中に無理やり左右バランスを50:50に合わせようとして右を強く踏み込むと、右膝を痛めるリスクが高い。よって、ブルガリアンスクワットなどで右脚を独立して鍛える必要がある。右脚の筋肉をつけて無意識にバランスが取れるようにすべきだ。その上で、走行時に膝を不必要に庇う癖を軽減すべく、クランク角1時くらいで左手(踏む方と逆の手)を軽く引きつつ右脚に荷重をかけて、右膝に左膝と同等のピークトルクをかける訓練もする。ただし、それで故障しては意味がないので、ギアを軽くして短時間(1日10分程度)だけ行う。それ以外の時に左右バランスを見ると調子が狂うので、サイコンの画面に表示しないようにしている。そもそも論として、左右バランスが50:50でないといけないわけではないのだが、さすがに54:46は差が大きすぎる。52:48くらいに収まれば良いと思っている。
1年前にブロンプトンに4iiiiの左クランクパワーメーターを付けて地蔵峠を1時間登って出した平均パワー220Wを自分のFTPとして認識していたが、それは53:47の比率を50:50とみなして2倍した値であり、真の値よりも上振れしていたことになる。左右バランスが当時も54:46だったと仮定すると、220/56*50=196.43Wが真の値の推定値だ。FTPを過大評価していたことになるが、同じパワーメーターによる過大評価の現在パワーでペース管理をしていたので、左右バランスはトルクやケイデンスによって変化するとはいえ、実用上の弊害は少なかった。ただし、他人のパワーと比較したり、自身の心拍数との関係を考える際には、パワーを12%も過大評価しているのは問題になる。ともかく、FTPの真の値を早急に知りたいと思ったので、同じくブロンプトンにP515をつけて地蔵峠を1時間登って計測した。1時間実走の平均パワーは223Wだった。1年経って少しは進化しているらしい。標高900mから1732mまで登りながらの計測なので酸素供給量がボトルネックになって下振れしている可能性はあるが、上振れすることは定義上ない。差し当たっては自分のFTPは223Wとみなすことにする。近いうちに、Anchor RE8にビンディングペダルを付けて真面目に再計測しよう。
ペダル平滑性は登坂区間だと28%くらいで平坦区間だと25%くらいが算出されるようだ。ペダル平滑性ほとんど元々あまり役立たない指標であり、スパイダー型で得られる推定値はさらに信頼できないので、どうでもいい。トルク効率が見られなくなったのは、機構上仕方がないとは言え、少し寂しい。実走でトルク効率を追求することはないが、その気になればトルク効率を100%にできる引き足の技術を維持できているかどうかを確認するためには有用な指標であったし、退屈な登坂のトルク効率を眺めるのが気分転換にもなっていた。サイコン上でトルク効率を表示していた場所には今は左右バランスを表示している。
4iiiiが壊れてからパワーメーター無しで数週間生活していたし、それで200kmブルベにも出たが、やはり心拍計だけだと踏みすぎてしまう。例えば心拍数を135bpmに収束させるべく踏力を調整しても、125bpmから145bpmの間を行ったり来たりするような変動が避けられない。一方で、パワーメーターが示す3秒平均パワーを見て150W前後に収束させるべく踏力を調整すると、心拍数は134bpmを中心とする前後3bpm程度のずれに収まる。そして、後述する正規化パワーは30秒平均パワーから算出されるので、3秒平均パワーの収束に努力すると、平均パワーと正規化パワーは1Wのずれもなく一致させられる。スパイダー型になったことでパワーの精度が上がっていることは、疲労管理のゲームでハイスコアを目指すにあたっては大きな利点だ。ただし、パワーを一定値に収束させるには1秒毎にサイコンを確認する必要があるが、そればっかりに気を取られると風景を見る楽しみと安全が損なわれてしまう。ブルベの難関コースで断固完走を目指すならサイコンばかり見続けるのも選択肢の一つだが、完走に余裕があるブルベや通常のロングライドでは、地図を確認するのと同程度の頻度でパワーもチラ見すれば十分だろう。
ブロンプトンとAnchor RE8の登坂での走行効率
ロードバイクに比べるとブロンプトンは車重が重く路面抵抗も大きいので、舗装が悪い道の登坂性能は悪い。じゃあどの程度悪いのかと思って、ブロンプトンとRE8で同じコースを同じパワーで走って比べてみた。2kmで平均勾配7.7%の坂を150W前後に合わせて登った。舗装状況は農道なのでかなり悪く、ひびだらけの路面だ。かなり気を使ってパワーを合わせ、2回の試行とも、平均パワーも正規化パワーも150Wになったので、この結果の精度は高い。結果として、ブロンプトンの平均速度は6.7km/hで、RE8は7.0km/hだった。つまり、ブロンプトンの方が4.4%遅かった。


実際にブロンプトンが遅いことは確認できたが、差が4.4%程度に留まったのは意外でもあった。勾配7.7%かつ荒い舗装という悪条件でも、ロードバイクにあっという間に置いていかれるというほど遅くはない。同じパワーで走っていればジワジワと遅れることになり、明確な不利ではあるが、自転車旅やブルベでこの速度差が致命的な問題になるほどではない。ギアが足りなくてケイデンス管理(トルク管理)がしづらいという問題の方がでかそうだ。
Anchor RE8のハンドル握り位置毎の平坦路での走行効率
ハンドル握り位置によって乗車姿勢が変わるが、それによって走行性能がどう変わるかも調べた。海野宿の630mの平坦路(勾配0.6%)を150W前後に合わせて東向きに走った。舗装はきめ細かいものではないが、ひびがない比較的良好なものだ。風は肌で感じる程度の逆風であった。上ハン(ブラケット)を握った直立気味の姿勢と、下ハンを握った伏せ気味の姿勢と、DHバーを握った縮こまった姿勢の3通りを試した。かなり気を使ってパワーを合わせ、3回の試行とも平均パワーは149Wになった。結果として、上ハンは平均19.2km/hで、下ハンは平均20.5km/hで、DHバーは20.9km/hだった。



測定結果は普段体感しているのと合致している。ただし、この実験は試行毎の風の具合や乗車姿勢やペダリングの微妙な違いによる誤差が大きいので、傾向を掴む程度の意味合いしかない。20km/h程度の脱力した速度域でも、上ハンと下ハンで明確に速度が違うことは分かる。DHバーは下ハンよりも若干速いだけだが、上半身が楽なので、空力的に最善の姿勢を長く続けていられる。「30km/h未満の速度域ならDHバーの効果はない」とかいう人もいるが、ないってことは流石にない。具体的な効果を測定するには、ほぼ無風の日に数km以上の周回コースを走る実験を追加でするべきだろう。
ブロンプトンのハンドル握り位置毎の平坦路での走行効率
私のブロンプトンは、Sハンドル(ストレート)よりもさらにハンドル位置を低く遠くするために、ライザーバーを上下逆さに付けた通称Fハンドルを装備している。そのおかげで、一般のクロスバイク並の前傾姿勢を達成できているが、それでもロードバイクに比べると空気抵抗は大きい。よって、ロングライドではDHバーをつけて空気抵抗の低減を図っている。ブロンプトンにDHバーというのは珍しい組み合わせと言われるが、通常の乗車姿勢が直立気味になるブロンプトンでこそ、DHバーの効果は大きい。
それを実証すべく、上述と同じ海野宿のコースを走ってみた。この日はほぼ無風だった。通常ハンドルを握った直立気味の姿勢と、DHバーを握った縮こまった姿勢の2通りを試した。2回の試行とも平均パワーは151Wになった。結果として、通常ハンドルは平均22.5km/hで、DHバーは平均23.9km/hになった。


この結果も普段体感しているのと合致している。平坦な舗装路の場合、逆風でロードバイクに乗るよりは、無風でFハンドルのブロンプトンに乗る方が速い。そして、そのFハンドルよりも、DHバーを握った方が明確に速い。151Wの負荷で6.3%も速く、24km/h近くで巡行できるというのは、小径車としては快挙だろう。おそらく、空気抵抗の観点では、下ハンのロードバイクとDHバーのブロンプトンは同じくらいか、もしくは後者の方が低いのではないか。実際、ブルベでロードバイク勢に混じってブロンプトンで走る際に、順風で高速走行になると離されるが、逆風で低速走行になるとむしろこっちが優勢になる。ハンドルの前にバックパックをぶら下げる方式は、カウルっぽい効果があるのか、意外に空力が良いっぽい。

ここで何が言いたいのかというと、登坂抵抗や空気抵抗を知るのにパワーメーターが役立つということだ。素人の実験なのでサンプル数が少なく誤差も大きいが、実際の車体と実際の運転者と実際のコースで測るので、自分がその結果を利用するにあたって外的一般化によるバイアスがないというのが利点だ。とある機材が自分に本当に役立つのかどうかは自分で実験してみないと確かめられない。
コーガン式とパワー
コーガン式とは、コーガン氏らが著したパワートレーニングバイブル(training and racing with a power meter)という本で紹介されている方法で、1時間持続可能な平均パワーの最大値であるFTPを基準にした各種の管理指標を活用して自転車のトレーニングを行う手法だ。パワートレーニングの用語を使って議論するなら文字通りバイブルの扱いなので、これを読まなきゃ始まらない。

パワーとは、仕事率である。仕事率とは、1秒間で行われる仕事の量である。仕事とは、自転車の文脈では、ペダルのトルクと回転数の積である。トルクとは、ペダルの回転方向(接線方向)に与えられる力である。スパイダー型パワーメーターは、スパイダーの歪みからトルクを推定する装置である。ここで重要なのは、ペダルにかかる力で回転軌道の接線方向以外の成分はパワーに反映されないということだ。よって、ペダリングスキルが低いと、筋肉の発揮張力あたりのパワーが低くなるということだ。よって、コーガン式で想定される標準的なペダリングスキルよりも高いスキルを持っていれば、パワーを出している割には消費カロリーが少なくて楽に感じるだろうし、逆であれば、パワーを出していない割には消費カロリーが多くて疲れると感じる可能性がある。とはいえ、自転車の文脈において、1ジュール(約0.24カロリー)の仕事あたり1カロリーを消費するというカロリー効率24%の簡便法を当てはめるのは、ほとんどの場合で問題ないだろう。カロリー効率24%というのは、ペダリングスキルが比較的高いことを前提としている値だが、シッティングかつL2負荷かつ75rpm以下の低めのケイデンスで走るロングライド勢なら実現できる。
ロングライドでは引き脚をゼロトルクにすれば十分だという話を以前書いた。ゼロトルクの引き脚は脚を持ち上げる内部仕事をしているのにパワーメータ上のトルクとして計上されないとも書いたが、それはクランク角毎に分析する手法の弊害にすぎない。持ち上げた脚をそのまま重力で下ろした際に踏み脚のトルクとして計上されるので、クランク全周のトルクを集計したパワーを見る限りにおいては、引き脚の仕事は正当に評価されている。同じ理屈で、スパイダー型パワーメーターが引き脚の正のトルクや負のトルクを逆の脚のトルクと合算してしまうことも、全体のパワーを見る上では問題ない。簡易的かつ短期的に自分のペダリングスキルの増減を見たいなら、ペダリングの意識を変えつつパワーを一定にして走って平均心拍数を見るとか、逆に心拍数を一定にして走って平均パワーを見るとかが考えられる。ただし、他人とは比較できないし、心肺機能が体調や成長によって増減するので、長期的な比較も当てにならない。
いずれにせよ、パワーメーターがあれば、以下の指標が分かるので、トレーニングや実走の疲労管理が簡単にできるようになる。
- パワー : トルクと回転数の積。その瞬間にどれだけ頑張っているか。
- FTP(functional threshold power) : 1時間持続可能な平均パワーの最大値。1時間のレースならこの付近を出すことが最善。ロングライドならその75%以下に抑えるべき。また、ロングライドの能力を上げたいなら75%以下のパワーで長く走るべき。
- AP(average power) : 平均パワー。走行中のパワーの全サンプルの平均。
- NP(normalized power) : 正規化パワー。30秒平均パワーの4乗の平均の4乗根。パワーの増減が激しいほどにAPより大きくなる。真の運動強度を示すとされる。
- IF(intensity factor) : 強度係数。NP/FTP。主観的な運動負荷を表す。インターバルトレーニングなら高くなり、ロングライドで一定のパワーで走るなら低くなる。
- VI(variability index) : 変動係数。NP/AP。一定のペースなら1に近づく。ロングライドならできるだけ低くしたい。
- TSS(training stress score) : トレーニング負荷値。IFの2乗と走行時間と100の積。
- CTL(chronic training load) : 慢性的トレーニング負荷。昨日のCTLと今日のTSSを0.97647:0.02353の比率で加重平均。
- ATL(acute training load) : 短期トレーニング負荷。昨日のATLと今日のTSSを0.86687:0.13312の比率で加重平均。
- TSB(training stress balance) : 好調さを表す。CTL-ATL。
ロングライドやブルベの実走においては、TSSをいかに低く抑えるかが戦略的目標になる。そのためには、IFと走行時間を下げる必要がある。IFを下げるにはNPを下げる必要があるが、走行時間を下げるには速度を上げる必要があるのでAPを上げる必要があり、それらを両立させるにはVIを下げることが最善となる。つまり、一定のパワーを出し続けることが最善であるということが直感的に理解できる。坂道でも向かい風でもパワーを不必要に上げずに、速度を気にせず淡々と走るカメこそが最強なのだ。NPが30秒の移動平均から算出されているということは、代謝の切り替わりが30秒未満の時間では起きにくいこと意味している。10秒くらいパワーが出すぎていたとしても、次の10秒で目標値より若干下げて、次の10秒で目標値に漸近するように心がければ、NPとAPの乖離は抑えられる。こんなに分かりやすいモデル化をしたコーガン博士はマジ偉大だ。パラメータとしてパワーと時間しか取っていない単純なモデルでここまでの分析ができるとは。理屈を知らないで本能的に走っても十分な走力があればブルベを走りきれるだろうが、貧脚サイクリストこそパワーメーターと理論を駆使して、より遠くに楽に行けるようになりたいものだ。
IFを下げるにはFTPを上げるという方法もあり、それには日々のトレーニングが重要になる。件のバイブル本が言うには、7つの負荷レベルの中で伸ばしたいレベルの負荷を重点的にやるべきだ。FTPを上げること目的としてトレーニングの時間効率を最大化するには、FTPのちょっと下の強度であるSST(sweet spot training)と呼ばれる負荷で多く乗れということになる。一方で、十分なトレーニング時間を取れるなら、L2を長くやりつつ、L4以上の高強度を短時間取り入れるポラライズドトレーニングという手法もある。いずれにせよ、速いカメになるためには時にウサギを演じることも重要ということだろう。しかし、ロードレースではなくロングライドの快適性やブルベ完走を目的にした場合、FTPの体重比は3倍で足りると言われる。FTPが高ければ高い方が良いのは当然だが、閾値以上は収穫低減になる。レースではないので、そこそこ速いカメであれば十分で、めっちゃ速いカメである必要はない。体重3倍のFTPでのL2パワーで淡々と走れば制限時間はクリアできるようにブルベは設計されている。それを達成し維持できるようになったなら、あとはひたすらL2で乗り込んで、脂質利用の効率を上げて脂質適応(fat adaptation)を高めることが完走率を最大化するのではないか。
FTPを測るのには様々な方法がある。その中でも、5分間の全力走を含むウォームアップで無酸素容量を枯渇させてから、本番として20分全力走を行ってその平均パワーを見るという方法が広く行われている。ただし、この方法だとスプリンター型の人はFTPが過大評価される可能性がある。また、ウォームアップ部分をサボって測定してもFTPが過大評価される。よって、私は1時間の実走で測定することにしている。その測定値はFTPの定義そのものなので、全力が出しきれずに過小評価されることはあっても、過大評価されることはない。SSTトレーニングの延長としてたまにFTP測定をするのが良いとされるが、正直全然やりたくない。FTPの負荷で1時間も走るのは、肉体的および精神的な疲労が大きすぎる割にはトレーニング効果が薄いので、頻繁にやるべきじゃない。しかし、ロングライドで適切なペース管理をするにはFTPの把握が不可欠なので、嫌でもたまにはやるべきだ。限界近くの辛さを知っていると、平地巡行のL2負荷はもちろん、登坂でL3になったとしても、なぜか楽だと感じてしまう。
コーガン式のパワーゾーニングと私の今のFTPの223Wを加味すると、以下のゾーニングが得られる。167Wまでのパワーなら息を切らさずに長時間走り続けられるというのは、実感とも合っている。
- L1(回復走) : 223 * 55%まで = 122.7Wまで
- L2(有酸素持久走) : 223 * 75%まで = 167.3Wまで
- L3(テンポ) : 223 * 90%まで = 200.7Wまで
- L4(乳酸閾値) : 223 * 105%まで = 234.2bpmまで
- L5(最大酸素摂取量) : 223 * 120%まで = 267.6bpmまで
- L6(無酸素運動能力) : 223 * 150%まで = 334.5bpmまで
- L7(神経筋パワー) : 上限なし
TSSが150までなら1晩で回復するとされ、それ以上なら休息日を要するとされる。しかし400kmブルベのTSSは800以上にはなる。600kmブルベにおいて、5時間程度仮眠できたとしても、肉体的な全快は望むべくもない。そうなると、TSS1200くらいの疲労に耐えられる体力をつけることが望ましい。そのような疲労耐性という意味での体力を如実に表すのがCTLであり、それは過去42日間のTSSの加重平均だ。競技者の最適なCTLは100から155らしいが、競技者ではないなら100でもオーバースペックだろう。TSS150のトレーニング日とTSS50のアクティブレスト日を繰り返すとCTLは100に収束する。私の場合、自宅のある地蔵峠中腹から頂上まで登って降りて麓に買い物に行って帰るとTSS150くらいになり、ただ麓に買い物に行って帰るとTSS50くらいになる。ここ1ヶ月くらいそれをやっているので、CTL80は越えていると思う。おそらくこの値はブルベ参加者の中でも高い方なのではないか。
ブルベ本番前にはTSBを上げる必要があり、それにはATLを下げる必要があるので、7日前から負荷を徐々に下げるテーパリングを行うのが望ましいとされる。しかし、私は自走で現地に行ってしまう癖があるので、テーパリングは結構悩ましい問題だ。300kmまでならあまり気にしなくても行けそうだが、400km以上では自走現地入りは控えよう。
補給とパワー
ブルベでの走行時には、平均パワー150Wを目指すとしよう。L2上限の167Wよりもかなり低いが、多少上振れしても過負荷にならないための余裕が必要だ。実際には下り坂で空走したり信号周辺で出力を出せなかったり集団に律速されて出力を出せなかったりするだろう。また、登坂では一時的に200W近くを出さなければならない場合もあるだろう。とはいえ、走行時にはできるだけ150Wに近いパワーで走るように努力する。結果として、おそらく平均パワーは140Wくらいになり、正規化パワーは155Wくらいになり、VIは1.1くらいになるだろう。この実現はパワーメーターとサイコンがあれば難しくない。
平均パワー140Wかつ平均速度23km/hで走行すると仮定しよう。その場合、50km走るのに2.17時間かかり、1093.68kJの仕事をし、身体はおよそ1093.68kcalのエネルギーを使うことになる。経過時間は信号停止やPCでの所作を含めてざっくり2.5時間としよう。1日の基礎代謝を1600kcalとすると、2.5時間分は166.66kcalだ。運動と基礎代謝のエネルギーを足すと1260.34kcalとなる。L2負荷の脂肪代謝系で脂質利用率60%だと仮定すると、糖質で賄うエネルギーは40%の504.13kcalになる。1時間で吸収できる糖質は最大300kcalとすると、2.5時間だと最大750kcalを吸収できるので、これは栄養学的に余裕があるペース配分と言える。
カーボローディングをして2000kcal分のグリコーゲンが貯蓄されていると仮定する。出発1時間前に朝食を食べておけばさらに余裕が出るが、ここでは計算に入れない。また、以前述べた特性ドリンクを50km走るごとに1本飲み、それで180kcalを摂取するものとする。残りの324kcalくらいが、50km毎の赤字となる。300kmすなわち赤字1944kcalまでなら絶食でもギリギリ走れる計算になる。敢えてリスクを取る必要はもちろんないので、50kmごとにオニギリ1個170kcalを摂取すると仮定する。その場合には50km毎の赤字は154kcalなので、200kmの赤字616kcalはもちろん、300kmの赤字924kcalや400kmで赤字1232kcalになってもまだ余裕がある。600kmの赤字1848kcalだとギリギリになるが、600kmの場合は途中の仮眠休憩時に糖質をしっかり摂取することだろう。
ゆえに、平均パワー140Wに抑えて走るなら、走行時の補給は「50km毎に特性ドリンク1本とオニギリ1個程度」というのがブルベでの補給の基本戦略になる。PCはだいたい50km毎に出てくるので、PC毎にドリンクの作り直しとオニギリ1個の購入というパターンで行ける。完走確率の最大化という観点では胃腸の負荷は下げた方が良いので、高負荷で走ってパスタやらうどんやらを食うのではなく、低負荷で走ってオニギリだけを食うのが最善だ。
この補給の話にFTPが一切出てこないことが重要だ。つまり、この戦略は個人の能力に依存しない。強いて言えば平均パワー150WをL2負荷として継続して走れる能力(最低でもFTP200W)を前提とした計算だが、ブルベに出る層なら多くの人はそれを満たしているだろう。そして、FTP200W程度のブルベ初心者であっても、FTP300W超えの猛者であっても、胃腸が特段強いわけでないなら、150W周辺を目標として淡々と走り、結果的に平均パワー140Wくらいになるのが無難ということになる。1時間最大300kcalの糖質摂取という制限による計算上の上限平均パワーは220Wくらいになるだろうが、胃腸の限界を試すのはリスクが高すぎる。
心拍数ゾーニングの再考
MHR法(max heart rate: 最大心拍数法)による心拍数ゾーニングだと、トレーニング結果で拍出量が増えてもそれが反映されない。最大心拍数は加齢によって下がる一方なので、L2を多めにやって拍出量を上げることで心拍数を上がりにくくする必要がある。それでも、MHRだけで判定するとゾーンが高めに出てしまう。最大心拍数178bpmからMHR法でゾーニングすると、以下のようになる。
- Z1(回復走) : 178 * 60%まで = 106.8bpmまで
- Z2(有酸素持久走) : 178 * 70%まで = 124.6bpmまで
- Z3(テンポ) : 178 * 80%まで = 142.7bpmまで
- Z4(乳酸閾値) : 178 * 90%まで = 160.2bpmまで
- Z5(最大酸素摂取量) : 上限なし
トーキングテスト(楽に喋りながら運動を続けられるか)の主観評価ではZ2の上限が124bpmというのは低すぎる。135bpmの間くらいのような気がしている。そもそも、MHR法は運動をほとんどせずにRHR(resting heart rate: 安静時心拍数)が65とか75とかある人向けの簡便法なので、運動習慣がある人が使うべき指標じゃない。それなのに各種サイコンやスマートウォッチでデフォルト的な扱いなのは、年齢だけ入力させればMHRの推定値が自動的に決まって、あとはCHR(current heart rate: 現在心拍数)だけ測定すれば運動強度が出せるという分かりやすさが理由だろう。
MHRとRHRを両方加味する方式として、カルボーネン式というのがある。HRR法(heart rate reserve: 予備心拍数法)とも言う。生きている以上、心拍数がゼロになることはなく、安静時心拍数が最低心拍数なのだから、そこから最大心拍数までの変域の中での現在心拍数の割合を調べた方が負荷が分かりやすいという考え方だ。寝床に心拍数センサーを持ち込んで起床時に測ってみたところ、私のRHRは52bpmであった。カルボーネン式に基づく運動強度は、(CHR - RHR) / (MHR - RHR)となる。この値を%HRRと呼ぶが、それに閾値を設けてどうゾーニングするかは別問題だ。
IGPSPORTのアプリはHRRのゾーニングの自動計算をサポートしているが、そのデフォルトのゾーニングは以下に示すダニエルズ式のランニング用のものだ。ランニングは自転車よりも心拍数が高くなり、また実施時間も短いので、自転車では参考にならない。なぜこれがサイコンアプリのデフォルトになっているのか理解に苦しむ。
- Z1(リカバリージョグ) : 52 + (178 - 52) * 74%まで = 145.2bpmまで
- Z2(マラソンレース) : 52 + (178 - 52) * 84%まで = 157.8bpmまで
- Z3(乳酸閾値) : 52 + (178 - 52) * 88%まで = 162.9bpmまで
- Z4(無酸素) : 52 + (178 - 52) * 95%まで = 171.7bpmまで
- Z5(全力疾走) : 上限なし
MHR法のように10%刻みでゾーニングする方法もある。これはダニエルズ式よりはマシだが、Z2上限が142bpmというのは、実感よりも高すぎる。そもそも10%刻みにするのは覚えやすいだけで科学的根拠に乏しいので、使うに値しない。
- Z1(回復走) : 52 + (178 - 52) * 60%まで = 127.6bpmまで
- Z2(有酸素持久走) : 52 + (178 - 52) * 70%まで = 140.2bpmまで
- Z3(テンポ) : 52 + (178 - 52) * 80%まで = 152.8bpmまで
- Z4(乳酸閾値) : 52 + (178 - 52) * 90%まで = 165.4bpmまで
- Z5(最大酸素摂取量) : 上限なし
サイクリングで使うなら、コーガン式の運動負荷に対応するゾーニングをしたいところだ。そこで、サイラー氏のポラライズド・トレーニング理論の閾値を流用する。すなわち、脂質代謝の限界点であるLT1(第1乳酸閾値)の%HRRが65%で、継続的糖質代謝の限界点でありLT2(第2乳酸閾値)とFTPに相当する%HRRが88%だとみなす。その他のゾーンも応分に割り当てると、以下のようになる。Z2上限が134bpmというのは、実感とも整合する。
- Z1(回復走) : 52 + (178 - 52) * 55% = 121.3bpmまで
- Z2(有酸素持久走) : 52 + (178 - 52) * 65% = 133.9bpmまで
- Z3(テンポ) : 52 + (178 - 52) * 75% = 146.5bpmまで
- Z4(乳酸閾値) : 52 + (178 - 52) * 88% = 162.9bpmまで
- Z5(最大酸素摂取量) : 上限なし
FTP負荷すなわちLT2負荷での平均心拍数をLTHR(乳酸閾値心拍数)というが、それに基づいてゾーニングするLTHR法というのもある。ここでも閾値をどう設定するかは様々な流派があるのだが、フリエル氏の提唱するものが広く使われている。サイクリング用の閾値とランニング用の閾値が別々にあるが、当然サイクリング用を用いるべきだ。今回のFTP測定の実装での平均心拍数は151bpmだった。それに基づくと、以下のゾーニングが得られる。Z2上限が136bpmというのは、実感とも整合する。
- Z1(回復走) : 151 * 81% = 122.3bpmまで
- Z2(有酸素持久走) : 151 * 89% = 135.9bpmまで
- Z3(テンポ) : 151 * 94% = 141.9bpmまで
- Z4(乳酸閾値) : 151 * 100% = 151.0bpmまで
- Z5(最大酸素摂取量) : 上限なし
HRR法とLTHR法でZ4上限がかなりずれているが、LTHR法の方が信憑性が高い。FTP付近のパワーで1時間走っても実際にその心拍数に抑えられていたのだ。FTP測定時に追い込みきれていなかった可能性はあるが、さすがに163bpmで1時間運動し続けられる気がしないので、やはりLTHR法が正しいと思う。私は心拍数が上がりにくい体質なのだ。さておき、ロングライドでのペース配分の指針となるZ2上限が、HRR法でもLTHR法でも大差ないことは良いことだ。そうなると、HRR法を採用する理由はない。パワーメーターがあるのだから、心拍数だけから推測する方法に利点があるとも思えない。
以上のことから、今後はLTHR法の心拍数ゾーニングを指針としてペース配分を行う。すなわち、平地巡行では心拍数を136bpm未満に抑え、登坂では一時的になら142bpmまで出すことを許容する。パワーの管理と同様に、上振れしてL3に入る事を避けるには、余裕を持たせたい。よって、平地巡行では心拍数130bpmの周辺になるように負荷を制御する。実際のところ、150Wくらいのパワーで走ると心拍数は130bpmの周辺で落ち着くことが多い。
以前にも述べたが、パワーは先行指標で心拍数は遅行指標なので、パワーだけを厳密に管理すれば、心拍数もだいたい安定する。しかし、短時間の骨格筋の負荷を示すパワーとより長時間の心肺機能の負荷を示す心拍数は異なる指標なので、両方見るべきだ。パワーを厳密に管理しようとするとずっとサイコンを睨んでいなければいけないので、主観的な力の入れ具合とパワーの関係がだいたい把握できたら、主に心拍数の方を見て走ることが多い。それならサイコンをチラ見するのは10秒に1回くらいでいい。それでパワーの変動は許容範囲内に収まり、30秒移動平均パワーから算出されるNPも安定する。ただし、登坂と信号発進は例外で、パワーが急に上がりやすいので、その際にはパワーを注視して抑制的に走る。
まとめ
Magene PES P515を導入した。メリットとしては、片側クランク型よりも安定的に左右総合パワーが見られるようになったのと、おそらく多少壊れにくいのと、充電式かつ長時間持つことが挙げられる。デメリットとしては、片側クランク型よりも重いのと、トルク効率が分からないことが挙げられる。現在市場に流通しているパワーメーターの中ではコスパは最高なので、とりあえずパワーを見たいとか、コーガン式の負荷管理をしたいとか、ロングライドの疲労管理をしたいという場合には、おすすめできる製品だ。
ついでに、コーガン式の本をもとに、ペース配分や栄養補給やトレーニング習慣について再検証した。ブルベ本番ではL2に徹して走って脂質代謝の利点を最大限に享受すべきだ。また、日々のトレーニングとしては、一定のFTPを確保した後は脂質適応とCTLの最大化を図るのが重要だろう。
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