大阪東京キャノンボール達成!
念願であった大阪東京キャノンボールについに成功した。経過時間は21時間50分35秒だ。機材と戦略を整えれば凡脚オジサンでもキャノンボーラーになれることを証明できた。

結果
サイコンのログによると、総距離は513.96kmだ。経過時間21時間50分35秒なので、グロス平均速度は23.52km/hだ。走行時間は19時間11分43秒なので、ネット平均速度は26.77km/hだ。我ながら猛烈な速度で走り抜けたと思う。実際のログはStravaにアップロードしておいた。
キャノンボールの難易度は風やルート選定に大きく影響を受ける。達成の難易度を下げるために工夫するもよし、敢えて高い難易度で挑むもよしだ。私は前者のアプローチを取り、結果として脚力に劣りつつも達成し、タイムもかなり短くできた。これに関しては知略と忍耐の勝利として誇って良いと思う。しかし、それは脚力の証明にはなっていない。というか、脚力を証明したいならスマートトレーナーで測ったFTPやパワーカーブを貼り付ければ良い話で、キャノンボールのロマンはそこにはない。東京と大阪の間を1日で走るという馬鹿げた行為に大人が真面目に取り組むのを面白がるのが本質であり、手段は色々あって良い。達成したところで自己満足以外の利得はないが、そのために全力を尽くすのだ。
戦略のまとめ
キャノンボールの準備、初回挑戦の失敗、それを受けての再準備に関しては以下の記事で詳述した。凡脚オジサン用カスタムとして、Anchor RE8に楕円チェーンリングと超乙女ギアとDHバーを付け、L2負荷で脂質代謝を徹底し、それに適した栄養補給をし、追い風を狙って出走タイミングを調整し、耐久性の高いタイヤでパンクを防ぐというものだ。
キャノンボールの難しさの本質は、仮眠が取れないことによる睡眠不足というより、仮眠を取るマージンすらないことにある。600kmブルベより段違いに難しいが、攻略の方向性は同じだ。600kmブルベでは仮眠時間を作るためにグロス平均速度を上げて前倒しで貯金を作る必要がある。キャノンボールでは、仮眠をしないにしても、仔細な道間違いやメカトラや後半の垂れを吸収するためのマージンを少しでも作るために貯金を作る必要がある。そのためには、停車時間(休憩時間)を削り、無駄な行動を省き、そしてネット平均速度を上げる必要がある。
600kmブルベではPC休憩を20分ずつ、ネット平均速度を20km/h以上にして、グロス平均速度を15km/h以上にすれば達成できる。キャノンボールでは、仮想PCを75kmくらいごとに設定し、各10分未満の休憩をする他は、ずっと走っていることになる。さらに、ネット平均速度を25km/h以上にして、グロス平均速度を21.67km/h以上にすれば達成できる。問題は、ネット平均速度25km/hを出すには巡航速度30km/h越えの走力が必要で、しかもそれを24時間不眠で維持する必要があることだ。ロードバイクで30km/h巡航を30分続けるのは多くのホビーサイクリストに可能なことだろうが、キャノンボールではそれを数時間単位で続ける必要があり、それは並大抵ではない。私の脚力ではまず無理だ。よって、前回の記事で述べたように、追い風を選んで出走することで、ネット平均速度を26km/hかそれ以上に高めて若干のマージンを作ることを目論む。
出走前
24時間追い風(西風)で、かつ降雨がないという条件を満たすには、低気圧の南西か高気圧の北東を走るのが望ましい。コリオリの力により、北半球では低気圧には反時計回りに風が吹き込み、高気圧からは時計回りで風が吹き出す。梅雨の時期は低気圧が定期的に西から東に通過していくので、低気圧中心の経路が、大阪東京を結んだ線よりもちょっと北側の、新潟や北関東のあたりを通ると都合が良い。低気圧中心とそれに伴う梅雨前線の近くでは雨が降るので、それを回避することが重要だ。低気圧の西側は北西風によって前線が南に蛇行するので、低気圧中心よりほんのちょっと南の緯度を、低気圧中心から離れすぎないように追従できれば、追い風と晴天を両立できる。毎日天気図を見て過ごしていたが、丁度よい緯度を低気圧が通過することが分かったので、雨の中で電車輪行して大阪入りした。

風の吹き方に関しては、三層のモデルで考えると分かりやすい。まず、本州の緯度においては、高度5000m以上では偏西風が吹いている。季節や気候変動によって多少蛇行はするが、基本的にはずっと西風が吹いていると考えて良い。それより下の、高度1000mあたりを中心とする層では、気圧に従って風が吹く。1000mより上ではコリオリの力によって投稿線とほぼ平行に風が吹くが、1000mより下では地面との摩擦に引きずられて勢いが弱まるので、等高線を斜めに横切るように風が吹き、渦を巻くような構造になる。地面から1000mまでの間くらいは地温や地形によってコロコロ変わる局地風も吹く。上層の風は下層の風を引きずるので、大阪→東京の方向を選んだ時点で西向きの成分が増す傾向を獲得し、北東に低気圧がある時点も西向きの成分が増す傾向を獲得する。大阪と東京の間の地形と走行時間は様々なので、局地風は一定ではなく予測はほぼ無意味だが、上層の西風傾向が確定していれば、かなり有利になる。局地風の東風は弱まり、局地風の無風は弱い西風になり、局地風の西風は強まる。長時間安定的に追い風を掴みたいなら、全体の傾向を味方にするのは必須だ。そして、大まかな天気図は数日前の予報がだいたい当たるので、有給休暇を取るなり他の予定をキャンセルするなりの対応を事前に取るのに天気図の予報を見るのは確実に役立つ。
さて、例によって快活クラブ千里本店でカーボローディングしながらダラダラ過ごしていたのだが、朝起きてwindy.comを見たら、その日の昼から完璧な条件になることがわかった。大阪から沼津までの広い範囲に渡って風速3m以上の西風が20時間くらい吹き続ける予報になっている。御殿場から先は到達時点でほぼ無風になるようだが、逆風ではない。ECMWFモデルでもGFSモデルでもICONモデルでも同じ傾向を示している。しかも、降水確率も行程全体で低い。睡眠サイクル上は昼寝した上で22時あたりの出発時間にするのが理想的と考えていたが、それだと追い風を受けられる時間帯が半減してしまう。そこで、急遽予定を変更して、11時出発ということにして、急いで梅田新道まで向かった。

走行記録
2回目なので慣れたものだ。梅田新道に着いてから、大阪市道路元標と自転車を収めた写真を撮る。そうしなきゃいけないわけじゃないが、記念だ。機材の最終チェックをしておき、サイコンのスタートボタンを押して、11時2分に走行開始した。

昼の大阪は車通りが多いが、道は広いし、トラックが多いわけでも速度を出す車が多いわけでもないので、走りやすい。信号に多く捕まるのはもどかしいが、焦っても仕方ないので淡々と走る。

清滝峠の急坂。意外なほど急なのでインナー1速の変速比0.888まで出して走ったわけだが、トルクをかけたまま変速したらディレイラーが微妙に傾いたらしく、スプロケの内側にチェーン落ちした。それを3回繰り返したので、インナー1速にすると必ずチェーン落ちすると診断して以後封印した。

生駒以降の木津川や笠置あたりはしばらく昇り降りが続き、伊賀に入ると平坦を快走できるようになった。前回は夜だった区間を昼に走れるのは新鮮だ。予報通りに追い風を受けて、少ない力でもかなりの速度が出た。サイコンに速度を表示しないようにしているので継続的に確認したわけではないが、後でグラフを見たら、平坦でも40km/hくらい出していた。


仮想PC1のファミリーマート伊賀服部店に到着。13時55分。68.3km走って2.75時間経過なので、グロス平均時速24.83km/hだ。山がちな区間を越えてこの値なので、ペース的には盤石だ。


国道25号の名阪バイパス迂回路だが、前回は夜中だったので手こずった。しかし、昼間に走るとむしろMTBのダウンヒルコース的な雰囲気があって楽しかった。とはいえ、ここで攻めて数10秒稼いだところで意味がないので、安全運転に徹した。

1号と25号の重複区間はトラックがビュンビュン通るのだが、昼間だとそんなに恐怖がなく、追い風を受けて快適に走れた。木曽三川を越えるあたりで16時半。ちょうど夏至なだけあって、まだまだ明るい。

名古屋市内も特に混雑しておらず、快調に走れた。道が広いがね。追い風だと信号停止からの加速も楽なのが良い。また、平坦を走っているはずなのに緩い下り坂であるように錯覚し、緩い登りが平坦であるかのように錯覚するので、全行程で下り基調だったような記憶が残っている。


仮想PC2のファミリーマート大高緑地店に到着。17時29分。168km走って6.4時間経過なので、グロス平均速度26.25km/hだ。伊賀以降の爆走状態が貢献して、名古屋の市街地を抜けたにもかかわらずグロス平均速度が上がっていた。


岡崎あたりでやっと日が傾いてきた。曇りだったのでもともと暑さで苦しむことはなかったが、若干涼しくなるとより走りやすくなった。

豊川市や豊橋市を通って、本坂トンネルに至る頃には、すっかり日が暮れていた。浜名湖北コースの難点と言われるこの本坂トンネルだが、勾配が緩やかなので峠という感じがしない。

天竜川を渡って、前回迷った匂坂の岩田神社参道も突破。ここは初見殺しなので、予習しておいてよかった。

仮想PC3のローソン袋井堀越店に到着。21時45分。274km走って10.8時間経過なので、グロス平均速度25.37km/hだ。さすがに夜は速度が出しにくくて、グロス平均速度が落ちたが、まだまだ黒字ペースだ。メカトラさえなければ体力的には余裕で完走できると確信した。


前回手こずった小夜の中山越えも難なくこなせた。予報では追い風はだんだんと収まってくるはずだったが、静岡県内でも一貫して追い風を受け続けたので、気持ちよく走れた。追い風を受けるということは向かい風を受けないということなので、身体が泡に包まれて守られているような気分になる。静岡市内や富士市近辺を怒涛の勢いで走っていると、夜なのに暑くなってくるように感じた。湿度が高いのもあって、発汗量が凄かった。


仮想PC4のセブンイレブン清水由比店に到着。翌1時10分。357km走って14.1時間経過なので、グロス平均速度25.31km/hだ。追い風がまだまだ続いているおかげで、グロス平均速度が保てている。やたら速く走っているのに大して疲労感がないというのが不思議な感覚だった。


沼津まで1号やその他の幹線道路沿いを走った。先人のルートを吟味しつつ模倣したので、自転車走行禁止区間だけを巧みに避けつつ、走行できる時はできるだけ幹線道路を通ることで速度を最大化できていた。その後、246に乗り換えて、御殿場に向けて登った。246も結構走行禁止区間があるので、先人の知見が役立った。御殿場までの上り坂は、急坂ってわけでもないのだが、ともかく長く感じた。

御殿場を過ぎてから夜が明けてきた。この足柄区間の下りは、246を爆走するトラックがとにかく怖かった。路肩がない上に、トラックが容赦なくギリギリをかっ飛ばしていく。あいつらマジで何なのと思うが、トラック側からすれば自転車側が邪魔でしょうがないというのも分かる。この区間の246は二度と通りたくない。やばいところは写真を撮る暇も当然無かった。

仮想PC5のセブンイレブン秦野菖蒲店に到着。翌5時2分。440km走って17.9時間経過なので、グロス平均速度は24.58km/hだ。御殿場登坂で速度が落ち、また下りが危なくて速度を稼げなかったこともあり、グロス平均速度は落ちた。とはいえ完走は確実なので、下手にタイムアタック的な走りをしてリスクを高める必要もない。ここらで落ち着こうと思い、敢えて長めに休憩してコーヒーを飲んでまったりした。朝日を浴びたのもあって眠気も解消された。


完走が確実だとしても、気を抜いた途端に脚が止まってしまうので、緊張感を持って走ろうと思った。善波トンネルを越えたら、もうまとまった登坂はない。もはや足が売り切れる心配をしなくても良いので、L2上限など気にせず、200Wとかも出して元気よく走った。

246は意外にアップダウンが多いというのを忘れていた。オーバーパスの脇道の急坂を登る場所が幾度もあり、その度に250W以上出して走ることもあった。ゴール間近とはいえ、そこまで出して大丈夫かと心配になりもした。とはいえ、気分が上がっているのでなんとか乗り切った。都内に入ると、東京在住時に散々見ていた景色の中を走って懐かしかった。


都心が近づくと、信号で詰まることが多くなった。環七より内側は特にひどい。今回は時間的余裕がたっぷりあるのでそうでもなかったが、ギリギリだったら相当に焦るだろう。都心のグロス平均速度は20km/hも出ないことを覚悟しておいた方がいいだろう。


三宅坂を過ぎて皇居を回っている時には、もうすぐ解放されて楽になれると思いつつも、もう終わってしまうのがなんだか寂しい気分もあった。自力で走るというのはそれだけで気持ち良いものだ。尻と脚が許すならずっと走っていたい。

ゴールである日本橋の日本国道路元標に到着した。翌8時53分。これにて大阪東京キャノンボールを達成したことになる。513.96km走って21時間50分35秒なので、グロス平均速度は23.52km/hだ。戦略を淡々と実践すれば成功するであろうことは走る前から分かっていたので、達成できたことの喜びがその場で爆発するということはなかった。受験でA判定が出ていた学校に受かったようなもので、ほっとしたという気持ちの方が大きかった。と同時に、張り詰めた糸が切れたかのごとく、その場にへたり込んだ。都内に入ってからL3以上の負荷をそれなりの時間かけたのは脚を確実に削っていた。達成確率の最大化という観点ではラストスパートは不要だったが、結果として22時間切れたのは良かった。


昼前に着いたが、疲労困憊かつ、汗と泥と油まみれなので、観光したり人と会ったりする気分でもない。上野にある萩の湯という銭湯に行ってさっぱりした。熱風呂、水風呂、外気浴を2セットしたら、いつの間にか眠ってしまっていた。風呂上がりに既に筋肉痛になっていたのは奇妙な感覚だった。その後、新幹線輪行で上田まで行って帰宅。体力が残っていれば横川駅まで鈍行輪行してそこから自走で碓氷峠越えして帰るところだが、今回は到底無理だった。上田から家に帰るだけでもヘロヘロになった。

データ分析と振り返り
走行距離は513.96kmで、獲得標高は3605mだった。経過時間は21時間50分35秒で、グロス平均速度は23.52km/hだ。走行時間は19時間11分43秒で、ネット平均速度は26.77km/hだ。、平均心拍数は114bpm、平均ケイデンスは57rpm、平均パワーは118W、NPは136W、VIは1.15、IFは0.61、TSSは711.9、消費カロリーは9623kcalだ。

速度のグラフを見ると、追い風のおかげで相当な速度が出せていたことが改めて分かる。0-10kmの速度で34分、10-20kmの速度で3時間48分30秒、20-25kmの速度で3時間4分51秒、25-30kmの速度で4時間33分31秒、30km越えの速度で7時間10分37秒走っていたとのこと。御殿場と足柄で速度が落ちている以外は、全体的に一定のペースで走れていたことがわかる。

それでいて、パワーは控えめだ。L1(123W以下)が8時間23分52秒、L2(168W以下)が7時間13分9秒、L3(201W以下)が2時間44分14秒、L4(235W以下)が36分23秒、L5(268W以下)が10分42秒、L6(335W以下)が3分13秒とのことだ。グラフを見ると、全体的に一定のパワーを保っていつつ、最終仮想PC以降にラストスパートをしたのがよく分かる。平均パワーが118Wと低いのにNPは136Wもあり、その比率であるVIは1.15という高い値になっている。これは「いのちだいじに作戦」の結果だ。すなわち、平地巡航では150W以上を出して時間短縮を測るとともに、登り坂の序盤ではある程度高いパワーを出し、下り坂では空走して脚を休める作戦だ。単純にパワーを一定にしようと努めるカメ作戦よりも高度な判断が必要になるが、慣れると無意識にそれを行うようになる。ロングライダーとしての実力向上を感じた。

平均パワーやNPを見るだけだと、空走している間の0付近のパワーが計上されて実際のペダリングの際の分布が見えにくいので、25Wブラケットのヒストグラムも出してみた。Stravaでサポートされている機能だが、自前のFITファイル分析ツールで実装した。0Wが14.2%、≤25Wが1.1%、≤50W1.7%、≤75Wが4.3%、≤100Wが9.4%、≤125Wが16.6%、≤150Wが21.6%、≤175Wが17.7%、≤200Wが9.2%、≤225Wが2.7%、≤250Wが1.0%ということなので、まともにペダリングしている間は125Wと150Wの間を中心にパワーを調整できたことが確認できた。逆に言えば、ロングライドにおいて平均パワーやNPで何かを判断するのは当てにならないということだ。というか、こんなに低いパワーでよく速度が維持できていたと我ながら感心する。追い風とDHバーのおかげで、CE(サイクリングエコノミー:パワー当たりの速度)が高まったと言えそうだ。同時に、高速度域での収穫低減の法則を鑑みて、限界効用の低いパワー追加をしなかったのがCEの向上に繋がっていただろう。GE(生体的総効率:消費カロリーあたりの仕事)については、サイコンが出す消費カロリーが推定値に過ぎないので、このデータからは考察できない。

パワーカーブは以下のようになる。1分継続は240W、5分継続は200W、30分継続は160W、60分継続は150W、120分継続は140Wということだ。パワーカーブは基準値を満たす区間がひとつ以上存在することを示すのみで、全行程のパワー配分の傾向を掴むためのものではない。パワーカーブの数値は、その平均パワーをその時間だけ継続する能力があることを証明するものだが、ブルベやキャノンボールの本番では決して本気を出さないので、そこでのパワーカーブを分析する意味はあまりない。強いて言えば、平均140Wを120分継続していた区間が1つ以上あるということは、淡々と長々と踏めていた区間がある事を示している。それでいて、平均160Wを継続していた区間が最大30分しかないということは、踏みすぎて脚を致命的に削ることがなかった事を示している。

心拍数はパワーよりさらに控えめだ。Z1(122bpm以下)が10時間57分、Z2(135bpm以下)が5時間4分、Z3(142bpm以下)が9分33秒、Z4(151bpm以下)が9分33秒、Z5(それ以上)が48秒だ。心拍数のゾーニングにはLTHR法を使っていて、それはパワーゾーンと対応する理論だ。しかし、私の場合、パワーに対して心拍数が上がりにくいことが分かる。原因として考えられるのは2つだ。ひとつは、心臓の拍出量が多いから心拍数を上げなくてもパワーを支えられるというものだ。もうひとつは、2ヶ月前に測ったFTPが下振れしていたか、その後のブルベ活動でFTPが向上したかで、パワーゾーンの基準であるFTP=223Wという前提が崩れていることだ。いずれにせよ、全行程を通じて、息が上がるとか心肺に過負荷がかかっていると感じることはなかった。

ケイデンスに関しても興味深い。50rpm以下で4時間38分、60rpm以下で5時間37分、70rpm以下で5時間35分、80rpm以下で2時間52分、90rpm以下で27分、それ以上で1分走っている。50rpm以下はほぼ空走であり、下り坂や赤信号前に空走するのは自然なことだ。特筆すべきは、60rpm以下で走っている時間が最長であることだろう。しかも、グラフを見ると後半になるほど徐々にケイデンスが下がる傾向にある。ロードレースの理論ではケイデンスは80rpmとか90rpmとかにすべきと言われるが、それは高いパワーを出しても乳酸の蓄積を抑える必要があるからだ。一方で、今回の走り方はパワーを抑えていて、乳酸が発生しにくいので、ケイデンスを上げる必要がない。楕円チェーンリングもその一助になっていて、ケイデンスが下がってもデッドゾーンでのトルクが相対的に低く維持されるので、クランクの回転が止まりそうになったり膝関節を痛めたりしにくい。今回は、ケイデンスに数値目標を設けず、主観的に気持ちの良いケイデンスを維持しつつ、トルクとパワーが上がりすぎたらギアを下げ、トルクとパワーが下がりすぎたらギアを上げるという運用をしていた。その気持ちの良いケイデンスが時間経過とともに徐々に下がっていったことになる。疲労の蓄積がそうさせたのか、身体が長距離走行に適応していったのか、ペダリングの癖に変化があったのか、原因はよくわからない。ケイデンスが低いことは心拍数が低いことの一因にもなっているだろう。

ペース配分の総評としては、ほぼ完璧だったと言える。全行程を通じてハァハァと息が切れることが一度も無く、苦しいと感じることもなかった。気持ちよく漕いでいるとパワー上限を越えてしまうので、踏みすぎないように抑制することが多かった。一定パワーで踏んでいるのだから、平地より登坂が辛いということもなく、頑張るという観念すら湧かなかった。ラストスパートの区間での登坂で一時的にL3以上の負荷になることがあっても、心拍数が上がり切る前に坂を登りきっていたので、息切れはしなかった。都内では赤信号で強制的に休まされる時間が多いというのもある。東向きの場合、神奈川に入るまではL2負荷を徹底し、その後はL3以上を解放してもよい(しなくてもよい)という今回の戦略が最善と言えそうだ。全般的にもっとパワーを出してL2上限に貼り付けた方が短い時間で走れたと推定できる結果にはなっているが、キャノンボールはそういうゲームではない。達成確率最大化の観点で考えると、達成すればスコア1、達成しなければスコア0であり、達成の中で時間を短くしてもスコアは変わらない。ならば、速度の振れ幅を考慮して余裕を設けた上で、怪我や疲労や事故の確率を十分に低くできるような低いパワーで走るのが最適だ。もしも、21時間を切れとかブロンプトンで達成せよとか言われたら、リスクを取ってペースを上げる別の戦略が必要になるだろう。
補給に関しては、前回と同様に、仮想PC毎にオニギリ1個と特製ドリンク1本(パラチノース30g、EAA10g、塩1g、クエン酸1g、水700g)で問題なかった。血糖値が安定していたので空腹感はなかったし、胃の内容物を少なく維持したので膨満感もなかったし、腹を下すことも便意を催すこともなかったし、パワーも心拍数も安定していた。9623kcal消費したのに、走行中は2000kcalも摂取していないというのは驚くべきことだが、カーボローディングと体脂肪の活用で本当にそれができてしまうのだ。完走後に身体のあちこちを触ると、組織のあちこちが抜き取られて凹んだかのような感覚を覚えた。やったことないが、脂肪吸引とかするとこんな感覚になるのだろうか。走行中には汗を多くかいたので、仮想PCでは1.5Lの水を買って、胃が満杯にならないように注意しながら多めに飲んだ。仮想PCの間での補給は、途中で1回だけ自販機で緑茶を調達しただけだった。そこでポカリやらを飲むのが自傷行為であることは何度も述べた通りだ。ハンガーノックを恐れて糖分を摂りまくるという呪いがレース界隈だけじゃなくロングライド界隈にも根付いているが、過剰摂取の方がもっと恐ろしい。後半にL3負荷の割合を増やして、それに応じて胃腸の不調を覚悟しつつも高GI食品を摂るという戦略もありだとは思うが、基本は低GIだ。最短時間を目指すなら、胃腸が許す範囲でL3の割合を最大化することになるだろうが、達成確率最大化を目指すなら、時間に余裕がある限りは、カメ作戦と低GI補給を徹底すべきなのだ。
ルート選定は完璧に機能した。清滝峠、匂坂の岩田神社、島田岡部線、富士川越えといった混乱しがちな箇所を事前に調べておいたので、大きな道間違いをすることなく全行程を走れた。鈴鹿超え(1号)より伊賀越え(163号・25号)が効率的で、浜名湖南(301号)より浜名湖北(姫街道)が効率的なのは間違いないと思う。一方、御殿場越え(246号)が思ったよりきつかったので、箱根超え(1号)の方が実は楽なのではないかと思った。御殿場と箱根の登りを比べれば前者が楽だが、それらを通り抜けた後には、246号だと昇り降りが多いが、1号や134号や湘南新道を乗り継ぐのは平坦であり、総合的な獲得標高はそんなに変わらない。信号がどっちが多いのかは知らない。仮に走行時間や疲労がほぼ同じだとすると、安全な方が得だろう。それに、1号だと最終盤に正面に東京タワーが迎えてくれる。皇居前を通るのも悪くはないが、やはり東京タワーの赤が鮮明に目に焼き付くのは感動的だろう。
タイヤをGP5000 AS TRにした選択は大成功だった。GP5000 S TRよりも計算上は23分遅くなるはずだが、追い風で十分な貯金が作れるのであれば、リスクを取ってそれ以上貯金を増やす必要はない。実際にパンクせずに走り切れたし、十分すぎるほどの貯金とともに安心して走れた。32Cにしたのも奏功していて、振動による身体の痛みが激減した。今回は暑いから手袋を外している時間が長かったが、それでも手の痺れが起きなかった。尻の痛みも摩擦や圧迫によるものはあったが、振動で痛みを感じることは少なかった。それでも尻は痛くなったが、なんとか最後まで耐えられた。やはり、キャノンボールのルートを総合的に考えると細いタイヤよりは太いタイヤの方が有利だ。乗り心地が良いだけではなく、インピーダンスロスが減って速くなる。路肩を走ることが多いから路面が悪くなりがちなのに加えて、長い夜間走行の間は目視で路面の良い走行ラインを選びにくいというのもある。
追い風であっても、DHバーは相変わらず有用であった。3mの追い風は自分の対気速度を10.8km/h減らす効果があり、その場合、対地速度が時速30km/hで走ると対気速度は19.2km/hにまで減る。無風30km/h巡航の必要パワーはブラケットだと147WくらいなのがDHバーだと122Wになって25Wくらいの効果があるが、追い風3mの30km/h巡航の必要パワーはブラケットだと76WくらいなのがDHバーだと66Wになって10Wくらいの効果になる計算になる。しかし、10Wであっても22時間も続ければ1時間くらいの差になるはずだ。そして、以前述べたように、上半身を休ませられる効果も大きい。ブルベでDHバーのポジションを長時間維持するのに慣れたこともあり、首が痛くなることもなくなった。そうすると上半身を支えるのに使うエネルギーが節約できるため、これが後半の垂れの防止になっていると思う。実際、今回は終盤まで上半身の疲れや凝りを全く感じずに走り切れた。
フラットペダルにハーフクリップをつけた運用も妥当だった。ハーフクリップはビンディングに比べて引き脚の最高出力が劣るが、ロングライドで最高出力など出さないので全く問題ない。200W以下のパワーで踏み脚の踏力に応じた適度な引き脚を継続するにあたって、ハーフクリップは十分に機能する。好タイムで完走できているのがその証左だ。それでいて、何百回と繰り返される停止と発進の際に足首を捻るわずらわしさから解放してくれた。停車時や低速走行時の立ち転けのリスクもゼロだ。特に疲労が溜まった後半では、不意の立ち転けと、それによって後続車に轢かれる事態は避けたい。246号の路肩がない区間を登っている際などに、不意に低速になってふらつく事態を想像すると、そこで咄嗟に足を着けることの重要性が分かるだろう。フラペ用シューズならば、底が硬くて反らないのでシューズのヒステリシスロスはビンディング用シューズと変わらない。それでいて、コンビニで歩行したり道中で階段を登る際に楽だ。そのまま輪行できるので、履き替え用のサンダルなどを荷物から省略できるのも嬉しい。
昼寝を端折って出発したので眠気が心配だったが、夜明け前に多少あくびが出たくらいで、問題なく走ることができた。夜明け後にコーヒーを飲んでからは、ゴールまでは眠気を一切感じなかった。昼寝をして夜出発した前回と今回を比べてどちらが眠気が少なかったかと言われれば前回だが、昼出発でも問題ないことは確認できた。もちろん、眠気を抑えたとしても睡眠負債は脳の活動や判断力を低下させるわけだが、どんなスケジュールにしようが24時間不眠で活動することは不可避だ。昼出発か夜出発は風と天気を優先して決めるというのが合理的だろう。
サーカディアンリズムの調整としては夜出発が良いにしても、交通状況としては昼出発の方が利点があると思った。昼出発だと夜間走行になる静岡県内は危険箇所が少ない。また気温が低い夜間にほんの少し高いパワーを出して貯金を作りたくなるが、信号が少ない区間も多い静岡ならそれがやりやすい。御殿場までの登りが夜であっても、最難所である足柄の下りで明るくなっていれば問題ない。とはいえ、夏至で夜明けがギリギリだったので、それ以外の季節だと11時出発ではなく13時出発くらいのほうが良いかもしれない。
メンタルケアに関しては、全く問題なかった。一連のブルベとキャノンボール初回の失敗によって、超長距離の運動負荷や、それによる疲労の蓄積や、メカトラブルの対応や、失敗の不安や、闇夜の孤独には既に慣れきっていた。走っている間に何を考えていたのか振り返ってみると、脳のほとんどのリソースは安全確保とペース管理に割かれていて、何も考えていなかった時間が多かったように思う。交通状況に応じて走行ラインを調整し、パワーや心拍数に応じて踏力を調整し、ケイデンスに応じてギアを調整し、信号や勾配に合わせてパワーを調整していたら、発狂している暇すらない。それでもたまに暇を感じたら、鳴らしっぱなしの音楽に耳を傾けるだけで良かった。さらに余裕が出ると、この記事に何を書くかを考えたりもした。あとは、気まぐれにラノベの裏設定や番外編を勝手に考えたり、直前に学んだ気象学の話しを思い返したりもしていた。ともかく、キャノンボールだからメンタルケアが特別に難しいということはなかった。一度失敗していたので、失敗したらどうしようとかは考えず、最善を尽くした結果は受け入れるという割り切りができていたのが心の余裕に繋がっていた気もする。
総じて、知略によるキャノンボール達成という目論見は達成できたと言えよう。FTP=223W、PWR=3.43W/kg程度の凡脚オジサンであっても、機材選定、ルート選定、気象予測、ペース配分、補給をきちんとすれば、キャノンボール達成できるのだ。才能とか覚悟とか応援とか奇跡とかは不要で、方法論を再現すれば高確率で勝てる。剛脚の持ち主であれば、走力でミスを取り返すマージンを確保できるとともに、そこまで鍛える過程で戦略的な部分も自然に身についているので、普段よりちょっと長いロングライドのつもりで達成してしまうこともあるだろう。同時に、突出した走力のない貧脚凡脚の持ち主であっても、全ての要素が合格点であれば、それなりの確率で達成できる。FTPが低いエンジョイ勢でも、各種の工夫でCEを上げれば、ガチ勢にしか不可能に見える挑戦が達成できる。今回それが証明できた。そして、事前に立てていた数多の仮説の実証ができ、自身の行動力と完遂力を確認できた。2月下旬にAnchor RE8を買ってから4ヶ月、体力作りと機材のカスタマイズと各種の研究をコツコツとやってきたのがここに結実したことになる。長い長い戦いであった。自分で自分を褒めてあげたい。
ちなみに、覚悟や応援を否定するつもりはなく、それらは美徳だと思っている。不要(=不必要)とは、目標達成のための不可欠な要素ではないという意味であり、無価値だとは言っていない。実際問題として、24時間走り続けるには相応の疲労や退屈や憂鬱に耐えて達成のための努力を優先する気構えが必要となる。ロングライドに慣れていなければ、それを覚悟と呼ぶ人もいるだろう。応援してもらえればめちゃくちゃ嬉しいし、興奮して疲労感が著しく低減する。応援やそれを通じた交流を動機づけに挑戦する人もいるだろう。ただし、それらを通じた情緒的もしくは精神的な変化は、物理学や生理学の制約を緩和するものではない。言い換えると、体内の化学的エネルギーを増やすわけではなく、CEやGEを向上させるものではない。もし覚悟や応援で科学的前提が崩れると期待するなら、それは根性論やオカルトになってしまう。
脳が安全マージンを含めて身体能力の限界を決めるというセントラルガバナー理論に照らすと覚悟や応援でそれを突破するというのも分からないではないが、その水準の限界を公道で試すのは危険だ。疲労感が減ることは疲労が減ることを意味しない。セントラルガバナーのリミッターには身体を守って生存性を高めるという理由があり、それを麻痺させるのは、ロキソニンやボルタレンで痛みを抑えて走るのと同様のリスクがある。また、身も蓋もない言い方をすると、パワメを見ながら最善のパワー配分で走っている場合に、覚悟を改めたり応援を受けたりしてそれが変わるとすれば、外乱ということになる。興奮に伴うアドレナリンやらのホルモンは脂質代謝の維持にとって弊害ですらある。同時に、覚悟や応援の美点もある。逆境で正常な判断力を維持する能力が精神力であると定義した上で、その精神力を補強するものとして覚悟や応援があると位置づけるべきだろう。そして、そもそも精神的に追い込まれないように計画を立て、行動すべきだ。体力と戦略を総合してある程度余裕のある体制を整えた上で、味付けとして覚悟や応援のドラマ性を楽しむというのが現実的だろう。「ミッキーの中には人がいる」「プロレスには台本がある」みたいな野暮を言っている自覚はあるが、それを存知した上で楽しむのが大人というものだ。真面目にエンジニアリングを考えるにはロマンの解体から始めねばならない。
大阪東京キャノンボール(東京大阪キャノンボール)という枠組みへの評価としては、佳評と非評がある。まず、佳評としては、達成してみると満足度合いがかなり高いというのがある。キャノンボールは誰が認定してくれるわけでもない自己満足の極みではあるが、その達成までの過程を知っている自分は、自分がそれに応じた体力・知力・精神力を備えていることを確信できる。東京大阪間の520kmという距離設定と、24時間という時間設定が、生活感覚に即しているので、能力や苦労の度合いを様々な場面で引き合いに出しやすい。他者に説明する際にも、「東京ドーム何個分」以上に分かりやすい。実際の難易度は天候等によって大きく左右されるわけだが、それでも、巷のロングライダーの挑戦としては、分かりやすい基準だと言えるだろう。自転車を持っていれば誰でもすぐに何度でも挑戦できる門戸の広さがありつつ、達成するために必要な最低限の能力は決して低くはなく、それでいて肉体的エリートではなくても工夫次第でなんとか達成できるという絶妙な難易度なのが良い。
門戸の広さと逆説的だが、実際には多くの人が試みるべきものではない、というのが非評となる。理由は3つある。第一に、肉体的に辛すぎる。要求されるグロス平均速度もネット平均速度も高すぎて、仮眠も休憩もろくに取らずにぶっ通しで走るので、身体を壊しながら走っているようなものだ。たとえ顕著な怪我をしなくても、明確なオーバーワークにより、筋肉やら内蔵やらの健康を害している。同じような起伏のコースであれば、600kmブルベの合計TSSよりもキャノンボールのTSSの方が低くなるだろうが、ゴール後の損耗具合は明らかにキャノンボールの方が大きい。第二に、交通安全上で危険すぎる。御殿場やら箱根やら(または鈴鹿やら伊賀やら)で大型トラックと並走するのはただでさえ危険なのに、不眠不休で20時間以上走った状態でそれをやり、しかも場合によっては夜中にそれをやることになる。自転車が左端を走っていても十分な側方距離を開けて追い抜ける空間がない区間も散在し、注意して走るとか目立つ機材や服装をつけるとかでは十分な対策にならない。もちろん、注意力低下と疲労により、箱根や御殿場以外でも全区間であらゆる事故の確率が上がる。仮に、熟練ロングライダーへの登竜門的な位置づけで年に数百人が挑むようになったとすると、何件かの重大事故は避けられないだろう。第三に、既に述べたことの繰り返しだが、運ゲーすぎる。これは欠点でありつつ美点とも言えるが、気象条件が良ければ走力が低くても達成できるし、悪ければどんなに走力があっても厳しくなる。成功確率を上げるために肉体の鍛錬やエンジニアリングの工夫を積み重ねるのが醍醐味でもあるが、最大決定要因が気象条件であることは否めない。結果として、達成者の中に真の実力者と運が良かっただけの人が混ざる。私に関して言えば、エンジニアリングを実力と認めるなら前者だし、そうでなければ後者ということになる。そのような議論の余地が少ない真のロングライド能力を証明するという意味では、1000km以上のブルベの方が適しているだろう。ブルベも健康的ではないのだが、キャノンボールに比べればずっとマシだ。
それらの欠点を全て理解した上で腕試しをしたい少数の者が挑戦するというキャノンボールの現状は、これで良いと思う。一方で、機材の発達や道路の整備や先人による研究と情報公開によって難易度は年々下がっているので、挑戦者や達成者が徐々に増えてくると予想される。エベレスト登山と同様に、東京大阪キャノンボールを含むあらゆる魅力的な挑戦は、必然的に民主化が進行する。ガチ勢ではなくクラブ等に入っているわけでもなく、訓練っぽいことを数ヶ月しかやっていない私が挑戦し達成したのがその裏付けだ。そう考えると、ここで攻略情報的なことを発信して民主化の一助になることの功罪は微妙なところだ。流行るべきはブルベの方であって、キャノンボールではない気がする。
FTPで表される脚力に物を言わせて高速で走り抜けるのが正道であるなら、低いパワーで速く走ろうとするのは邪道なわけだが、私が後者に拘泥するのには三つ理由がある。ひとつは、コスパだ。高いFTPを維持するには、日常的に高強度でトレーニングしていなければいけない。楽しんでできる範疇であればコストはゼロと考えられるが、250Wとか目指すのは私にとっては苦行であり、健康的でもなく、明確なコストと考えられる。一方、223Wという現状の数値は山村で生活の足として自転車を使っていれば維持できるので、追加コストがない。それでキャノンボールすらできると分かったのは、大きな収穫だ。もうひとつは、末永く自転車に乗るためだ。今は普通に223Wを維持できていても、10年後にはそうではないだろう。FTPが低いなりに走れる範囲を広げ、またその戦略を実践した経験があれば、年食っても走っていける。実際、還暦過ぎてもブルベや自転車旅に興じる先達は多いわけで、そういう自転車仙人みたいな人達の仲間に私も入りたいのだ。そして最後に、何度か述べてきたことだが、中二病が治っていないからだ。ナードがジョックに一泡吹かせるのを夢見るのと同様に、エンジョイ勢のオッサンがエンジョイ勢のままでガチ勢が手こずることをやり遂げたい。
今後
さらなる挑戦的な活動としてはエベレスティングとか1200kmブルベとかが考えられるが、挑戦ばっかりしていると燃え尽きてしまう。日本一周もしたし、SRもとったし、キャノボも達成したら、ラベル付けという活動の限界効用はかなり低くなっている。さすがに一段落させたい。移動手段であるサイクリングという行為が目的になっているのというのは本末転倒だという意見に対しては、自転車を思い通りに操って移動する過程そのものが楽しいという反論ができるにしても、それは楽しんでできる範囲であることが前提となる。難易度をどんどん上げて肉体的および精神的に辛いことを追求するのは、ドーパミン依存のようなものだ。本来はSR獲得をもって一段落させるつもりで、キャノンボールは単なる思いつきだったのだが、今しかないと思い立ったのだからしょうがない。それを無事に完了させたので、いよいよ旅方向に舵を切っていこう。日が長いこの季節を存分に堪能するのだ。
追記:FITデータ分析ツールを開発して、キャノンボールの走行ログを分析した。そこでの考察からも、今回のペース配分がうまく行っていたことが分かる。
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